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ハイドン:交響曲第80番 ニ短調

シェルヘン指揮:ウィーン交響楽団 1951年録音



Haydn:交響曲第80番 ニ短調 「第1楽章」

Haydn:交響曲第80番 ニ短調 「第2楽章」

Haydn:交響曲第80番 ニ短調 「第3楽章」

Haydn:交響曲第80番 ニ短調 「第4楽章」


狭間の作品

ハイドンの交響曲にはおかしなニックネームがついているものがたくさんあります。
しかし、不幸にしてそう言う「恩恵」によくしていない交響曲の方が多数派です。このニ短調の80番のシンフォニーもそう言う不幸な交響曲の一つです。

この交響曲は、イギリス交響曲と呼ばれる一群(77番~79番)とパリ交響曲と呼ばれる一群(82番~88番)の狭間に位置します。
イギリス交響曲という呼び方はそれほど一般的なものではありませんが、ザロモン演奏会以前にイギリスでの演奏を目的に作曲された一連の交響曲のことです。パリ交響曲はパリのオーケストラからの依頼で作曲された交響曲のことで、次のザロモンセットへの飛躍へと導く重要な位置を占めています。

そんなわけで、その狭間にある80番の交響曲はほとんど見捨てられたような存在です。
短調の交響曲と言うことで、何かが起こるような雰囲気はあるのですが、そして、曲の冒頭はそう言う期待に応えるかのように始まるのですが、その後が実にいい加減なものなので、それも仕方がないかなともってしまいます。(^^;
ハイドンの交響曲全集を作ろうとするときに「仕方なし」に録音されることはあっても、これだけを単発で録音すると言うことは考えにくい作品です。

それだけに、そう言う考えにくいことをしたシェルヘンという指揮者は。やはりどこか「変わって」いたんだなと思ってしまいます。


世界最初のまとまったハイドン録音

このシェルヘンによる録音は、ザロモンセットの全12曲をまとめたものとしては世界最初のものでした。さらに、今でもあまり演奏される機会の少ない初期や中期の作品もこの時期にまとめて録音しています。




シェルヘンといえば「現代音楽の擁護者」というイメージがあるのですが、考えてみればこの当時の聴衆にとってハイドンのシンフォニーなどいうものは、あまり知られてもいなければ理解されてもいないという点では現代音楽と似たようなものだったといえます。ですから、これら一連の録音は彼の「宗旨変わり」と言うよりは、基本的には同じポリシーの延長線上で取り組まれたものだと思われます。
その証拠に、これら一連の演奏はシェルヘンらしい非常に知的で明晰なものに仕上がっています。(彼の一部の録音だけをもって「爆裂指揮者」というレッテルを貼る向きもあるようですがそれは根本的に間違っています。)そして、その結果として、ハイドンがこれらの作品に仕掛けた数々のアイデアやサービスが非常に分かりやすく提示された演奏になっています。

実は、この一連の録音が手元に届いたときに「とりあえず一つだけでも聞いておくか!」という軽い気持ちでプレーヤーにセットしました。聞いてみると、確かに、ビーチャムのウィットもワルターのロマンも、さらにはクレンペラーの力業もありません。しかし、ハイドンがこれらの作品に仕掛けた様々な「技」が手に取るように分かります。
ですから、「とりあえず一曲」という軽い気持ちで聞き始めたはずが、気がつけば一気に12曲を聞き通していました。おかげで、晩年のハイドンのようなすでに十分すぎるほどに成熟した作曲家でさえ、かくも偉大な飛躍があるものかと感嘆させられると同時に、その飛躍の軌跡を改めて確認することもできました。

ハイドンといえばその生涯に100曲以上も交響曲を書いたわけですから、その大部分は同工異曲の焼き直しみたいなものだろうと思ったら大間違いです。とりわけ、この最後の12曲はどれ一つとして同じ仕掛けのものは存在しないと言い切れるほどにバラエティに富んでいます。ですから、この12の作品を一気に聞き通すというのは、退屈な修行どころか実にスリリングなまでに楽しい時間でした。

しかし、残念ながら今となってはこのシェルヘンによる録音は忘れ去られつつあります。それは、知的で明晰な造形ということなら、セルによるとんでもない演奏を私たちが持ってしまったからであり、それと比べることのできる私たちにとっては不満が残ることを否定できないからです。
しかし、セルは自分の気に入った作品しか録音を残していません。ですから、ザロモンセットという古典派音楽における重要な山脈を概観するには、未だにこのシェルヘンによる演奏は重要な意味を持っていると言えます。ですから、ザロモンセットの中から何か一つお気に入りの作品を聞きたいというときは、自分の好みによっていろいろな指揮者による演奏をチョイスすればいいでしょうが、その全体を自分の耳で実際に確かめてみたいというときには未だに貴重な録音だと言い切れます。

<追記>

シェルヘンは50年代の初頭にハイドンの交響曲をまとめて録音しています。残念ながら、今となってはほとんど忘れ去られた録音となっているのですが、最晩年のザロモンセットでさえ演奏される機会は多くなのですから、それ以前の交響曲となると今でも貴重な録音だと言えます。
ですから、一連の録音がパブリックドメインになるとすぐに紹介したのですが、初期・中期の作品はリリース年が遅くて後回しになっていました。そして、一番有名どころの44番「悲しみ」や45番「告別」をアップしたときに本来は紹介しておくべきだった録音が何かの手違いで後回しになってしまい、そのまま忘れてしまっていたことを最近になって気づきました。正直なところ「今さら」という気もしたのですが、それでもシェルヘンの業績としてはキチンと追加しておいた方がいいだろうと言うことで、遅ればせながら追加することにしました。
落ち穂拾いみたいなものです。

この演奏を評価してください。

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