クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|バーンスタイン(Leonard Bernstein)|チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調 作品64

チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調 作品64

バーンスタイン指揮 ニューヨークフィル 1960年5月16日録音

Tchaikovsky:Symphony No. 5 in E minor Op.64 [1st movement]

Tchaikovsky:Symphony No. 5 in E minor Op.64 [2nd movement]

Tchaikovsky:Symphony No. 5 in E minor Op.64 [3rd movement]

Tchaikovsky:Symphony No. 5 in E minor Op.64 [4th movement]


何故か今ひとつ評価が低いのですが・・・

チャイコフスキーの後期交響曲というと4・5・6番になるのですが、なぜかこの5番は評価が今ひとつ高くないようです。

 4番が持っているある種の激情と6番が持つ深い憂愁。その中間にたつ5番がどこか「中途半端」というわけでしょうか。それから、この最終楽章を表面的効果に終始した音楽、「虚構に続く虚構。すべては虚構」と一部の識者に評されたことも無視できない影響力を持ったのかもしれません。また、作者自身も自分の指揮による初演のあとに「この作品にはこしらえものの不誠実さがある」と語るなど、どうも風向きがよくありません。
 ただ、作曲者自身の思いとは別に一般的には大変好意的に受け入れられ、その様子を見てチャイコフスキー自身も自信を取り戻したことは事実のようです。

 さてユング君はそれではどう思っているの?と聞かれれば「結構好きな作品です!」と明るく答えてしまいます。チャイコフスキーの「聞かせる技術」はやはり大したものです。確かに最終楽章は金管パートの人には重労働かもしれませんが、聞いている方にとっては実に爽快です。第2楽章のメランコリックな雰囲気も程良くスパイスが利いているし、第3楽章にワルツ形式を持ってきたのも面白い試みです。
 そして第1楽章はソナタ形式の音楽としては実に立派な音楽として響きます。
 確かに4番と比べるとある種の弱さというか、説得力のなさみたいなものも感じますが、同時代の民族主義的的な作曲家たちと比べると、そういう聞かせ上手な点については頭一つ抜けていると言わざるを得ません。
 いかがなものでしょうか?


俺さま的チャイコフスキー

バーンスタインにとって表芸がマーラーであることは誰もが異存はないでしょうが、その次に上手くいっているのは誰かと言うことになるといろいろ意見が分かれると思います。

生涯にわたってレパートリーの重要な部分であり続けたシューマンの名前を挙げる人もいるでしょう。
何かのインタビューで特別な意味を持った一枚を聞かれて、ショスタの7番(シカゴ響)を挙げたことを根拠にショスタコーヴィチという変化球を投げる人もいるかもしれません。
もちろん、最晩年ほどテンポは遅くなってはいないけれどニューヨーク時代よりは遙かにスケールアップされた70年代の全集の素晴らしさを根拠としてベートーベンという直球を投げる人もいるでしょう。

しかし、私は思いきってチャイコフスキーの名前を挙げたいと思います。
バーンスタインのチャイコフスキーと言えば、あの超絶的テンポによる最晩年の「悲愴」を思い出す人がいるでしょう。あれは、最晩年はウィーンフィルを相手に録音することの多かったバーンスタインが何故か古巣のニューヨークフィルを指揮して録音した一枚でした。

あの録音が発売されたのは、クラシック音楽などというものを本気で聞き始めて10年くらいたった頃で、おまけにセルやライナーのようなスタイリッシュな塩素が一番と思っていた頃なので、「何だ、これは?マーラーと間違ってるんじゃないの?」などといっぱしな口をきいていたものです。
今にして思えば、マーラーと間違っていたのではなくて、まさにこの作品がまっすぐにマーラーにつながっていくことをどんなお馬鹿にも分かるように示してくれた演奏だったのです。

バーンスタインという人は基本的には「俺さまスタイル」の音楽家でした。それは、「のだめ」で描かれていた若き日の「千秋」のスタイルを死ぬまで貫いていた人でした。
まずは「俺さまの音楽を聴け!」です。
そして、その「俺さまの音楽」が気に入らなければ気に入らないで結構、後はカラヤンでもムーティでも好きな連中の音楽を聴けばいいと言うスタイルです。そう言う意味で、そんな「俺さまスタイル」が一番ぴったりと身に合っているのがマーラー、そして次に身に合っていたのがチャイコフスキーではないかと思う次第なのです。

バーンスタインは交響曲の王道としてベートーベンとブラームスは義務的(?)に録音し、次に生涯愛したシューマンも複数回録音しています。
それ以外で、交響曲を全曲録音しているのはチャイコフスキーとシベリウスだけです

。ちなみに、ニールセンは第1番の1曲だけ欠落していますし、ハイドンもめぼしい作品は全て録音しているのですが、如何せん数が多すぎます。

こうして眺めてみると、とてもメジャーとは言えない1番から3番まで録音して全集として完成させているチャイコフスキーの扱いは別格といえます。そして、歌うところは執拗にねっとりと歌い、驀進するところは全力で走り抜いていくという若い頃のスタイルがはっきりと刻印されているのもチャイコフスキーの特長です。
たとえば、悲愴の両端楽章の鳴き節はやりすぎと思う人がいるかもしれませんし、第5番の第1楽章のネッチリとした歌い回しはアメリカ版ド演歌かもしれません。しかし、同じく第5番の終楽章は「効果に次ぐ効果」とブラームスが酷評した音楽ですが、「効果に次ぐ効果のどこが悪い」とばかりにたたみ込んでいくド迫力はこの時代のバーンスタインあらで派の魅力があふれています。

そう言う意味では、この「俺さま的チャイコフスキー」に違和感を覚える人もいるでしょうが、それが逆に言えば最もバーンスタインらしい音楽を楽しめると言うことです。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



2084 Rating: 5.6/10 (156 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2014-12-06:セル好き


2014-11-19:ろば


2014-11-17:joshua


2016-03-16:emanon


2023-09-14:大串富史





【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-06-15]

エルガー:ため息 (ソスピーリ), Op.70(Elgar:Sospiri, Op.70)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1966年7月14日~16日録音(Sir John Barbirolli:New Philharmonia Orchestra Recorded on July 14-16, 1966)

[2025-06-11]

ベートーベン:交響曲第4番 変ロ長調 作品60(Beethoven:Symphony No.4 in Bflat major ,Op.60)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Hamburg Philharmonic Orchestra Recorded on 1959)

[2025-06-08]

ラロ:スペイン交響曲 ニ短調, Op21(Lalo:Symphonie espagnole, for violin and orchestra in D minor, Op. 21)
(Vn)アルフレード・カンポーリ:エドゥアルド・ヴァン・ベイヌム指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 1953年3月3日~4日録音(Alfredo Campoli:(Con)Eduard van Beinum The London Philharmonic Orchestra Recorded on March 3-4, 1953)

[2025-06-04]

エルガー:交響曲第2番変ホ長調Op.63(Elgar:Symphony No.2 in E-flat major, Op.63)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1954年6月日~9日録音(Sir John Barbirolli:Philharmonic Hall Recorded on June 8-9, 1954)

[2025-06-01]

ベートーベン:交響曲第2番 ニ長調 作品36(Beethoven:Symphony No.2 in D major)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1959)

[2025-05-29]

ラヴェル:組曲「クープランの墓(管弦楽版)」(Ravel:Le Tombeau de Couperin)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1958年11月16日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on November 16, 1958)

[2025-05-26]

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調, Op.35(Tchaikovsky:Violin Concerto in D major Op.35)
(Vn)アルフレード・カンポーリ:アタウルフォ・アルヘンタ指揮 ロンドン交響楽団 1956年12月27日~28日録音(Alfredo Campoli:(Cin)Ataulfo Argenta London Symphony Orchestra Recorded on December 27-28, 1955)

[2025-05-22]

ベートーベン:交響曲第1番 ハ長調 作品21(Beethoven:Symphony No.1 in C major , Op.21)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1959)

[2025-05-18]

ラヴェル:スペイン狂詩曲(Ravel:Rhapsodie espagnole)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1963年2月24日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on February 24, 1963)

[2025-05-15]

エルガー:ヴァイオリン協奏曲 ロ短調, Op.61(Elgar:Violin Concerto in B minor, Op.61)
(Vn)アルフレード・カンポーリ:サー・エードリアン・ボールト指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 1954年10月28日~29日録音(Alfredo Campoli:(Con)Sir Adrian Boult The London Philharmonic Orchestra Recorded on October 28-29, 1954)