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シベリウス:交響詩「フィンランディア」 作品26

マルコム・サージェント指揮 ウィーンフィル 1961年11月16日~18日録音

Sibelius:Finlandia - Symphonic Poem


国民的作曲家としての地位を確固たるものにした作品

「フィンランディア」として知られているこの作品はフィンランドにとっては「国歌」みたいな存在です。こういう存在は他の国にもあって、たとえばイタリアでは宴が盛り上がるとナブッコの「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って」を歌う場面をよく見受けます。オーストリアではなんと言っても「美しく青きドナウ」です。
ただし、北欧のオケが来日して主催者側からこの曲を依頼されると流石にうんざりすることも事実のようです。

とはいえ、この作品はその分かりやすさもあってシベリウスの数ある作品の中では最も有名な一曲であることは間違いありません。
冒頭の重々しい楽想は明らかにロシアの圧政を暗示していますし、それが中間部の金管楽器の雄叫びで打ち破られるとフィンランドの美しさをたたえるかのように叙情的な旋律があらわれます。この美しいメロディは卒業式の入場曲なんかにも使われていました。そして、その美しいメロディが終わりを告げると、音楽はコーダに向かって大きく盛り上がってフィンランドの解放が暗示されます。

この作品が持つ危険性を感じ取ったロシアは一時演奏禁止にするのですが、それもフィンランド人の反発をまねいてすぐに演奏は禁止は解除されます。そして、この音楽がフィンランドの独立に向けた動きに大きなはずみを与えることになったわけです。そして、シベリウスにとっても、この作品26の交響詩によって「国民的作曲家」としての地位を確固たるものにすることができたわけです。



思い出の一枚

クラシック音楽などというものを聞き始めた頃はLPレコードが全盛の時代でした。新譜が2800円、再発盤でも2000円くらいはしましたので、一枚のレコードを買うのにもずいぶんと思案したものでした。
そんなときに、一枚1300円で売られていたEMIのニューセラフィムシリーズは貴重な存在でした。セラフィムシリーズは元々は一枚2000円で売られていたのですが、その後緑色の実にチープなジャケットに統一されてニューセラフィムシリーズとなって再発されたときには1300円にプライスダウンされました。
さらに、「NEW SERAPHIM BEST150」と言う形で新しい録音も追加されて廉価盤LPの代名詞的存在になりました。

ここで紹介しているサージェントのシベリウスも、そんなニューセラフィムシリーズに収録された一枚であり、個人的な思い出を語れば、自分の小遣いで購入した2番目のレコードでした。(ちなみに、一番最初に買ったのはカラヤンの悲愴でした。^^;)
当時高校の同じクラスにクラシック音楽に入れ込んでいる変な奴がいて、カセットデッキを持ち込んでは「これを聴け!」と押しつけるのでみんなから恐れられていたのですが(^^;、何故か私とは波長があったので、その「これを聴け!」という音楽を結構面白く聴いていました。
その友人が「これを聴け!」と押しつけていたのがシベリウスでした。そして、彼はいかにシベリウスという作曲家が偉大な存在であるかを熱っぽく語っていました。

ですから、なけなしの小遣いをはたいてカラヤンの悲愴を買った次に選んだのがシベリウスだったわけです。
ただし、彼が「聴け!」というシベリウスの音楽はいまいちよく分かんないので、できれば一番安いのにしようと言うことで選んだのがニューセラフィムシリーズのサージェント盤だったわけです。

しかし、買い込んできて自宅でゆっくりと聞いてみると、フィンランディアやカレリア組曲は実に気に入りました。しかし、トゥオネラの白鳥は何とも間延びした音楽に思えましたし、交響詩の「エン・サガ(伝説)」に関しては最後まで訳が分かりませんでした。
つまりは表面は気に入ったのですが、裏面は気に入らず、クラシック音楽にもA面とB面があるのか?などと思ったものです。

そんなわけで、今回久しぶりにこの録音を聞き直してみたのですが、実に癖のないおおらかな演奏で、クラシック音楽を聴き始めたばかりのものにとっては結構いい選択だったんだなと思いました。

一般的にウィーンフィルの濃厚で官能的な響きはシベリウスのようなヒンヤリ系の音楽とは相性が悪いとしたものです。
ウィーンフィルによるシベリウスと言って思い浮かぶのは60年代のマゼール盤、さらに最晩年のバーンスタインによる録音が有名です。指揮者のアプローチにも問題はあるのかもしれませんが、どちらもシベリウスの美質よりは指揮者の我、オケの我が前に出すぎているようで、あまり上手くいっているようには思えません。
それと比べれば、このサージェント盤は指揮者が「何もしていない」ようなので、結果としてはそれがウィーンフィルのよく言えば「美質」、悪く言えば「灰汁」を弱めることになり、オケとシベリウスの相性の悪さを中和しているように聞こえます。
ただし、評価の視点をどこに持ってくるかで見方は大きく変わることは事実です。この「何もしていない」ような風情を好意的にとらえる人は「大らかでシベリウスらしい幻想的な雰囲気にあふれた演奏」と評価するでしょう。しかし、そのようなアプローチを否定的にとらえる人は「雑な演奏」と切って捨てることでしょう。

私個人の率直な感想としては、イギリスではそれなりにブイブイ言わせていたサージェントも相手がウィーンフィルになると少しばかり遠慮したのかな?と思わないではありません。
しかし、BBC交響楽団を使って録音した交響曲の1番や5番、そして交響詩「ポヒョラの娘」を聴いても結構大らか(雑?)なので、これはサージェントの持ち味なのかもしれません。却って、相手がイギリスのオケだと結構恣意的な表情付けやテンポの揺れなども散見されるので、ウィーンフィルを相手にした「何もしていない」演奏の方が好ましく思えます。

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