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エルネスト・アンセルメ(Ernest Ansermet) |ベートーベン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68「田園」
ベートーベン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68「田園」
アンセルメ指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1959年10月録音
Beethoven:交響曲第6番 ヘ長調「田園」 作品68 「第1楽章」
Beethoven:交響曲第6番 ヘ長調「田園」 作品68 「第2楽章」
Beethoven:交響曲第6番 ヘ長調「田園」 作品68 「第3楽章」
Beethoven:交響曲第6番 ヘ長調「田園」 作品68 「第4楽章」
Beethoven:交響曲第6番 ヘ長調「田園」 作品68 「第5楽章」
標題付きの交響曲
よく知られているように、この作品にはベートーベン自身による標題がつけられています。
第1楽章:「田園に到着したときの朗らかな感情の目覚め」
第2楽章:「小川のほとりの情景」
第3楽章:「農民の楽しい集い」
第4楽章:「雷雨、雨」
第5楽章:「牧人の歌、嵐のあとの喜ばしい感謝の感情」
また、第3楽章以降は切れ目なしに演奏されるのも今までない趣向です。
これらの特徴は、このあとのロマン派の時代に引き継がれ大きな影響を与えることになります。
しかし、世間にはベートーベンの音楽をこのような標題で理解するのが我慢できない人が多くて、「そのような標題にとらわれることなく純粋に絶対的な音楽として理解するべきだ!」と宣っています。
このような人は何の論証も抜きに標題音楽は絶対音楽に劣る存在と思っているらしくて、偉大にして神聖なるベートーベンの音楽がレベルの低い「標題音楽」として理解されることが我慢できないようです。ご苦労さんな事です。
しかし、そういう頭でっかちな聴き方をしない普通の聞き手なら、ベートーベンが与えた標題が音楽の雰囲気を実にうまく表現していることに気づくはずです。
前作の5番で人間の内面的世界の劇的な葛藤を描いたベートーベンは、自然という外的世界を描いても一流であったと言うことです。同時期に全く正反対と思えるような作品を創作したのがベートーベンの特長であることはよく知られていますが、ここでもその特徴が発揮されたと言うことでしょう。
またあまり知られていないことですが、残されたスケッチから最終楽章に合唱を導入しようとしたことが指摘されています。
もしそれが実現していたならば、第五の「運命」との対比はよりはっきりした物になったでしょうし、年末がくれば第九ばかり聞かされると言う「苦行(^^;」を味わうこともなかったでしょう。
ちょっと残念なことです。
フランス的な実験精神にあふれた演奏
アンセルメ&スイス・ロマンド管弦楽団によるベートーベンの交響曲全集というのは実に微妙な存在です。調べてみると、録音は1958年から1963年にかけて録音されていますが、集中的に録音されたのは58年から60年にかけてです。そして、最後に落ち穂拾いのように1番と8番が63年に録音されて全集として完成させています。
ベートーベン:交響曲第1番 ハ長調 作品21
アンセルメス指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1963年11月録音
ベートーベン:交響曲第2番 ニ長調 作品36
アンセルメス指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1960年1月録音
ベートーベン:交響曲第3番 変ホ長調 「エロイカ(英雄)」 作品55
アンセルメス指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1960年4月録音
ベートーベン:交響曲第4番 変ロ長調 作品60
アンセルメス指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1958年4月録音
ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 作品67
アンセルメス指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1958年5月録音
ベートーベン:交響曲第6番 ヘ長調「田園」 作品68
アンセルメス指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1959年10月録音
ベートーベン:交響曲第7番イ長調 作品92
アンセルメス指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1960年1月録音
ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93
アンセルメス指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1963年11月
ベートーベン:交響曲第9番 ニ短調 「合唱付き」 作品125
アンセルメス指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1959年4月
ベートーベンの交響曲の録音史を振り返ってみれば、この時代は後世に名を残すような優れた「お仕事」が目白押しです。
クレンペラー&フィルハーモニア管(1957年?1961年録音)、シューリヒト&パリ音楽院管弦楽団(1957年?1958年録音)、クリュイタンス&ベルリンフィル(1957?1960年録音)、コンヴィチュニー&ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(1959?1961年録音)等々です。さらには60年代にはいるとカラヤンがベルリンフィルを使って2度目の全集の録音を始めますし、海の向こうのアメリカではセル&クリーブランドの録音も始まっています。1961年にはレイボヴィッツ&ロイヤル・フィルによる「新しすぎる」録音も登場しています。
そう言う猛者の中にこの録音が放り込まれてしまうと、例えばクリップス&ロンドン交響楽団(1960年録音)の全集と同じように、実に影の薄い存在となってしまっています。さらに言えば、この録音はスイス・ロマンド感の特徴(弱点?)である薄い弦の響きの上にへんてこな管楽器の音が飛び跳ねていて、「ト盤(とんでもない演奏が刻み込まれた素敵なCDのこと)」の代表みたいな言い方がされたりもします。
しかし、実際に聞いてみると、一部の評論家が口を極めて馬鹿にするほどには酷い演奏だとは思えません。
例えば、第6番「田園」などは弦楽器の響きの薄さが決してマイナスになっていません。それどころか、いわゆるドイツ的な重厚な響きからは感じ取れなかったさわやかさに満ちあふれた「田園」になってます。さらさらとした弦楽器の響きは木の間隠れにもれてくる日の光のようですし、その日の光の中で管楽器自由に飛び跳ねる光景は聞くものの心をときほぐしてくれます。
そして、彼がやりたかったベートーベンの姿が一番はっきりと聞き取れるのは3番「エロイカ」の第1楽章でしょう。
このエロイカの第1楽章といえば、南の極にフルトヴェングラー、北の極にトスカニーニがいます。アンセルメは明らかにトスカニーニ側の人で、「エロイカといえどもただのアレグロ・コンブリオにすぎない」と言ったトスカニーニの言葉を彼なりの手法で実践しています。
ここには、フルトヴェングラー的な思い入れは一切ありません。かと言ってトスカニーニの力業もなく、明らかに後年のピリオド演奏につながっていくようなさらに突き抜けた即物的解釈が貫かれています。その意味では、レイボヴィッツ&ロイヤル・フィルの演奏と目指すところは同じだったのかもしれません。
しかし、アンセルメはレイホヴィッツのように聞き手のことは無視して自分のやりたいことを押し通すほどには無慈悲な指揮者ではなかったようです。レイホヴィッツは基本的に作曲家だったのに対して、アンセルメは最後の最後まで劇場の人でした。どうしても、最後のところで聞き手へのサービス精神が出てしまっています。
その一つの典型が9番の演奏だったのかもしれません。
聞き始めると、何の思い入れもない第1楽章の出だしに驚かされます。まさにザッハリヒカイトの極みです。しかし、それが最後のところにくると結構音楽が熱くなってきたりします。
第2楽章でティンパニーが何とも言えない無機的な響きで腰が砕けそうになっても、続く第3楽章は実に美しいのです。
この「Adagio molto e cantabile」はちょっと他にはないような美しさに満ちています。カンタービレと指示されているのにおかしな言い方なのですが、リズム感がとてもいいのです。フルトヴェングラーのような停止一歩手前の音楽とは全く異なって音楽は気持ちよく流れていくのです。ただし、テンポを速めにしたからといってせわしなくなったり硬直したりもしません。その気持ちのよい流れは「リズム感がいい」としか言いようがありません。
そして、最終楽章も世間が言うほどにはヘンテコだとは思えません。即物に徹しながらも、結構あちこちでエンターテイメントな面も顔を見せる演奏です。
そして、一番驚かされるのが7番の最終楽章の「突撃」です。
計算上は「これでいい」と思ったテンポが現実にはとんでもないことになってしまったのでしょう。しかし、オケはヒイヒイ言ってまさに崩壊寸前(崩壊しているという説もありますが・・・^^;)なのですが、「まあ、これはこれで客は喜ぶか!!」みたいな本能がでて、そのとんでもない状態をさらにヒートアップして最後まで突っ走っていきます。
正統な(何を持って正統というのか・・・という当然すぎる突っ込みは取りあえず封印してくださいね)ベートーベン像とはかなりかけ離れた演奏ではありますが、フランス的な実験精神にあふれた面白さにはあふれていると思います。
一聴の価値有りです。
この演奏を評価してください。
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よせられたコメント 2013-01-23:Joshua 待ちに待ったアンセルメですね。スイス人にしてフランスで教育を受け若くして数学の大学教授。悩んだ末、ワインガルトナー等に後押しされ、指揮者転向を決心。この人が、不思議に展覧会の絵や、春の祭典などロシアものをよく振っているのも不思議。そして、ベートーヴェン全集。レコ芸の評価は「微温的」などとしているが、福島恭夫だったかが評価しているのが、自分で聴いてみてうなづける。面白い!聞かせる 「 田園 」はワルターよりいいと思った。というより、ワルターはそれだけ聞いていたらいいのはいいが、世間で言うほどにはよく思わない。アンセルメのは、録音が鮮明なのもいいし、演奏自体が分かりやすくて、しかも納得のいくものだ。他の6曲ももちろん聴かせて頂き、同様の満足を得ました。ぜひ、1番、8番を追加していただきたいです。
ちなみに、昨年暮れには、鬼才マルケヴィッチのベートーヴェン全集が出ていましたね。似てるんじゃないかな。チャイコ悲愴が上手なのも、2者の共通点。暑苦しくないベートーヴェン全集は、YUNGさん、すでにクリュイタンスで紹介してくれましたねえ。
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