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ドラティ(Antal Dorati)|バルトーク:弦楽のためのディヴェルティメント Sz.113
バルトーク:弦楽のためのディヴェルティメント Sz.113
アンタル・ドラティ指揮 ロンドン交響楽団 1964年7月8.9日録音
Bartok:Divertimento, Sz.113 [1.Allegro non troppo]
Bartok:Divertimento, Sz.113 [2.Molto adagio]
Bartok:Divertimento, Sz.113 [3.Allegro assai]
バルトークの絶頂期を代表する作品の一つ

バルトークと言えば楽器を打楽器的に扱った「暴力的」な音楽というイメージがどうしても払拭できない人がいるようです。そう言う人には、是非とも一度は聞いてもらいたいのがこの「ディヴェルティメント」です。弦楽5部によって演奏されるので「弦楽のためのディヴェルティメント」と呼ばれたりもします。
もっとも、人によっては冒頭の部分から弦楽器を打楽器的に扱う指揮者もいるので、そう言う録音で聞くと「やっぱり、暴力的!!」と思ったりするかもしれませんが、全体的には「夜曲」と言えるような部分が多くて、とっても神秘的な音楽です。
どこかでも書いた記憶があるのですが、1930年代のバルトークをどの様に見るかは意見が分かれます。無調の方に歩を進み始めたそれ以前のバルトークを「良し」とする人々は、古典的なものに回帰した30年代を「退歩」とみなします。逆に、バルトークこそ「現代音楽」という愚かな営みにはまりこまなかった偉大な「現代の作曲家」ととらえる人々にとっては、この30年代の作品こそ彼の絶頂期を形作るものだと評価します。
私などは、迷うことなく30年代の作品こそベストだと確信していますし、その中でもこの「ディヴェルティメント」は初めて聞いたときから大好きに「なれた」作品でした。バルトーク=難解等という構えた姿勢などなくても、すんなりと心と耳に入り込んでくる作品です。
なお、バルトークの記述によると今作品はお世話になった指揮者のパウル・ザッハーへのお礼の意味をこめて夏のお休みに一気に作曲されたそうです。バルトークという人はやるときは結構やる人だったみたいで、短時間に集中して密度の高い作品を書くことがよくあったようです。彼の一番の人気作品であるオケコンも構想から完成までわずか2ヶ月足らずで仕上げていますが、このディヴェルティメントはなんと2週間程度で完成させています。
透明感の高い硬質で澄み切った響き
ドラティの経歴を振り返ってみると、「フランツ・リスト音楽院でコダーイとヴェイネル・レオーに作曲を、バルトークにピアノを学ぶ。」となっています。その若き時代にコダーイやバルトークからどれほどの影響を受けたのかは分かりませんが、後年、フィルハーモニア・フンガリカと「コダーイ管弦楽曲全集」を録音していることから見ても、とりわけコダーイとの結びつきは強かったのかも知れません。
バルトークに関しても、アメリカに亡命してから、後の手兵となるミネアポリス交響楽団を指揮して、バルトークの遺作となるヴィオラ協奏曲の世界初演を行なっています。
ただ不思議なのは、あれほど偉大な作曲家だったバルトークが「フランツ・リスト音楽院」では作曲ではなくてピアノを教えていたという事実です。
しかし、その背景には「作曲は教えるものではないし、私には不可能です」という考えがあったことはよく知られています。ですから、この二人の偉大な作曲家から様々な形で音楽の骨格となる部分を学ぶことができたのは、ドラティの出発点としてはこの上もない幸福だったのでしょう。
ドラティという人は「録音」という行為に対しては非常に積極的でした。若い頃から「Mercury」と深い結びつきを持って膨大な量の録音を残しました。それはモノラル期にまで遡り、やがて時代がステレオ録音の時代にはいると「Mercuru」レーベルにおいて演奏・録音ともに極めて優秀なレコードを量産していきました。
そして、「Mercury」が「Philips」に吸収されても、その後は「Philips」や「DECCA」などで意欲的に録音活動を続けました。私は数えたわけではありませんが、そうやって残された正規録音の数は600近くになるそうです。
単純計算でいくと、彼の録音活動は概ね30年ですから毎年20前後の録音活動を行っていたことになります。その合間にヘタレのオーケストラを徹底的に鍛え上げるという仕事もこなしていたのですから、まさに超人的なパワーです。
そして、「なるほど、これほどに精力的活動を続けられた人であったからこそ、フィルハーモニア・フンガリカとのコンビで「ハイドン交響曲全集」なんてのが完成させることができたのでしょうね。」と納得する次第です。
ドラティのバルトークを聞いていていつも感じるのは「響きの美しさ」です。
バルトークと言えば、確かに楽器を打楽器的に扱う「荒々しさ」があちこちに顔を出すのですが、基本的には透明感の高い硬質で澄み切った響きこそが真骨頂だと思います。ドラティの演奏で聞くと、その響きが見事に実現されていることに感心させられます。
ただし、その反面として、バルトークのもう一つの顔である民族的な土俗性は希薄です。そのあたりが、フリッチャイなどとは方向性が異なります。
それにしても、ハンガリーという国は凄い国です。
この国が生み出した指揮者を数え上げるだけでも、いささか呆然となってしまいます。
シャーンドル・ヴェーグ、ユージン・オーマンディ、イシュトヴァン・ケルテス、ゲオルク・ショルティ、ジョージ・セル、フェレンツ・フリッチャイ、フリッツ・ライナー・・・。
そういえば、ハンス・リヒターやアルトゥル・ニキシュもハンガリーの人だったのではないでしょうか。
こういう系列の中に数え上げられると、アンタル・ドラティという名前はいささか霞んでしまうのかも知れませんが、それでもあらためて聞き直してみると、とりわけバルトークのような同郷の作曲家に関してならばその価値は絶対に忘れてはいけないように思います。
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