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シューマン:チェロ協奏曲 イ短調 作品129

(Vc)ヤノシュ・シュタルケル:カルロ・マリア・ジュリーニ指揮フィルハーモニア 1957年9月17日録音



Schumann:Cello Concerto in A minor, Op.129 [1.Nicht Zu Schnell]

Schumann:Cello Concerto in A minor, Op.129 [2.Langsam]

Schumann:Cello Concerto in A minor, Op.129 [3.Sehr Lebhaft(Cadenza:Pierre Fournier)]


「よい作品」がないのならば自分で書いてみよう!!


色々な数え方はあると思うのですが、一般的にこのシューマンの作品と、ハイドン、ドヴォルザークの作品を持って「三大チェロ協奏曲」と呼ばれるようです。ドヴォルザークのチェロ協奏曲がこのジャンルにおける屈指の名曲であることに異論はないと思うのですが、残る2曲については色々意見もあることでしょう。
しかしながら、このシューマンのコンチェルトから立ち上るロマン的な憂愁と独奏チェロの見事な技巧を聞くと、少なくともこちらのは同意はよそうかな・・・と思ってしまいます。

元々、シューマンがこの作品を書こうと思ったきっかけは彼が「評論家」であったことに起因します。
当然、ドヴォルザークのコンチェルトは未だ存在しなかった訳なので、評論家であるシューマンから見れば、このジャンルというのはあまりにもすぐれた作品がないことを憂えたらしいのです。そして、普通の「評論家」ならば、そう思ったところでそれだけで終わるのですが、作曲家でもあったシューマンは、「それならば、自分でそのすぐれた作品」を書いてみよう」と思ってしまった次第なのです。

さらに付け加えれば、その「作曲家」でもあるシューマンは、ロマン派の数ある作曲家の中でもとびきりすぐれた作曲家でもあったので、そうやって決心して生み出したこのチェロ協奏曲もまた、その決心に違わぬ「傑作」となった次第なのです。

まあ、言葉にしてみれば簡単なのですが、それを実際にやり遂げるとなると常人のなし得ることではありません。

このコンチェルトは、シューマンが期待をこめて乗り込んだデュッセルドルフにおける最初の大作です。
それだけに、チェロの憂愁に溢れた響きが一つの特徴でありながらも、音楽全体としては明るく晴れやかな力に満ちています。

そして、この音楽の価値に確信を持っていたシューマンは、何人かのチェリストに演奏上の問題に関わる幾つかの助言(チェリストにとってあまりにも難しすぎる!!)は受け入れたのですが、その他の音楽の本質に関わるようなアドバイスは全て無視したのでした。そう言う助言の大部分は、当時の聴衆にとって「聞きやすく」するための助言だったようなのですが、その様な助言は全て無視したのです。結果として、当時の聴衆にとっては容易に受け入れられる音楽ではなかったので好意を持って受け入れられることはなかったようですが、歴史はシューマンが正しかったことを如実に証明することになるのです。

なお、この作品は3楽章構成なのですが、全体は途切れのないひとまとまりとして演奏されます。


響きが「苦い」

振り返ってみると、シュタルケルのコンチェルトを一つもアップしていないことに気づきました。
これはだめですね・・・。

と言うことで、50年代の後半を中心として、彼のコンチェルトの録音をまとめて聞いてみることにしました。
そして、そうやってまとめて聞いてみることで、何故に今でアップしていなかったのかを思い出しました。それは、かつて、彼がドラティ&ロンドン交響楽団と録音したドヴォルザークのチェロ協奏曲(1962年録音)を聞いた時に、つまらない!!と思ったからでした。
うーん、シュタルケルの演奏をつかまえて「つまらない」とは、なかなか思い切った発言だと思うのですが、確かにその時はつまらないと思ったのでした。そして、その時にそう思ったがゆえに、今に至るまで彼のコンチェルトは一つもアップしていないという仕儀に相成った次第なのです。
では、何処がつまらないのかと言えば、それもまた、今回あれこれの録音を聞いてみてありありと思い出すことができました。
一言で言えば、あまりにも大人しくとこぢんまりとした音楽になっているのです。
サン=サーンスのコンチェルトなんかはその典型で、オケの響きの中から前に出ようと奮闘しているのでしょうが、何故かチェロは最後まで埋没気味です。さらに、その響きにも、サン=サーンスならばほしいと思う「艶」や「色気」も希薄です。

この「埋没気味」という感じは62年録音のドヴォルザークの時にも強く感じた次第でした。
これがロストロ小父さんなんかだと、もっと豪快にオケを突き抜けてくるんですが、それと比べれば実に大人しくて慎ましやかなのです。
シュタルケルと言えばコダーイやバッハの無伴奏で聞かれるように「豪快」というイメージがあっただけに、その落差にしばし考え込んでしまいました。ただし、この時代を代表するチェリストには全て同じような不満は感じていましたから、それはそれで一つの時代の制約だったのかもしれません。(例:グレゴール・ピアティゴルスキー:シャルル・ミュンシュ指揮ボストン交響楽団)

カザルスを別格とすれば、この時代のチェリストを後のロストロ小父さんと較べるのは根本的に間違っているのでしょう。

ただ、古い録音ではあるのですが、56年録音のドヴォルザークは、62年盤よりはチェロがしっかりと主張していますし、フィルハーモニア管の響きも実に立派ですし、それをグイグイ引っ張っていくジュスキントの指揮も見事なものです。この時代のフィルハーモニア管は疑いもなく世界のトップクラスに位置したオケでした。(本当は世界一!!と言いたいほどです)
ただ、それでも、このチェロの響きにはどこか違和感を覚えます。そう思ってネット上を眺めていると、この響きを「苦い」と評している人がいて、実に上手いこというものだと感心しました。今回聞いた中では、どれもこれもが「苦い響き」で、それが取りわけ似合わないのがサン=サーンスだったのかもしれません。

と言うことで、ここまで書けばシュタルケルを愛する人からは怒りの礫が跳んできそうなのですが、しかし、私は彼の独奏曲作品や室内楽作品の演奏は高く評価しています。ただ、不思議なくらいに彼のコンチェルト演奏は私にとっては相性が悪いのです。
ただし、そうやって聞き進んでいくうちに出会ったハイドンのコンチェルトなんかだと、ジュリーニ&フィルハーモニア管の響きが実に立派で、その響きに身を浸しているうちにオケが主役の「チェロ独奏付きの管弦楽曲」という風情になってきて、それはそれで悪くないという感じになってきます。もちろん、そんな言い方は、ソリストとしてのシュタルケルに対するなんの褒め言葉にもなっていないのですが・・・(^^;。

もちろん、最終判断は個々の聞き手の方にゆだねるべき問題ではあります。

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