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ガーシュイン:ラプソディー・イン・ブルー

(P)ジュリアス・カッチェン マントヴァーニ楽団 1955年5月5日&7日録音

Gershwin:Rhapsody In Blue


ガーシュインの”クラシック音楽”デビュー作

初演はガーシュイン自身のピアノとポール・ホワイトマン楽団によって行われました。(1924年)
 ガーシュイン自身が作曲したのは2台のピアノによる、それも草稿程度のものだったようです。それをオーケストラ版に仕上げたのは楽団付属のアレンジャーだった、ファーディ・グローフェです。(そうです、あの「グランド・キャニオン」で有名なグローフェです。)
 
 彼は、その後もこの作品の改訂と編曲に尽力をして、最終的には1942年に大編成のオーケストラ版を完成させます。そんなわけで、この作品の実体はガーシュインとグローフェの合作みたいなものだといえます。

 実際、クラシックのコンサートで演奏されるのはこの42年のオーケストラ版です。
 しかし、ユング君はあまり詳しくないのですが、シンフォニック・ジャズとしてこの作品を捉えるジャズ・オケなどでは、小編成のオリジナル版で演奏することが多いようです。プレヴィンなんかもこのスタイルで録音をしていますが、全く音楽の雰囲気が違います。
 それから、ピアノソロに即興的なアドリブを入れたものも多いですから、ますます雰囲気が変わってしまいます。いったいどれが本当の「ラプソディー・イン・ブルー」なんだ?と聞かれてもとまどってしまうと言うのがこの作品の特徴だともいえます。

 でも、そんなややこしい話は脇においておくとして、とにかく「粋」な音楽です。冒頭のクラネリットのメロディを聴くだけで嬉しくなってしまいます。20世紀に入って行き詰まりを見せ始めたクラシック音楽の世界にとって、このような響きがとても新鮮に聞こえたことだけは事実です。


あざといマントヴァーニと生真面目すぎるカッチェンが組み合わさった希有の価値がある録音

これはとても面白い演奏と録音です。
マントヴァーニと言えばヴァイオリンの響きを巧みに生かしたイージー・リスニングの第一人者というのが通り相場です。当然の事ながら、クラシック畑の人間からすれば「軽く」見られる存在であったことは否定できません。

しかし、そのマントヴァーニと、ピアニストの中でも芸人肌とは一番縁遠いと思われるカッチェンが組んでガーシュインの「ラプソディー・イン・ブルー」を録音しているのです。
カッチェンの方はいつものように冴えわたった響きでかなりキッチリと演奏しています。

しかし、それをサポートするマントヴァーニと彼のオーケストラは実に楽しそうに、そして粋に音楽を縁取っていきます。こういう風にたっぷりとした響きで、入念に歌わせていくというスタイルはクラシック畑の指揮者には出来なくなってしまいました。
これはもう、言い切ってしまってもいいでしょう。

何故ならば、そう言うやり方は下品であり、ハイソでないという「共通認識」が聴き手と演奏家の間で出来上がってしまっているからです。
そして、それは指揮者だけでなくピアニストやヴァイオリニストのようなソリストでも変わりはありません。

もっと、たっぷりとした響きで濃厚に歌えば聞き手も喜ぶと思うのですが、聞き手の方も聞き手の方で、そう言う素直に心に入ってくるような音楽は価値が一段低いものとして「馬鹿」にしてしまうのです。
そして、結果として、細身の響きでキコキコと削りあげていくような音楽ばかりが「高尚」な音楽としてはびこることになります。

もちろん、それもまた音楽にとってはなくてはならないスタイルですから否定するつもりはありません。
しかし、削りあげたすえに完成すべき音楽の明確なイメージもないのに、ひたすらキコキコやられたのでは、昔の古い録音を自分の部屋で聞いている方がよほど幸せだったりします。
そう考えれば、カラヤンは偉かったと思います。これはもう、嫌みでも何でもなくて、心の底からそう思うようになってきました。

しかし、そのカラヤンでもこのマントヴァーニほどにあざとくは出来なかったのです。
これを聞けば、ドーピングと言われるカラヤン美学もまたかなり上品な音楽だったことに気づかされます。

今のクラシック音楽の世界を支えているのは年寄りばかりです。
そして、そこになかなか若い人が入ってこないのは、こういうマントヴァーニのようなあざとさを持ち込む勇気がないというのも大きな要因になっているような気がします。

それゆえに、そう言うあざといマントヴァーニと生真面目すぎるカッチェンが組み合わさったこの録音は、まさに希有の価値があります。
聞いて楽しければ何の文句があるんだというマントヴァーニの言葉が聞こえてきそうです。

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