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ビゼー:アルルの女組曲

エルネスト・アンセルメ指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1958年5月録音



Bizet:L'Arlesienne Suite [1.Prelude]

Bizet:L'Arlesienne Suite [2.Minuetto]

Bizet:L'Arlesienne Suite [3.Adagietto]

Bizet:L'Arlesienne Suite [4.Carillon]

Bizet:L'Arlesienne Suite [5.Pastorale]

Bizet:L'Arlesienne Suite [6.Intermezzo]

Bizet:L'Arlesienne Suite [7.Minuet]

Bizet:L'Arlesienne Suite [8.Farandole]


編成を変えて大成功

この作品はアルフォンス・ドーテの戯曲「アルルの女」の劇附随音楽として作曲されました。戯曲の方は大成功を収めアルフォンス・ドーテの名声を不動のものにしたそうです。残念ながらフランス文学には至って暗いので、アルフォンス・ドーテという名を聞かされても全くピントこないのですが、そちらの世界ではなかなかに有名な人らしいです。
ただ、ビゼーが必死の思いで作曲した方の音楽はあまり評判がよくなかったという話が伝わっています。

理由ははっきり分からないのですが、どうも「アルルの女」を上演した劇場のオーケストラが小編成で技術的にも問題があったのではないかと推測されています。
しかし、作曲をしたビゼーの方はこの作品に絶対の自信を持っていたようで、全27曲の中からお気に入りの4曲を選んで演奏会用の組曲に仕立て直しました。これがアルルの女の第1組曲です。劇判音楽の方はいびつな小編成のオケを前提としていましたが、組曲の方は通常の2巻編成のオケを前提として編曲がなされています。
そして、ビゼーの死後、親友のギローが新たに4曲を選んで(有名な第3曲のメヌエットは「美しいパースの女」からの転用)組曲にしたのが第2組曲です。
この組曲の方はビゼーの死後に発表されて大好評を博しました。
<第1組曲>

  1. 第1曲:「前奏曲」

  2. 第2曲:「メヌエット」

  3. 第3曲:「アダージェット」

  4. 第4曲:「カリヨン」


<第2組曲>

  1. 第1曲「パストラール」

  2. 第2曲「間奏曲」

  3. 第3曲「メヌエット」

  4. 第4曲「ファランドール」




地中海的な陽光に溢れた音楽であり、爽やかな乾いた風が吹き抜けていくような音楽でもあります

同じ顔ぶれによるビゼーの交響曲を紹介したときには「実にあっさりと、そしてサラッとした感じで仕上げています。よく言えばラテン的な明晰さに溢れていると言えますが、悪く言えばいささか素っ気なくも聞こえます。」と書きました。
それと比べるならば、この58年に録音されたカルメンとアルルの女の組曲はさらにラテン的な明晰さに溢れていて、それ故に素っ気ないと感じる場面もほとんどありません。

例えてみれば、それは地中海的な陽光に溢れた音楽であり、爽やかな乾いた風が吹き抜けていくような音楽でもあります。

それにしても、オーケストラのバランスを完璧にコントロールしていくアンセルメの手腕には驚かされます。
アンセルメと手兵のスイス・ロマンド管弦楽団が始めて来日したときには、録音で聞くことができた完璧なバランスとはほど遠いものだったので、あの絶妙なバランスは録音によるマジックだと言われたものです。しかしながら、「Decca」録音は基本的にワンポイント的なスタイルを守り続けていましたから、編集の段階でオーケストラの個々の楽器のバランスを手直しすることは不可能でした。

アンセルメは最後までマルチ・トラックによる録音を嫌いました。
何故ならば、スタジオ録音において、オーケストラのバランスを整えるのは録音エンジニアの仕事ではなくて指揮者の仕事だと考えていたからです。ですから、彼が録音スタッフに要求したことは、自分が作りあげたその完璧なバランスを出来る限り正確に拾い上げることだったのです。

実際、そのバランスに関するアンセルメの耳の良さは驚異的だったとカルショーも述懐しています。
若き時代に「バランスのセル」とまで言われたジョージ・セルと較べても劣る部分は全くなかっただけでなく、「Decca」の音の良さの最大の原因は「ffrr」などという録音技術によるだけでなく、何よりもアンセルメがつくり出す音の良さに負うところが大きかったとまで言い切っているのです。

アンセルメという指揮者は理知的な指揮者だと言われたのですが、おそらくはその理知的なことの良さが最大限に発揮されたのがこの二つの組曲でしょう。
それから、この二つの組曲の構成なのですが、カルメン組曲の方は一般的なスタイルとは少し変わっていて、いわゆる二つの組曲を合体させて何曲かを間引いています。アルルの女の組曲は二つの組曲を合体させてまとめた形で録音しています。
アルルの女の第1組曲以外はビゼー以外の人が勝手にまとめたものですから、それをどのように再構成しようと指揮者の勝手と言うことなのでしょう。
ビゼー:アルルの女組曲

  1. 第1組曲 第1曲: 前奏曲

  2. 第1組曲 第2曲: メヌエット

  3. 第1組曲 第3曲: アダージェット

  4. 第1組曲 第4曲: カリヨン(鐘)

  5. 第2組曲 第1曲: パストラール

  6. 第2組曲 第2曲: 間奏曲

  7. 第2組曲 第3曲: メヌエット

  8. 第2組曲 第4曲: ファランドール

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