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ベートーベン:交響曲第9番 ニ短調 「合唱付き」 作品125

アンセルメ指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 (S)ジョーン・サザーランド (A)ノーマ・プロクター (T)アントン・デルモータ (Bs)アーノルド・ヴァン・ミル ブラッシュ合唱団他 1959年4月録音



Beethoven:交響曲第9番 ニ短調 「合唱付き」 作品125 「第1楽章」

Beethoven:交響曲第9番 ニ短調 「合唱付き」 作品125 「第2楽章」

Beethoven:交響曲第9番 ニ短調 「合唱付き」 作品125 「第3楽章」

Beethoven:交響曲第9番 ニ短調 「合唱付き」 作品125 「第4楽章」


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何かと問題の多い作品です。

ベートーベンの第9と言えば、世間的にはベートーベンの最高傑作とされ、同時にクラシック音楽の最高峰と目されています。そのために、日頃はあまりクラシック音楽には興味のないような方でも、年の暮れになると合唱団に参加している友人から誘われたりして、コンサートなどに出かけたりします。

しかし、その実態はベートーベンの最高傑作からはほど遠い作品であるどころか、9曲ある交響曲の中でも一番問題の多い作品なのです。さらに悪いことに、その問題点はこの作品の「命」とも言うべき第4楽章に集中しています。
そして、その様な問題を生み出して原因は、この作品の創作過程にあります。

この第9番の交響曲はイギリスのフィルハーモニア協会からの依頼を受けて創作されました。しかし、作品の構想はそれよりも前から暖められていたことが残されたスケッチ帳などから明らかになっています。
当初、ベートーベンは二つの交響曲を予定していました。
一つは、純器楽による今までの延長線上に位置する作品であり、もう一つは合唱を加えるというまったく斬新なアイデアに基づく作品でした。後者はベート?ベンの中では「ドイツ交響曲」と命名されており、シラーの「歓喜によせる」に基づいたドイツの民族意識を高揚させるような作品として計画されていました。
ところが、何があったのかは不明ですが、ベートーベンはまったく異なる構想のもとにスケッチをすすめていた二つの作品を、何故か突然に、一つの作品としてドッキングさせてフィルハーモニア協会に提出したのです。
そして出来上がった作品が「第九」です

交響曲のような作品形式においては、論理的な一貫性は必要不可欠の要素であり、異質なものを接ぎ木のようにくっつけたのでは座り心地の悪さが生まれるのは当然です。もちろん、そんなことはベートーベン自身が百も承知のことなのですが、何故かその様な座り心地の悪さを無視してでも、強引に一つの作品にしてしまったのです。

年末の第九のコンサートに行くと、友人に誘われてきたような人たちは音楽は始めると眠り込んでしまう光景をよく目にします。そして、いよいよ本番の(?)第4楽章が始まるとムクリと起きあがってきます。
でも、それは決して不自然なことではないのかもしれません。
ある意味で接ぎ木のようなこの作品においては、前半の三楽章を眠り込んでいたとしても、最終楽章を鑑賞するにはそれほどの不自由さも不自然さもないからです。
極端な話前半の三楽章はカットして、一種のカンタータのように独立した作品として第四楽章だけ演奏してもそれほどの不自然さは感じません。そして、「逆もまた真」であって、第3楽章まで演奏してコンサートを終了したとしても、?聴衆からは大ブーイングでしょうが・・・?これもまた、音楽的にはそれほど不自然さを感じません。

ですから、一時ユング君はこのようなコンサートを想像したことがあります。
それは、第3楽章と第4楽章の間に休憩を入れるのです。

前半に興味のない人は、それまではロビーでゆっくりとくつろいでから休憩時間に入場すればいいし、合唱を聴きたくない人は家路を急げばいいし、とにかくベートーベンに敬意を表して全曲を聴こうという人は通して聞けばいいと言うわけです。
これが決して暴論とは言いきれないところに(言い切れるという人もいるでしょうが・・・^^;)、この作品の持つ問題点が浮き彫りになっています。


フランス的な実験精神にあふれた演奏

アンセルメ&スイス・ロマンド管弦楽団によるベートーベンの交響曲全集というのは実に微妙な存在です。調べてみると、録音は1958年から1963年にかけて録音されていますが、集中的に録音されたのは58年から60年にかけてです。そして、最後に落ち穂拾いのように1番と8番が63年に録音されて全集として完成させています。

ベートーベン:交響曲第1番 ハ長調 作品21
アンセルメス指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1963年11月録音

ベートーベン:交響曲第2番 ニ長調 作品36
アンセルメス指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1960年1月録音

ベートーベン:交響曲第3番 変ホ長調 「エロイカ(英雄)」 作品55
アンセルメス指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1960年4月録音

ベートーベン:交響曲第4番 変ロ長調 作品60
アンセルメス指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1958年4月録音

ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 作品67
アンセルメス指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1958年5月録音

ベートーベン:交響曲第6番 ヘ長調「田園」 作品68
アンセルメス指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1959年10月録音

ベートーベン:交響曲第7番イ長調 作品92
アンセルメス指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1960年1月録音

ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93
アンセルメス指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1963年11月

ベートーベン:交響曲第9番 ニ短調 「合唱付き」 作品125
アンセルメス指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1959年4月

ベートーベンの交響曲の録音史を振り返ってみれば、この時代は後世に名を残すような優れた「お仕事」が目白押しです。
クレンペラー&フィルハーモニア管(1957年?1961年録音)、シューリヒト&パリ音楽院管弦楽団(1957年?1958年録音)、クリュイタンス&ベルリンフィル(1957?1960年録音)、コンヴィチュニー&ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(1959?1961年録音)等々です。さらには60年代にはいるとカラヤンがベルリンフィルを使って2度目の全集の録音を始めますし、海の向こうのアメリカではセル&クリーブランドの録音も始まっています。1961年にはレイボヴィッツ&ロイヤル・フィルによる「新しすぎる」録音も登場しています。
そう言う猛者の中にこの録音が放り込まれてしまうと、例えばクリップス&ロンドン交響楽団(1960年録音)の全集と同じように、実に影の薄い存在となってしまっています。さらに言えば、この録音はスイス・ロマンド感の特徴(弱点?)である薄い弦の響きの上にへんてこな管楽器の音が飛び跳ねていて、「ト盤(とんでもない演奏が刻み込まれた素敵なCDのこと)」の代表みたいな言い方がされたりもします。

しかし、実際に聞いてみると、一部の評論家が口を極めて馬鹿にするほどには酷い演奏だとは思えません。
例えば、第6番「田園」などは弦楽器の響きの薄さが決してマイナスになっていません。それどころか、いわゆるドイツ的な重厚な響きからは感じ取れなかったさわやかさに満ちあふれた「田園」になってます。さらさらとした弦楽器の響きは木の間隠れにもれてくる日の光のようですし、その日の光の中で管楽器自由に飛び跳ねる光景は聞くものの心をときほぐしてくれます。

そして、彼がやりたかったベートーベンの姿が一番はっきりと聞き取れるのは3番「エロイカ」の第1楽章でしょう。
このエロイカの第1楽章といえば、南の極にフルトヴェングラー、北の極にトスカニーニがいます。アンセルメは明らかにトスカニーニ側の人で、「エロイカといえどもただのアレグロ・コンブリオにすぎない」と言ったトスカニーニの言葉を彼なりの手法で実践しています。
ここには、フルトヴェングラー的な思い入れは一切ありません。かと言ってトスカニーニの力業もなく、明らかに後年のピリオド演奏につながっていくようなさらに突き抜けた即物的解釈が貫かれています。その意味では、レイボヴィッツ&ロイヤル・フィルの演奏と目指すところは同じだったのかもしれません。

しかし、アンセルメはレイホヴィッツのように聞き手のことは無視して自分のやりたいことを押し通すほどには無慈悲な指揮者ではなかったようです。レイホヴィッツは基本的に作曲家だったのに対して、アンセルメは最後の最後まで劇場の人でした。どうしても、最後のところで聞き手へのサービス精神が出てしまっています。
その一つの典型が9番の演奏だったのかもしれません。

聞き始めると、何の思い入れもない第1楽章の出だしに驚かされます。まさにザッハリヒカイトの極みです。しかし、それが最後のところにくると結構音楽が熱くなってきたりします。
第2楽章でティンパニーが何とも言えない無機的な響きで腰が砕けそうになっても、続く第3楽章は実に美しいのです。
この「Adagio molto e cantabile」はちょっと他にはないような美しさに満ちています。カンタービレと指示されているのにおかしな言い方なのですが、リズム感がとてもいいのです。フルトヴェングラーのような停止一歩手前の音楽とは全く異なって音楽は気持ちよく流れていくのです。ただし、テンポを速めにしたからといってせわしなくなったり硬直したりもしません。その気持ちのよい流れは「リズム感がいい」としか言いようがありません。
そして、最終楽章も世間が言うほどにはヘンテコだとは思えません。即物に徹しながらも、結構あちこちでエンターテイメントな面も顔を見せる演奏です。

そして、一番驚かされるのが7番の最終楽章の「突撃」です。
計算上は「これでいい」と思ったテンポが現実にはとんでもないことになってしまったのでしょう。しかし、オケはヒイヒイ言ってまさに崩壊寸前(崩壊しているという説もありますが・・・^^;)なのですが、「まあ、これはこれで客は喜ぶか!!」みたいな本能がでて、そのとんでもない状態をさらにヒートアップして最後まで突っ走っていきます。

正統な(何を持って正統というのか・・・という当然すぎる突っ込みは取りあえず封印してくださいね)ベートーベン像とはかなりかけ離れた演奏ではありますが、フランス的な実験精神にあふれた面白さにはあふれていると思います。
一聴の価値有りです。

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