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ドヴォルザーク:交響曲第7番 ニ短調 作品70

レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1963年1月28日録音

Dvorak:Symphony No. 7 In D Minor, Op.70, B.141 [1.Allegro maestoso]

Dvorak:Symphony No. 7 In D Minor, Op.70, B.141 [2.Poco adagio]

Dvorak:Symphony No. 7 In D Minor, Op.70, B.141 [3.Scherzo: Vivace - Poco meno mosso]

Dvorak:Symphony No. 7 In D Minor, Op.70, B.141 [4.Finale: Allegro]


ブラームスの仮面をかぶったシンフォニー

1882年、ドヴォルザークはロンドン・フィルハーモニー協会から自作の指揮をするように招待を受けて、はじめてイギリスの地を踏みます。
演奏会は空前の大成功をおさめ、ドヴォルザークは協会の名誉会員に選ばれるとともに、協会のために新しい交響曲を書くように依頼されます。

ちょうど同じ頃に、ブラームスの交響曲3番を聞いて深く感動して新たな交響曲の創作に意欲を見せていたドヴォルザークはその依頼を即座に受け入れます。
1884年の2回目のイギリスへの演奏旅行も成功裏に終り、プラハに戻ったドヴォルザークはその年の暮れから創作に取りかかり、翌年の3月には完成させました。その新しい作品が、現在では「第7番」とナンバーリングされている交響曲です。(この交響曲は出版されたときは「第2番」とされていて、それで長らく通用していました。)

この作品は同年4月からの3回目のイギリス訪問で初演され過大にすぎるくらいの成功と評価を勝ち得ました。
一般的、ドヴォルザークとイギリスは相性が良かったようで、イギリスの評論家は常にドヴォルザークの作品に対して高い評価を与えてきました。
その中でも、この作品は特にお気に入りだったようで、シューベルトのハ長調交響曲やブラームスの最後の交響曲に匹敵する傑作とされ続けてきました。(さすがに、今はそんなことを言う人はいないでしょうが・・・)

この作品はドヴォルザークに特有なボヘミア的な憂愁よりは、どこかブラームスを思わせるような重厚さが作品を支配しています。
内省的でどこか内へ内へと沈み込んでいくような雰囲気があります。

ドヴォルザーク自身も出版業者のジムロックにあてて「新しい交響曲に取り組んでもう長期になるが、それは何か本格的なものになりそうだ」と述べています。
その「本格的なもの」とはブラームスの交響曲をさしていることは明らかです。

誤解を招くかもしれませんが、ドヴォルザークがブラームスの仮面をつけて書いたような音楽です。


抑え気味の叙情性溢れた音楽

バーンスタインのドヴォルザークと言えば真っ先に思い浮かぶのが第9番「新世界より」の62年盤です。
あれはもう、とんでもない演奏でした。

第1楽章のとんでもない直進性と、それをうけた第2楽章のとんでもなく遅いテンポ。
さらには第3楽章の吃驚仰天の疾走に、最終楽章中間部での急ブレーキ。
とどめは最後の最後で長ーーーいフェルマータ。

それら一つ一つがどのような内的関連で結びつくのか全く見当もつかない、まさに、やりたい放題の録音でした。

調べてみると、バーンスタインはドヴォルザークの作品を殆ど録音していません。
交響曲に関しては、9番「新世界より」は62年と53年(ともにコロンビア)、そして86年(ドイツ・グラモフォン)の3度にわたって録音をしているのですが、それ以外では63年録音の7番だけです。
9番と肩を並べる有名曲である8番を一度も録音していないというのは驚きです。

そして、それ以外のジャンルではスラブ舞曲の中から数曲と小さな序曲、あとはチェロやピアノコンチェルトの伴奏程度です。
その生涯において膨大な録音を残した事を考えれば、この数は極めて控えめです。

そして、この「控えめ」と言うことは、裏返せばバーンスタインはこの作曲家に対してそれほど強い共感を抱いていなかったと言うことを示唆するのでしょう。

このブラームスの影響が色濃く刻み込まれた第7番の交響曲は、やりたい放題だった第9番の62年盤とは別人かと思うほどに大人しい演奏に終始しています。あそこで頻発した急発進・急停止もありませんし、抑え気味の叙情性溢れた音楽に仕上がっています。
ただし、あちこちで環境雑音が確認できることから、セッション録音として入念に仕上げたのではなく、基本的には一発録りに近い録音であったことはいつもの通りです。

バーンスタイン自身のものと思われるうなり声も含まれていますから、気合いは入っていたのでしょう。
しかし、仕上がってみると、バーンスタインにしては「常識」的な範囲に収まっていて、いささかがっかりさせられます。

さらに、もう一つ指摘しておきたいのは、録音は「John Mcclure」なのですが、随分と苦労していることです。弱音部では楽器の響きなどは上手く捉えられているのですが、それが膨れあがってくるとそのまま飽和して内部の見通しがよろしくありません。

その苦労の原因は録音に使ったホールにあります。
ニューヨークフィルは長年にわたってカーネギー・ホールを演奏会場として使っていたのですが、1962年に念願の専用ホールを完成させます。それが、エイヴリー・フィッシャー・ホール(2015年にディヴィッド・ゲフィン・ホールと改名)なのですが、完成当時から音響的に問題が指摘されていて、それ以後も莫大な資金を投下しては改修を続けているのですが、どうしようもないというホールです。

2015年にディヴィッド・ゲフィン・ホールと改名されたのも、その音響改修のためにディヴィッド・ゲフィンという人物が1億ドル寄付したためだそうです。

コロンビアにしてみれば新しいホールも完成してお披露目という意図もあったのでしょうが、録音はホールが全てです。音響特性の悪いホールでは、どれほどの手練手管を弄しても、悪いものが良くなることはありません。
マックルーアもこれに懲りたのか、その後もまたマンハッタンホールを録音会場に使うようになっています。

そんなこんなで、バーンスタイン自身も上手くいかないなぁという感じで、仕方なしに安全運転になってしまったのかもしれません。

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