AmazonでCDをさがす AmazonでカザルスのCDをさがす
Home |
カザルス |ホワイトハウス・コンサート
ホワイトハウス・コンサート
(Vc)パブロ カザルス, (P)ミエチスラフ ホルショフスキー, (Vn)アレクサンダー シュナイダー 1961年11月13日録音 Mendelssohn:Trio In D Minor For Piano, Violin And Cello, Op. 49 [1.Molto Allegro Ed Agitato]
Mendelssohn:Trio In D Minor For Piano, Violin And Cello, Op. 49 [2.Andante Con Moto Tranquillo]
Mendelssohn:Trio In D Minor For Piano, Violin And Cello, Op. 49 [3.Scherzo]
Mendelssohn:Trio In D Minor For Piano, Violin And Cello, Op. 49 [4.Finale]
Couperin:Concert Pieces For Cello And Piano [1.Prelude]
Couperin:Concert Pieces For Cello And Piano [2.Sicillene]
Couperin:Concert Pieces For Cello And Piano [3.La Tromba]
Couperin:Concert Pieces For Cello And Piano [4.Plalnte]
Couperin:Concert Pieces For Cello And Piano [5.Air De Diable]
Schumann:Adagio And Allegro In A Flat For Cello And Piano, Op. 70
Song Of The Birds For Cello And Paino
ホワイトハウス・コンサート
「芸術家は政治家ではないが、人間の尊厳がかかわる時にはいかなる犠牲を払ってでも立場をはっきりとさせるべきだ。」
これが、フランコ独裁政権に対するカザルスの揺らぐことのなかった立場でした。
スペイン内戦がフランコの勝利で終結した後はスペインに戻ることを拒否したのは彼にしてみれば当然の選択でした。そして、第2次大戦が連合国側の勝利で終結したにもかかわらずフランコ独裁政権が生きながらえたのは、カザルスにしてみれば予想もしなかったことであり、さらにはその独裁政権を多くの国が承認していったことは許し難いことでした。
ですから、戦後もまた、彼は己の立場をはっきりさせるためにフランコ独裁政権を承認する国での演奏活動は一切拒否したのです。
そんなカザルスに時のアメリカ大統領ケネディが演奏会の依頼をしたのです。
アメリカはイギリスやフランスとは違って現実的対応を迫られる必要もなかったので、フランコ独裁政権に対しては批判的な立場を維持していました。フランコにとっても、1898年の米西戦争の記憶から来る反米感情も根強かったので、この両者の関係は戦争中も戦争後もぎくしゃくしたものでした。
しかし、東西冷戦が激化してくると、地中海の入り口というスペインの地政学的な重要性も無視できないと言うことで、フランコ独裁政権との関係修復を模索し始めます。
フランコもまた、国際的な孤立の中で国民生活の窮乏化が進む事で、いつまでも反米感情にこだわっている余裕もなくなっていきました。
そして、最終的には、フランコの「どうせ結婚しなければならないのなら金持ち女のほうが良い」という判断で、この両者は歩み寄り1953年に「米西防衛協定」が結ばれることになります。
アメリカはこの協定によって戦略的に重要な場所に空軍基地を確保することができ、スペインはその見返りとしてアメリカを中心とする西側資本の導入によって経済を立て直す事が可能となったのです。
結果から言えば、この両者の歩み寄りによってスペインは60年代以降に奇蹟の経済復興を成し遂げ、独裁者フランコはカザルスが亡くなった2年後の1975年に、日本風の表現を使えば天寿を全うして畳の上で死ぬことができたのです。
カザルスの立場から言えば、このアメリカの心変わりは許せるものではなかったでしょう。
そんなカザルスに対して、ケネディは招待状を送ったわけです。
名目はプエルトリコ総督ルイス・ムニョス・マリンを主賓とする晩餐会での演奏会でした。
この依頼にカザルスはかなり悩んだようです。
その理由の一つは、プエルトリコが彼の母と妻の故郷だったことです。
二つめは、結果としては幻想にしかすぎなかったのですが、若きケネディが掲げた理想主義への共鳴と期待でした。
そして、カザルスは悩みに悩んだ結果としてこの依頼を引き受けることとなり、ホワイトハウスでコンサートが開かれることになるのです。
戦争の世紀を揺らぐことのない信念を持って生き抜いた男の剛直な思い
この演奏会にはバーンスタイン、オーマンディ、ストコフスキーという有名指揮者、バーバー、カーター、コープランド等の作曲家も招待されていました。
カザルスは盟友とも言うべき、ホルショフスキーとシュナイダーで三重奏団を結成して以下の3曲を演奏します。
メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番ニ短調 op.49
クープラン:チェロとピアノのための演奏会用小品
シューマン:アダージョとアレグロ 変イ長調 op.70
晩餐会での演奏会は長くても20分程度というのが約束事らしいのですが、この時はそう言う前例にとらわれることなく、60分を超す長時間の演奏会になりました。
そして、その最後にアンコールとしてカザルスが演奏したのがカタロニア民謡の「鳥の歌」でした。
カザルスが「鳥の歌」をもって終了するまで、その演奏会は神聖な儀式に参加するがごとき雰囲気だったと伝えられています。
しかしながら、この時カザルスは既に85歳でした。
チェリストとしてのピークはとっくに過ぎ去っている事は誰の耳にも分かる事であり、それ故にこれを「3人の巨匠が感動的な演奏を繰り広げる、まさに全人類必聴の名盤」などという歯の浮いたような宣伝文句に同意する気は全くありません。
しかし、20世紀という、戦争の世紀を揺らぐことのない信念を持って生き抜いた男の剛直な思いが貫かれていることは誰の耳にも届くはずです。
レコードというものが、その言葉の本来の意味として持っている「歴史の記録」としてみれば、これは一つの歴史的証人とも言える貴重なドキュメントだと言えます。
Youtubeチャンネル登録
古い録音が中心ですがYoutubeでもアップしていますので、是非チャンネル登録してください。
関連コンテンツ
この演奏を評価してください。
よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
2865 Rating: 5.4 /10 (124 votes cast)
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2023-03-31]
シューマン:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調, WoO 23(Schumann:Violin Concerto in D minor, WoO 23)
(Vn)ヘンリク・シェリング:アンタル・ドラティ指揮 ロンドン交響楽団 1964年7月録音(Henryk Szeryng:(Con)Antal Dorati London Symphony Orchestra Recorded on July, 1964)
[2023-03-30]
テレマン:ターフェルムジーク 第3集 協奏曲 変ホ長調(2つのホルン、弦楽と通奏低音のための)(Telemann:Concerto for 2 Trombe selvatiche and 2 Violins, TWV 54:Es1)
フランス・ブリュッヘン指揮 アムステルダム合奏団 (Harpsichord)グスタフ・レオンハルト (Horn)アドリアーン・ヴァン・ウォウデンベルク, ヘルマン・バウマン 1964年録音(8Frans Bruggen:Concerto Amsterdam (Harpsichord)Gustav Leonhardt (Horn)Adriaen van Woudenberg, Hermann Baumann Recorded on 1964)
[2023-03-29]
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調, Op.57「情熱」(Beethoven: Piano Sonata No.23 In F Minor, Op.57 "Appassionata")
(P)サンソン・フランソワ:1963年2月19日,26日,3月8日&4月8日録音(Samson Francois: Recorded on February 19,26,March 8&April 8 1963)
[2023-03-28]
ワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」より「前奏曲と愛の死」8Wagner:Tristan und Isolde Act1 Prelude und Liebestod)
ルドルフ・ケンペ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1958年2月10日~13日&17日録音(Rudolf Kempe:Vienna Philharmonic Orchestra Recorded on February 10-13&17, 1958)
[2023-03-27]
グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調, Op.16(Grieg:Piano Concerto in A Minor, Op.16)
(P)ジョルジ・シフラ:アンドレ・ヴァンデルノート チェコ・フィルハーモニア管弦楽団 1958年録音(Gyorgy Cziffra:(Con)Andre Vandernoot Philharmonia Orchestra Recorded on 1958)
[2023-03-26]
シューマン:3つのロマンス, Op.94(Schumann:Drei Romanzen. Op.94)
(Cello)モーリス・ジャンドロン (P)ジャン・フランセ 1952年8月18日録音(Maurice Gendron:(P)Jean Francaix Recorded on August 18, 1952)
[2023-03-25]
ブゾーニ:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調, Op. 35a(Busoni:Violin Concerto in D major, Op 35a)
(Vn)ジークフリート・ボリース:セルジュ・チェリビダッケ指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1949年9月4日録音(Siegfried Borries:(Con)Sergiu Celibidache:the Berlin Philharmonic Orchestra Recorded on September 4, 1949)
[2023-03-24]
ファリャ:恋は魔術師(Falla:El amor brujo)
アタウルフォ・アルヘンタ指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1957年8月29日ライブ録音(Ataulfo Argenta:Orchestre de la Suisse Romande Recorded on August 29, 1957)
[2023-03-23]
スーク:交響詩「人生の実り」Op.34(Suk:The Ripening Op.34)
ヴァーツラフ・ターリヒ指揮:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 1954年9月7日録音録音(Vaclav Talich:Czech Philharmonic Recorded on September 7, 1954)
[2023-03-22]
ヨハン・シュトラウス II:ワルツ「春の声」 Op.410(Johann Strauss II:Voices of Spring, Op.410)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1959年12月27日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on December 27, 1959}