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グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲


フリッツ・ライナー指揮 シカゴ交響楽団 1958年12月28日~29日録音を再生する



Glinka:Russlan and Ludmilla, Overture

オーケストラの性能テストのような音楽

「ルスランとリュドミラ序曲」なんて知らないよ・・・と言う人も、実際の音楽を聞けばどこかで聞いたことがあると思い出すはずです。
本体の歌劇の方は5幕8場からなる大規模なものですが、とにかくこの序曲だけはとても有名で、現在も頻繁にコンサートで演奏されます。その理由は、聞いてもらえれば一目瞭然ならぬ、一聴瞭然です。

言ってみれば、オーケストラの性能テストのような音楽であり、特に弦楽器群にとってはその手腕を見せつけるには最適な音楽となっています。
とりわけ世に有名なのがムラヴィンスキーとレニングラードフィルが65年に録音した演奏です。

あまりの凄さにのけぞり、さらには演奏が終了すると同時に拍手が入るので、「これってライブなの・・・アンビリーバブル!!」とのけぞってしまうような演奏でした。

とにかく、一度はお聞きあれ!!


一糸乱れぬアンサンブルと強靱なオケの響きは、「鶏頭を裂くに牛刀を用いん」の風情があるかもしれません

こういう録音を聞くとライナーというのは不思議な指揮者だったと思ってしまいます。

ライナーと言えば「強面」の指揮者でした。
それはオーケストラのプレーヤーに対してだけでなく録音スタッフに対しても同様でした。

「君と仕事をするのは始めてだ。このホールで指揮をするのも初めてだ。最初のテイクのバランスが完璧でなかったら、私は帰らせてもらうよ。」

これがDeccaの音楽プロデューサーだったジョン・カルショーがライナーと始めて出会ったときに交わされた言葉だったそうです。
それは、全てのことに関して完璧を求め、どれほど些細なことであっても手抜きは許さないという強い姿勢を示したものでした。

その様な指揮者が、おそらくはレーベルからの強い要請だとは思うのですが、「Festival Of Russian Music」というタイトルの、それこそ玩具箱をぶちまけたようなアルバムを作っているのです。
クラシック音楽の録音というものは、レーベルにとっては「短期的」には大きな収益を見込むことが難しいものです。しかし、流行の波間に消え去っていくポップス・ミュージックと違って、優れた録音であれば著作隣接権が消滅するまでの長きにわたって一定の収益をもたらし続けます。
つまりは、「長期的」に見ればレーベルに大きな利益をもたらすのです。

しかしながら、多くの経営者がその様な「長期的な視野」を持っているわけではないので、短期的にある程度の利益を上げることを現場は要求される事があります。そう言う「困ったとき」によく使われる企画が「Festival Of Russian Music」のようなアルバムだったのです。


  1. チャイコフスキー:小行進曲[組曲第1番ニ短調 Op.43より]

  2. ムソルグスキー:交響詩「はげ山の一夜」(R=コルサコフ編)

  3. ボロディン:ダッタン人の行進[歌劇「イーゴリ公」より]

  4. チャイコフスキー:スラヴ行進曲Op.31

  5. カバレフスキー:歌劇「コラ・ブレニョン」

  6. グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲



こういうアルバムは長期的に売れ続ける事はないのですが、クリスマス商戦の前などにリリースをすればある程度の売り上げは期待できたからです。

しかしながら、ライナーのような大物指揮者にとってはどう考えても有り難い企画ではないのですが、レーベルからすればライナーのような大物がその様なアルバムを手がけるからこそ話題になるのです。
そこで、現場レベルにしてみれば「無理なお願い」となるのですが、結局はそう言う無理を聞いてしまうところがライナーという人なのです。

そのあたりが、同じ「笑わん殿下」でも、セルとは異なるところでしょうか。
セルの場合はどれほど譲歩しても、ワーグナーの管弦楽曲集かベートーベンの序曲集あたりが限界だったようです。・・・と思って調べてみたら「Szell Conducts Russian Music(1958年リリース)」なんて言うアルバムがありました。(^^;

そうしてみると、外見は恐くても、意外と現場の苦境に対しては二人ともに協力的だったのかもしれません。

ただし、そうやって引き受けた仕事であっても一切の手抜きがないのは当然と言えば当然、さすがと言えばさすがと言うべきでしょう。
まさに一糸乱れぬアンサンブルと強靱なオケの響きは、「鶏頭を裂くに牛刀を用いん」の風情かもしれませんが、それがライナーという人の本質なのです。

ですから、やるからには徹底的にやってやろうという姿勢は明らかで、音楽が盛り上がっていく場面では一気にテンポもあげていってシカゴ響の持てる力を存分に発揮させています。もともとが早めのテンポでオケを煽っているのですから、けっこう凄いことになっていくのです。
しかしながら、最後につまらぬ妄想を言わせてもらえば、あのムラヴィンスキーの「ルスランとリュドミラ序曲」の様な演奏を知った上でライナーが録音をしていればどれほど凄まじいことになっただろうという思いはします。

時間系列で言えばそう言うことはあり得ないのですが、それでもそう言う演奏が可能だと言うことを知っていれば、おそらくは、負けてなるものかとさらに凄いことになったのではないかと妄想するのです。
そして、このコンビならば、それは決して不可能ではなかったと思うのです。

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