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Home|マックス・ゴバーマン(Max Goberman)|ハイドン:交響曲第9番 ハ長調, Hob.I:9

ハイドン:交響曲第9番 ハ長調, Hob.I:9

マックス・ゴバーマン指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1960年~1962年録音

Haydn:Symphony No.9 in C major, Hob.I:9 [1.Allegro molto]

Haydn:Symphony No.9 in C major, Hob.I:9 [2.Andante]

Haydn:Symphony No.9 in C major, Hob.I:9 [3.Finale, Minuet. Allegretto - Trio ]


エステルハージ家の副楽長時代の作品

番号的には「9番」なので、初期ハイドンの代表作とも言うべき「朝」「昼「夕」に次ぐ作品のように見えます。そして、それをもって特殊な3部作の後に通常の交響曲のスタイルに戻ったのかという人もいるのですが、そのナンバリングは必ずしも信用できないので、いわゆる「ハレ」から「ケ」への「揺れ戻し」と見ることにはいささか無理があるかもしれません。
それよりは、もともとは「序曲」として書かれたものをこのようなスタイルに急遽仕立て直しをする必要があったと考えた方が妥当かもしれません。


  1. 第1楽章:Allegro molto
    主和音の三連打や管楽器のファンファーレ的な音型はいかにも序曲風の音楽であり、これがもとはそう言うものとして作曲されたことを示唆します。

  2. 第2楽章:Andante
    フルートが田園的な旋律を奏でて、バロックのフルート協奏曲を思わせるような音楽です。

  3. 第3楽章:Finale:menuetto trio
    アンダンテ楽章で活躍したフルートが沈黙し、逆にそこで沈黙していたホルンとオーボエがここでは入ってきます。何処か、後の時代のワルツを思わせるような音楽になっていることに驚かされます。




ミュージカルの世界で人気を博してきたゴバーマンには明るく軽やかに振る舞うというスタイルが身にしみついていたのかもしれません

世間ではこれを、「現在のピリオド楽器演奏の原型ともいうべき、スリムで新鮮な演奏を繰り広げて」いると評しているのですが、それは少し違うような気がします。

おそらく、ピリオド楽器による演奏というスタイルがクラシック音楽の演奏史における一つの到達点だと信じている人にしてみれば、それは「褒め言葉」のつもりなのでしょう。
しかしながら、クラシック音楽の演奏史というのはそんなところを目指して「進化」していったわけではないのですから、少しでも「似た」ところがあれば、それを「現在のピリオド楽器演奏の原型」だと主張するのは我田引水が過ぎます。

このゴバーマンの演奏は、疑いもなくモダン楽器を前提とした解釈に基づく演奏です。
それは、例えば、ハイドンの初期の有名作である6番から8番の「朝」「昼」「夕」というタイトルの3部作あたりを聞くだけですぐに了解できるはずです。

あの交響曲はハイドンがエステルハージの宮廷に仕えて、はじめて侯からの依頼で作曲した3部作でした。
ハイドンはそこで、宮廷楽団の各奏者の腕前を披露するために、それぞれの楽器に独奏場面を用意しています。
ゴバーマンはその独奏場面において管楽器の美しさを存分に振りまいているのです。

この録音のオーケストラは「ウィーン国立歌劇場管弦楽団」となっているのですが、これは疑いもなくウィーンフィルのメンバーも含んだ歌劇場のオケでしょう。
シェルヘンの場合は「ウィーン国立歌劇場管弦楽団」といっても怪しい部分も多くて、実際そのかなりの部分はフォルクスオーパーのオケであったことはよく知られているのですが、ここでは疑いもなくシュタッツオーパーのオケです。そして、この素晴らしい響きを聞く限りでは、ほとんどウィーンフィルのメンバーとニアイコールではないかと思われます。

こんなにもモダン楽器としての艶やかな美しさをふりまく演奏を「ピリオド楽器演奏の原型」などといわれるのは、到底納得行くものではありません。

おそらく、こういう演奏スタイルの背景には、彼が長年率いていた「ニューヨーク・シンフォニエッタ」というオーケストラが小ぶりな編成だったこと起因しているのかも知れません。
そして、それはミュージカル演奏のオケにおいても同様でしょう。

さらに言えば、長年ミュージカルという世界で人気を博してきたことが、音楽というものは重くてむっつりと演奏するのではなくて、明るく軽やかに振る舞うというスタイルが身にしみついていたのかもしれません。
ただし、それが「ポール・モーリア」とか「レイモン・ルフェーブル」のようなイージー・リスニング風の音楽にはならなかったのは、その根っこがクラシック音楽の世界に深く食い込んでいたからでしょう。

聞くところによると、「ポール・モーリア」とか「レイモン・ルフェーブル」のようなオケは、コンサートツアーなどが行われるたびに人を集めて編成されるようなので、そもそも「固有のオケの響き」などと言うものは存在しないとのことです。
そう考えれば、ゴバーマンが長年過ごしたブロードウェイの方がまだ音楽的だったのかも知れません。

そして、そんなゴバーマンが再びクラシック音楽の世界に帰ってきて最初に取り組んだのがハイドンの初期シンフォニーやヴィヴァルディの音楽だったというのは実に賢い選択肢だったと言えます。

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