クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|トスカニーニ(Arturo Toscanini)|ヴェルディ:椿姫(ラ・トラヴィアータ)

ヴェルディ:椿姫(ラ・トラヴィアータ)

トスカニーニ指揮 NBC交響楽団 1946年12月1日&8日 NBC 8Hスタジオでの放送録音(ライブ中継)



Verdi:Aida 前奏曲

Verdi:椿姫「第1幕」

Verdi:椿姫「第2幕 第1場」

Verdi:椿姫「第2幕 第2番」

Verdi:椿姫「第3幕」


道に迷える女 << La Traviata

 当時のパリでその名をはせた「マリ・デュプレ」という女性をモデルとして書かれたデュマの「椿姫」は、ヴェルディの創作意欲をかき立てました。その証拠に、ヴェルディはこの作品をわずか一ヶ月半で仕上げてしまったのです。その初演を前に彼は次のように書き残しています。
 「これは私たちの同時代の出来事から素材をとった、いわば現代劇である。多くの馬鹿げた因習によってさけて通ってきたものに、私は今真正面から取り組まざるを得ない。
 この題材は多くの作曲家ならさけてしまうだろう。しかし私は、むしろ喜んでこれらの因習と戦い、主題に心はずませてこの作品を創る。」

 椿姫といえば全編美しいメロディがあふれたオペラとしてヴェルディの代表作ともなっています。しかし、その美しいメロディにのみ耳を奪われて、馬鹿げた男女の恋物語として受け取るならそれは大きな間違いです。
 ヴェルディのオペラは常に毒がつきまとっています。ここでも、「馬鹿げた因習への戦い」とヴェルディ自身が述べているように、ヴィオレッタとアルフレッドの恋を通して、世間体にのみあくせくするジェロモンや、快楽に身をゆだねることのみを良しとする上流階級の浅はかさが浮かび上がってきます。このドラマ性にこそ、このオペラの真価があります。(こんなことを書くと、ユング君というのは骨の髄まで音楽を文学的に受容するやつだと思われるな・・・^^;)

 その二つの対比がヴィオレッタの死という悲劇的な結末で幕を閉じるとき、涙だけでなく、なにがしかの怒りのようなものを感じてしまいます。
 そういえば、ジュリア・ロバーツの出世作となった「プリティ・ウーマン」で椿姫を見に行く場面がありました。終演後にドラマの結末があまりに理不尽だと言ってジュリア・ロバーツが怒りをあらわにするのですが、よくできたシーンだ思いました。
 ヴェルディという人は、それまでの作曲家が絶対に取り上げなかったようなマイノリティな人々をオペラに登場させました。このオペラでも主人公は「売春婦」です。
 そして、そういう人々に向けるヴェルディの眼差しはいつも優しさにあふれています。
 この、人間に向ける眼差しの優しさこそがヴェルディの一番すばらしいところだといえます。


トスカニーニの「椿姫」、でもあっちこっちでバッサリとカットを施しています。

 原因は、放送時間の枠(2時間)におさめるためだったそうです。
 トスカニーニといえば「原点尊重」の教祖ですから、これはちょっと驚きです。それ以外にも細かいオーケストレーションなんかも手を加えているようです。
 そして、これが一番肝心なことなのですが、そういう改変を行っているからこの演奏は「つまらない」のかと言えばとんでもありません。
 これほどドラマチックな「椿姫」は他には思い当たらないほどすばらしい演奏となっています。下手をすると、ソプラノのアリア集みたいになってしまうオペラなのですが、ここでは全編にわたって劇的な緊張感が支配しています。
 人によってはそのような緊張感を鬱陶しく思うかもしれませんが、こうでなければヴェルディのオペラとはいえないのです。

 それから、ついでながら、この録音でとりわけすばらしいと思ったのは、第3幕の「過ぎ去りし日々」です。これを聞けるだけで十分に満足してしまったユング君です。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



187 Rating: 5.8/10 (329 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント




【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-11-08]

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第14番「月光」 嬰ハ短調 Op.27-2(Beethoven:Piano Sonata No.14 in C-sharp minor, Op.27-2 "Moonlight")
(P)ハンス・リヒター=ハーザー 1955年11月録音(Hans Richter-Haaser:Recorded on November, 1955)

[2025-11-06]

ヴェルディ:弦楽四重奏曲(Verdi:String Quartet in E Minor)
イタリア四重奏団 1950年11月24日~29日録音(Quartetto Italiano:Recorded on November 24-29, 1950)

[2025-11-04]

フォーレ:夜想曲第5番 変ロ長調 作品37(Faure:Nocturne No.5 in B-flat major, Op.37)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)

[2025-11-02]

バックス:交響詩「ファンドの園」(Bax:The Garden of Fand)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1956年6月20日録音(Sir John Barbirolli:Halle Orchestra Recorded on June 20, 1956)

[2025-10-31]

ベートーベン:ピアノ三重奏曲第7番 変ロ長調 「大公」 Op.97(Beethoven:Piano Trio No.7, Op.97 in B-flat major "Archduke")
(P)エミール・ギレリス (Vn)レオニード・コーガン (Cello)ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ 1956年録音(Emil Gilels:(Cello)Mstislav Rostropovich (Violine)Leonid Kogan Recorded on 1956)

[2025-10-29]

J.S.バッハ:前奏曲とフーガ イ長調 BWV.536(J.S.Bach:Prelude and Fugue in A major, BWV 536)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1961年12月10日~12日録音(Marie-Claire Alain:Recorded December 5-8, 1961)

[2025-10-27]

ベートーベン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」(Beethoven:Symphony No.6 in F major, Op.68 "Pastoral")
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年10月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on October, 1961)

[2025-10-25]

アーサー・サリヴァン:喜歌劇「軍艦ピナフォア」序曲(Sullivan:Overture from H.M.S Pinafore)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン新交響楽団 1961年録音(Rene Leibowitz:New Symphony Orchestra Of London Recorded 1961)

[2025-10-22]

バターワース:管弦楽のための狂詩曲「シュロップシャーの若者」(Butterworth:A Shropshire Lad)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1956年6月20日録音(Sir John Barbirolli:Halle Orchestra Recorded on June 20, 1956)

[2025-10-20]

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」 ハ短調 Op.13()Beethoven:Piano Sonata No.8 in C minor, Op.13 "Pathetique"
(P)ハンス・リヒター=ハーザー 1955年11月録音(Hans Richter-Haaser:Recorded on November, 1955)