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シューマン:交響曲第4番 ニ短調 作品120

バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1960年10月10日録音

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Schumann:Symphony No.4 in D minor Op.120 [1st movement]

Schumann:Symphony No.4 in D minor Op.120 [2nd movement]

Schumann:Symphony No.4 in D minor Op.120 [3rd movement]

Schumann:Symphony No.4 in D minor Op.120 [4th movement]


マーラーへとつながっていく作品なのでしょうか?

シューマンのシンフォニーというのは年代的に見ればベートーベンとブラームスの中間に位置します。ですから、交響曲の系譜がベートーベン-シューマン-ブラームスと引き継がれてきたのかと言えば、それはちょっと違うようです。
ロマン派の時代にあってはメロディとそれをより豊かに彩る和声に重点が置かれていて、そのことは交響曲のような形式とはあまり相性がよいとは言い難いものでした。そのことは、リストによる交響詩の創作にも見られるように、構築物として音楽を仕上げるよりは物語として仕上げることに向いた仕様だったといえます。
こういう書き方をすると誤解を招くかもしれませんが、シューマンの交響曲を聴いていると、それはベートーベンから受け継いだものをブラームスへと受け継いでいくような存在ではなくて、ベートーベンで行き着いた袋小路から枝分かれしていった一つの枝のような存在であり、それがリストに代表される交響詩へと成長していったと把握した方が実態に近いのではないかと思います。
とりわけこの第4番の交響曲を聴くと、それはベートーベン的な構築物よりは、交響詩の世界の方により近いことを実感させられます。
事実、シューマン自身もこの作品を当初は「交響的幻想曲」とよんでいました。

この作品は番号は4番となっていますが、作曲されたのは第1番と同じ1841年です。当初はその作曲順の通りに第2番とされていて、同じ年に初演もされています。
しかし、第1番と違って初演の評判は芳しくなく、そのためにシューマンは出版を見あわせてしまいます。そのために、5年後に作曲された交響曲が第2番と名付けられることになりました。
その後この作品はシューマン自身によって金管楽器などの扱いに手直しが加えられて、1853年にようやくにして出版されることになります。
シューマンの音楽というのはどこか内へ内へと沈み込んでいくような雰囲気があるのですが、4曲ある交響曲の中でもその様な雰囲気がもっとも色濃く表面にでているのがこの第4番の交響曲です。そして、こういう作品をフルトヴェングラーのような演奏で聞くと、「そうか、これはリストではなくてマーラーにつながっていくんだ」と気づかされたりする作品です。第3楽章から第4楽章につながっていく部分は誰かが「まるでベートーベンの運命のパロディのようだ!」と書いていましたが、そういう部分にもシューマンの狂気のようなのぞいているような気がします。


若きバーンスタインの自画像

バーンスタインのシューマンと言えば真っ先に思い浮かぶのは、彼が最晩年に来日して行ったPMFのオケとのリハーサル風景です。
別に深い意味もなく、偶々テレビをつけたらやっていたというくらいの興味でした。
そんな程度の興味だったので、最初は見るともなく見ていたのですが、すぐにバーンスタインのリハーサルの凄さに引き込まれていってしました。

取り上げていたのはシューマンの2番です。シューマンの交響曲というのはドイツ古典派およびロマン派の大御所連中の交響曲の中に置いてしまうといささかマイナーです。そんなマイナーな作品の中でも、第2番のシンフォニーは一番マイナーかもしれません。

テレビの映像から流れていたのは第3楽章「Adagio espressivo」でした。
まあ、なんということもないような月並み音楽が演奏されていました。ところが、そのなんということもない月並みな音楽が、バーンスタインの一言一言によって少しずつ形を変えていくのが手に取るように分かるのです。彼がどんな指示をしていたのかは今ではすっかり忘れてしまいましたが、月並みだった音楽が神々しいまでの厳かさに満ちていく様子は奇跡としか思えませんでした。

その瞬間に、はじめてバーンスタインの凄さが少しは理解できたような気がしました。
85年にイスラエル・フィルと来日して演奏したマーラーの9番を聞いてもバーンスタインの何たるが分からなかったのに、こんな貧弱テレビの音声を通して気づくとは何たる愚か者なのでしょうか、私は。

しかし、このテレビを通して聞かせてもらった神々しさは最晩年のウィーンフィルとの全集でも、この若い時代のニューヨークフィルとの全集でも聞くことができません。バーンスタインという人は、基本的にはライブでこそ真価が発揮される人のようです。

この二つの録音を聞いて感じることは、どうして彼の音楽はこんなに荒っぽいんだろうと言う思いです。そして、この荒っぽさは特にシューマンの交響曲では顕著なのです。それは、世評の高いウィーンフィルとの録音でも同様で、どうすればウィーンフィルからこんなに荒っぽい音が出せるんだろうと考え込んだものでした。
事情は若い時代の全集でも同じで、たとえば威勢良く始まる第3番のラインの冒頭などは、思わず「ゲゲゲッ!!」と仰け反ってしまうはずです。弦楽器の響きが全部ごっちゃになって飛び出してくるのですから、そりゃぁ誰だって驚きます。
ただ、聞くところによるとスコアの方は1stヴァイオリンも2ndヴァイオリンも「f」、さらにはヴィオラも「f」と書いてあるらしいので、これが正しいといえば正しいのかもしれません。

確かに、シューマンのオーケストレーションを真っ正直に実行すれば変なことになるのが落ちですから、普通の指揮者ならばバランスを取ります。ラインの冒頭ならば主旋律の1stヴァイオリンは前面に出して、2ndヴァイオリンやヴィオラは控えめに鳴らすというのが「常識」というものです。
しかし、バーンスタインはこの荒々しい響きが好きだったんだろうなと思うのです。書いてあるとおりに真っ正直に、そして力の限りにオケを鳴らしています。

手元にスコアはないので確認はできませんが(さすがに、シューマンの交響曲までは手が回っていない)、おそらく詳細にたどればきわめてナチュラルに鳴らしているんだろうなと思うのです。そう考えれば、晩年のウィーンフィルとの録音の方が変にバランスを取ろうとしつつも響きが混濁しているので、結果としてはあまり好きになれません。
おそらく、バーンスタインにとって、シューマンというのはこういう荒々しい音楽として響いているんだろうなと思うのです。

バーンスタインに関してはその名もズバリ「Leonard Bernstein」というサイトがあって、演奏会の記録からディスコグラフィまで詳細なデータが整理されています。
そのサイトの情報によると、60年9月~10月に集中的に彼はシューマンの交響曲を取り上げています。


  1. 9月29日&30日:SCHUMANN Symphony No.4

  2. 10月6日~9日:SCHUMANN Symphony No.2

  3. 10月13日&14日,16日:SCHUMAN Symphony No.3

  4. 10月27日~30日:SCHUMANN Symphony No.1



そして、これと並行して録音も行っています。
つまりは、このニューヨークフィルとの全集はわずか一ヶ月ほどの間に完成されているのです。その録音の仕方はほとんど一発録りだったような気がします。バックグラウンドの雑音からもその雰囲気が伺えます。

集中的に彼の若い時代の録音を聞いてみて、どうやら60年頃までの録音に関しては、自分の信じた音楽を躊躇いもなく形にしている雰囲気があります。そして、そう言う「潔さ」みたいなものは62年にはいるとはっきりと後退していきます。そこでは、明らかにいろんな責任を背負い込んで好き勝手には振る舞えないんだということに気づいてきた「悲しみ」みたいなものが、そのすっきりとした造形の背後から感じ取れたりします。

そう言う意味では、この一気呵成に完成されたシューマンの交響曲全集こそは、若きバーンスタインの自画像と言っていいのかもしれません。
もちろん、この荒っぽさがどうしても好きになれない人がいても何の不思議もありません。こんなことを言っている私だって、ファーストチョイスはやはりセル&クリーブランド管ですから・・・。

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