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コダーイ:マロシュセーク舞曲

アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団カ 1955年4月~5月録音



Kodaly:Dances of Marosszek


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民族の舞曲を古典的な枠組みの中で再構成した音楽

コダーイは「マロシュセーク舞曲」と「ガランタ舞曲」という2曲の交響的舞曲を残しています。
前者の「マロシュセーク舞曲」はピアノ作品として創作され、その後管弦楽曲に編曲されました。ピアノ版は1927年、管弦楽版は1930年に完成し、その管弦楽版はドホナーニ指揮によるブダペスト・フィルで初演されました。

この作品に「マロシュセーク」の名前が与えられたのは、古い民族舞曲がたくさん残っていたトランシルヴァニア地方の一地区である「マロシュセーク」に由来します。全体としては3つのエピソードとコーダから成り立ったロンドであり、作品全体として厳密な構成をもった音楽ではありません。
少しばかり張り詰めたリズムをもった第1のエピソード、豊かな装飾性にあふれた第2のエピソード(これは即興的な民族的リコーダーの旋律を移植したと言われています)、そして3つめのエピソードではダンスの勢いが増していくようであり、最後のコーダではまさに猛進していくような舞曲で華々しく音楽は閉じられます。

それと比べると、「ガランタ舞曲」の方はもう少し厳密な構成をもちます。

大まかに見れば二つのエピソードからなるロンドとみることが出来るのでしょうが、その構成はかなり自由であり、マロシュセーク舞曲のように幾つかのエピソードがつなぎ合わされたような雰囲気とはかなり異なります。
特にコーダの最後は今までの逡巡を立ちきるような力強さで音楽は跳躍し、無調のままで音楽は閉じられます。

おそらくそれは、この作品がブダペスト・フィルの創立80周年を記念する作品として作曲されたことが影響しているのでしょう。
「マロシュセーク舞曲」から3年後の1933年に作曲され、初演は同じくドホナーニ指揮によるブダペストフィルによって1933年に行われました。

ガランタはコダーイが幼少期を過ごした地方であり、その地方の音楽は彼の幼い頃の記憶を呼び覚ますものだったようです。
この舞曲の素材は1800年代にウィーンで出版された「ガランタ・ジプシー舞曲集」からとられていて、コダーイはその素材をもとにして「ヴェルプンコシュ音楽」として仕立て直しました。

「ヴェルプンコシュ音楽」とは「ハーリ・ヤーノシュ」組曲の「間奏曲」でも採用された音楽形式なのですが、18世紀のハンガリーで新兵募集のために使われた兵士のための舞曲でした。
そのためか、この音楽には誇り高い雰囲気だけでなく、どこかもの悲しげな雰囲気をもっています。

剣と拍車をつけた完全武装の制服で踊られた舞曲であり、基本的にはラッスーと呼ばれる緩やかな部分と、フリッシュという快速な舞曲で出来ていました。
コダーイはきわめてシンプルなジプシーの舞曲を素材とし、それに「ヴェルプンコシュ音楽」という華やかさと哀愁の入りまじった衣をつけたのです。

そして、それを緊密な構成と見事なオーケストレーションによって祝典に相応しい華やかな音楽に仕立て上げたのはコダーイならではの腕前でした。


コスモポリタン的な人間が無理矢理演じてみせた民族的な振る舞い

コダーイの管弦楽作品の場合はどうしてもドラティの指揮による演奏が一つの基準線になります。そして、それを一つのラインとして判断すれば、例えばセル&クリーブランド管による「ハーリ・ヤーノシュ」組曲などは随分とスタイリッシュであり、音楽に内包されたハンガリー農民の土臭さなどはきれいに洗い流されていることに気づかされます。

そう言うつもりで、このロジンスキーの演奏を聞くと、これはもかなり変わった演奏だと言うことに気づかされます。

まず、一聴して気がつくのは、低声部の分厚さであり、それ故にある種の重さを感じます。そして、その重い響きで驀進していくのですから、ガランタ舞曲やマロシュセーク舞曲等は、下手をするとハンガリー農民の踊りと言うよりは戦車軍団の驀進かと勘違いしてしまうほどです。
ところが、「ハーリ・ヤーノシュ」組曲の方では、その寓話的世界をあざといまでの表情付けと響きで強調していくのですから、こちらもまたいささか驚かされます。

ロジンスキーといえば鮮烈なまでの直線性と一つ一つの楽器を決して疎かにしない精緻なアンサンブルへの執念が特徴でした。しかし非常な推進力にあふれながら横への旋律ラインがよく歌うというのももう一つの特徴でした。
そして、この二つがある種のバランス感覚を保って彼の音楽の中に同居しているのですが、二つ野舞曲ではこの直進性がかなり剥き出しになっており、「ハーリ・ヤーノシュ」では歌う本能がある種のあざとさの域にまで剥き出しになっています。

もっとも、マロシュセーク舞曲の第2エピソードでの歌い回しなどは見事なものだと思うのですが、最後の驀進を聞いてしまうとそんな「昔のこと」は頭から消えてしまいそうになります。

なお、どうでもいいことですが、ロジンスキーのことを「ポーランド出身」と書いたことに関してそれは間違いではないですかという指摘をいただきました。
確かに、彼が生まれたのは現在はクロアチア領であるスプリトという街ですが、育ったのは当時ポーランド領だったリヴォフという街でした。
ちなみに、このリヴォフという街は現在はウクライナ領で「リヴィウ」という呼び方に変わっています。

このあたりの東ヨーロッパの帰属の問題はややこしいのですが、これを一つに結びつけていたのが「オーストリア=ハンガリー帝国」でした。
彼が、このように各地を転々としたのは、オーストリア・ハンガリー帝国の軍医だった父親の転勤にともなうものだったようです。
そう言う意味で言えば、彼の歌う本能を「ポーランドの魂」などといったのは明らかに誤りだったようです。

彼の根っこは、ある意味では「オーストリア・ハンガリー帝国」というコスモポリタン的な世界にあり、もしかしたらマーラーなどと親近性があるのかもしれません。(彼はマーラーの作品をほとんど取り上げていませんが・・・)
そう言う意味では、この「ハーリ・ヤーノシュ」の組曲などは、そう言うコスモポリタン的な人間が無理矢理演じてみせた民族的な振る舞いだったのかもしれません。
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