Home |
アントニオ・ヤニグロ(Antonio Janigro) |ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ第1番 変ロ長調 RV 47
ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ第1番 変ロ長調 RV 47
(Cello)アントニオ・ヤニグロ:(Cemalo)ロベール・ヴェイロン=ラクロワ 1950年代前半録音
Vivaldi:Cello Sonata No.1 in B-flat major, RV 47 [1.Lorgo]
Vivaldi:Cello Sonata No.1 in B-flat major, RV 47 [2.Allegro]
Vivaldi:Cello Sonata No.1 in B-flat major, RV 47 [3.Lorgo]
Vivaldi:Cello Sonata No.1 in B-flat major, RV 47 [4.Allegro]
ヴィヴァルディを「退屈で品のない音楽」と思っておられる方がいれば一度こういう作品にも耳を傾けてください
ヴィヴァルディのこのような作品について一つずつ解説を付け加える能力はないのですが、幾つか簡単なことだけは記しておこうかと思います。
まず一つめは、この6曲のチェロ・ソナタには作品番号14が与えられているのですが、これはパリの出版社がヴィヴァルディには無断で、彼のチェロ・ソナタを適当に6曲まとめて出版したときに勝手に付けた番号です。「著作権」などと言う概念がほとんど無かった時代ですから、こういうやり方で作曲者に無断で作品が出版されることが良くありました。
今ならば言語道断の振る舞いなのですが、しかし、考えようによってはそう言う形で出版されたからこそ後世に残ったという側面も否定できませんから、皮肉と言えば皮肉な話です。
ですから、ヴィヴァルディの作品は一般的には「RV番号(リオム番号)」で整理される事が多いのですが、この作品14として勝手にまとめられた作品のナンバーと「RV番号」には整合性はありません。
ちなみに、ナンバリングと「RV番号」の対応関係は以下の通りです。
ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ第1番 変ロ長調 RV 47
ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ第2番 ヘ長調 RV 41
ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ第3番 イ短調 RV 43
ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ第4番 変ロ長調 RV 45
ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ第5番 ホ短調 RV 40
ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ第6番 変ロ長調 RV 46
よくヴィヴァルディに対して作品はどれも同じという批判的な意見があります。
たとえばダッラピッコラがヴィヴァルディのことを「600曲の協奏曲を作曲したのでなく、1曲を600回作曲したにすぎない」と言ったのは有名な話です。
実際、この6曲のチェロ・ソナタも見事なまでに似通った音楽であり、全体の構成も判で押したように「Lorgo-Allegro-Lorgo-Allegro」の4楽章構成になっています。
この「緩-急-緩-急」という4楽章構成の室内楽のことを世間では「教会ソナタ」と呼んでいます。
ただし、注意が必要なのは、この「教会ソナタ」というのは必ずしも教会で演奏される事を目的とした作品のスタイルではないと言うことです。実際、このスタイルの完成者と言われているアルカンジェロ・コレッリ自身は「教会ソナタ」という言葉を使っていません。
最初は教会で演奏されるのには相応しくない世俗的な舞曲と区別をするために、少しは真面目な雰囲気のソナタを「教会ソナタ」と呼ぶようになり、やがては「緩-急-緩-急」という4楽章構成の室内楽のことを「教会ソナタ」と呼ぶようになったらしいのです。
ただし、モーツァルトの「教会ソナタ」は司教座聖堂の典礼に用いるために作曲されたものですから、その名の通り教会で演奏されるために作曲されたものも存在します。
しかしながら、ここでヴィヴァルディが書いたチェロ・ソナタは全て「教会ソナタ」のスタイルをとっていますが、教会とは何の関係もない作品であることは言うまでもありません。
そして、いかに後世の作曲家から「退屈な男」と批判されようと、彼はここからスタートして、最終的には協奏曲という形式において「急-緩-急」というスタイルを生み出したことは紛れもない事実であり、そのスタイルは17~18世紀どころか20世紀にはいるまでも決定的な影響力を持ったのです。実際、数多くの協奏曲で「急-緩-急」というスタイルを持っていないものを見つけ出すには一苦労させられるはずです。
また、「ヴィヴァルディの音楽の品のなさが耐えられない」と言う人もいるのですが、それは演奏の仕方によっても随分と影響されるものであり、さらに言えば、これほども聞く人の心にスッと入り込んでくる美しい旋律を次々と書けた人は殆どいないのです。
というわけで、ヴィヴァルディと聞いただけ「退屈で品のない音楽」と思っておられる方がいれば、一度こういう作品にも耳を傾けてください。
どれもが演奏時間が10分にも満たない小品達ですからお手間は取らせません。
それから、この数日プロコフィエフの作品を集中的に聞いたこともあると思うのですが(^^;、こういうシンプルで素朴な音楽も良いものだとしみじみと感じ入りました。
ヴィヴァルディへのリスペクトを持って真剣に向き合っている
ヴィヴァルディのことを「品のない音楽」という人もいるのですが、それは演奏の仕方にも問題があるのではないかと気づかせてくれたのがこのヤニグロによる録音です。
ピリオド演奏が隆盛を極めた21世紀初頭にはこういう作品も録音される機会が増えていきました。
しかしながら、具体的な名前は挙げませんが、そう言う演奏の大部分は横への流れを重視した、まるでBGMのような耳あたりの良さを追求した演奏が大部分でした。おそらくは、演奏する人自身がヴィヴァルディのことを全く評価していなかったのでしょう。
そう言う演奏からは、ヴィヴァルディに対するリスペクトが全く感じられません。
しかし、このヤニグロの演奏はそう言うBGM的な音楽とは全く異なります。
1956年という時期に彼がこの作品を6曲まとめて録音したのは、その背景にバロック音楽復興の動きがあったことは間違いないでしょう。そして、まさにそう言う復興期であったが故に、ヤニグロがこの一連のチェロ・ソナタを「取るに足りぬ」作品としてではなく、ヴィヴァルディへのリスペクトを持って真剣に向き合っていることがこの演奏からはひしひしと伝わってきます。
聞いてみてすぐに気づくことは、「あれっ?これってなんだかバッハぽい!」という感触です。
ひたすら横へ流すことだけしか考えていない演奏とは真逆で、ヤニグロは一音一音大切にしなら、どちらかと言えばゴツゴツした感じで作品を描いていきます。そして、その何処かゴツゴツした感じが「バッハぽい」と思わせる要因になっているようです。
そして、こういう演奏でヴィヴァルディを聞けば、決して「品のない音楽」とは感じません。少なくとも、私には品のない音楽とは聞こえません。
しかしながら、一つだけ残念なのは、伴奏を担当しているチェンバロです。
聞けばすぐ分かるように、使用しているのはモダン・チェンバロであり、おそらくは「ランドフスカ・モデル」のようなモンスター級の楽器ではないかと思われます。そして、その金属的な響きがともすれば違和感、さらには違和感をこえて耳障りに聞こえる場面が多いことです。
こんなチェンバロで聞かされるくらいならば普通にピアノで伴奏してくれた方がよかったと思うのですが、おそらくはバロック音楽復興という流れの中で録音されたのでしょうから、おそらくは当時としてはこれが最先端の演奏様式だったのでしょう。
もっとも、これだけ素晴らしいヤニグロのチェロが、これだけの優秀録音で聞けるのですから、これ以上の贅沢を言うのはやめましょう。(おそらくモノラル録音かと思われるのですが、こういう楽器編成だとステレオ録音とほとんど区別がつきません)
この演奏を評価してください。
よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
4162 Rating: 5.0 /10 (128 votes cast)
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2025-09-14]
フランク:天使の糧(Franck:Panis Angelicus)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン新交響楽団 1961年録音(Rene Leibowitz:New Symphony Orchestra Of London Recorded 1961)
[2025-09-12]
ベートーベン:交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」(Beethoven:Symphony No.3 in E flat major , Op.55 "Eroica")
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年3月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on March, 1961)
[2025-09-10]
ブラームス:弦楽四重奏曲 第1番 ハ短調(Brahms:String Quartet No.1 in C minor, Op.51 No.1)
アマデウス弦楽四重奏団 1951年録音(Amadeus String Quartet:Recorde in 1951)
[2025-09-08]
フォーレ:夜想曲第2番 ロ長調 作品33-2(Faure:Nocturne No.2 in B major, Op.33 No.2)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)
[2025-09-06]
バッハ:小フーガ ト短調 BWV.578(Bach:Fugue in G minor, BWV 578)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)
[2025-09-04]
レスピーギ:ローマの噴水(Respighi:Fontane Di Roma)
ジョン・バルビローリ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1939年1月21日録音(John Barbirolli:Philharmonic-Symphony Of New York Recorded on January 21, 1939)
[2025-09-01]
フォーレ:夜想曲第1番 変ホ短調 作品33-1(Faure:Nocturne No.1 in E-flat minor, Op.33 No.1)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)
[2025-08-30]
ベートーベン:交響曲第2番 ニ長調 作品36(Beethoven:Symphony No.2 in D major ,Op.36)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年4月20日録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on April 20, 1961)
[2025-08-28]
ラヴェル:舞踏詩「ラ・ヴァルス」(Ravel:La valse)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 パリ・コンセール・サンフォニーク協会管弦楽団 1960年録音(Rene Leibowitz:Orcheste de la Societe des Concerts du Conservatoire Recorded on 1960)
[2025-08-26]
フランク:交響詩「呪われた狩人」(Franck:Le Chasseur maudit)
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1954年6月27~7月11日録音(Artur Rodzinski:Wiener Staatsoper Orchester Recorded on June 27-July 11, 1954)