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チャイコフスキー:イタリア奇想曲 作品45

ドラティ指揮 ロンドン交響楽団1955年12月録音




気力・体力ともに充実した時期の作品

メック夫人からの不思議な資金援助で音楽院の仕事から解放され、さらには不幸な結婚生活の失敗からも立ち直って、気力・体力ともに充実した時期の作品です。
作品は、通して演奏されるのですが、細かく見ていくと5つの部分に分かれます。

<第1部:アンダンテ・ウン。ポーコ・ルパート>
冒頭のトランペットのファンファーレが印象的です。この旋律は、チャイコフスキーがローマに滞在しているときに聞こえてきた騎兵隊のラッパの響きに由来していると言われています。やがて、イタリア民謡「美しい娘さん」の旋律もあらわれて、イタリアの南国的情緒が大きなクライマックスを迎えます。

<第2部:アレグロ・モデラート>
音楽は4拍子になって優美な雰囲気に変わります。ここは、結構しつこく強弱記号が書き込まれていて、それをどのように受け取ってどのように扱うのかは指揮者によってかなり差が出る場面でもあります。
音楽は、再び第1部の旋律が登場して第3部へと引き継がれます。

<第3部:プレスト>
管楽器がメインとなって印象的なタランテランの旋律を歌います。タランテランとはナポリ発祥の舞曲で、ここで音楽はまた6拍子に戻り快活に踊り出します。

<第4部:アレグロ・モデラート>
音楽3拍子になって落ち着きを取り戻し、第1部の民謡の旋律が重厚な響きで荘重に歌い上げられます。

<第5部:プレスト>
音楽は再び6拍子に戻って第3部のタランテランのの旋律が帰ってきます。ピアニシモで始まった音楽は次第に力をしていきクライマックスを迎えます。そして、その後に短い経過句を経て音楽は2拍子になって怒濤の終結に突き進んでいきます。

と言うことで、非常に分かりやすい構成、華やかなオーケストレーション、そして何よりも魅力的で美しい旋律が散りばめられているので、初演の時から絶賛されました。
なお、この作品はイタリア旅行の時に着想され、そのスケッチをもとに帰国後に完成されています。イタリア旅行の時のチャイコフスキーはそのあまりの刺激と魅力で舞い上がっていて、父の訃報に接しても帰国せず葬儀にも参加しないほどだったので、それはきわめて賢明な判断だったと言えます。

1812年の影で


聞くところによると、このコンビによるチャイコフスキーの「序曲 1812年」はLP時代に世界中で200万枚売れたそうです。おそらくは、世界中のオーディオマニアが買ったのでしょう。友人を家に招いて、自慢のシステムでLPを再生して悦に入っている顔がうかんでくるようです。
陸軍士官学校のカノン砲がぶっ放され、72個の鐘が壮大に鳴り響くというのがこの録音の売りなのですが、確かにその迫力たるや尋常のものではありません。正直言って、カノン砲の砲撃が始まると、スピーカーが壊れはしないだろうか・・・という不安がよぎるほどの迫力です。
優秀録音で名を馳せたマーキュリーレーベルの中でも特筆すべき録音だと言えます。そして、こういうのを聞かされると、録音という営みはこの時代から何も進歩していないのではないかと思ってしまいます。そう言う意味では、これは疑いもなく50年代を代表する録音の一つだと言い切っていいでしょう。

その超有名録音の脇でひっそりと録音されたのが、この「イタリア奇想曲」です。

ともすれば、、カノン砲や鐘の音ばかりが話題になる「序曲 1812年」の録音とは違って、こちらの方はこのコンビの音楽的な素晴らしさがクリアに伝わってきます。
これほどの高解像度の録音でもほとんど破綻を感じさせないオケの力量は、偉大なるオーケストラトレーナーだったドラティによる鍛錬のたまものでしょう。そして、この手の標題音楽はともすれば緩みがちになったり、粗っぽくなったりしがちなのですが、どこまでいっても音楽をキリリと引き締めているのはたいしたものです。

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