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Home|ジョージ・セル(George Szell)|チャイコフスキー:イタリア奇想曲 作品45

チャイコフスキー:イタリア奇想曲 作品45

セル指揮 クリーブランド管弦楽団 1958年2月28日~3月1日録音

Tchaikovsky:Capriccio Italien


気力・体力ともに充実した時期の作品

メック夫人からの不思議な資金援助で音楽院の仕事から解放され、さらには不幸な結婚生活の失敗からも立ち直って、気力・体力ともに充実した時期の作品です。
作品は、通して演奏されるのですが、細かく見ていくと5つの部分に分かれます。

<第1部:アンダンテ・ウン。ポーコ・ルパート>
冒頭のトランペットのファンファーレが印象的です。この旋律は、チャイコフスキーがローマに滞在しているときに聞こえてきた騎兵隊のラッパの響きに由来していると言われています。やがて、イタリア民謡「美しい娘さん」の旋律もあらわれて、イタリアの南国的情緒が大きなクライマックスを迎えます。

<第2部:アレグロ・モデラート>
音楽は4拍子になって優美な雰囲気に変わります。ここは、結構しつこく強弱記号が書き込まれていて、それをどのように受け取ってどのように扱うのかは指揮者によってかなり差が出る場面でもあります。
音楽は、再び第1部の旋律が登場して第3部へと引き継がれます。

<第3部:プレスト>
管楽器がメインとなって印象的なタランテランの旋律を歌います。タランテランとはナポリ発祥の舞曲で、ここで音楽はまた6拍子に戻り快活に踊り出します。

<第4部:アレグロ・モデラート>
音楽3拍子になって落ち着きを取り戻し、第1部の民謡の旋律が重厚な響きで荘重に歌い上げられます。

<第5部:プレスト>
音楽は再び6拍子に戻って第3部のタランテランのの旋律が帰ってきます。ピアニシモで始まった音楽は次第に力をしていきクライマックスを迎えます。そして、その後に短い経過句を経て音楽は2拍子になって怒濤の終結に突き進んでいきます。

と言うことで、非常に分かりやすい構成、華やかなオーケストレーション、そして何よりも魅力的で美しい旋律が散りばめられているので、初演の時から絶賛されました。
なお、この作品はイタリア旅行の時に着想され、そのスケッチをもとに帰国後に完成されています。イタリア旅行の時のチャイコフスキーはそのあまりの刺激と魅力で舞い上がっていて、父の訃報に接しても帰国せず葬儀にも参加しないほどだったので、それはきわめて賢明な判断だったと言えます。


小品にも一切手を抜かないセルの凄味

どこかのサイトで、セルによるリムスキー・コルサコフの「スペイン奇想曲」の演奏を取り上げて「ロシア的情緒にかける」と書いていた人がいましたが、いったい「スペイン奇想曲」のどこに「ロシア的情緒」があるのだと、思わず首をひねってしまいました。
これは、例えばドヴォルザークのスラブ舞曲などにも言えることですが、こういう民族的情緒にあふれた作品を取り上げるときに、セルはその様な民族的雰囲気にもたれかかるようなことは絶対しなかったと言うことを思い出す必要があります。それは、一見するとスコアに書かれた音をひたすら精緻に再現しているだけのように聞こえますが、しかし、そう言う音楽を聞き進んでいくと、その精緻さの背景から深い民族的情緒が湧きだしてくるのを感じ取れるはずです。そして、そう言う深い情緒は変にしなをつけたり、こぶしをきかせたりすると、いとも簡単にすっ飛んでしまうような性質のものなのです。

そう言えば、昔の大指揮者は、こういう小品を相手に、結構本気で取り組んでいました。それは、媒体がSP盤という、一枚で精々4?5分しか収録できない限界から、そう言う小品が「メイン」の作品となり得たという背景があります。今は、そう言う小品は大作を収録したCDの「埋め草」的な扱いしか受けていませんから、演奏の方も「とりあえず音にしました」程度の志の低いものばかりです。
そんな中にあって、意外と言えば意外かもしれませんが、セルはその様な小品に対しても常に本気で取り組んでいて、実に凄味のある演奏を聴かせてくれます。やはり、どんな作品を取り上げても、セルの完璧主義というのは揺るがなかったと言うことなのでしょう。

この演奏を評価してください。

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