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ショパン:マズルカ Op.6

P:マガロフ 1956年5月~11月録音



Chopin:マズルカ Op.6 No.1

Chopin:マズルカ Op.6 No.2

Chopin:マズルカ Op.6 No.3

Chopin:マズルカ Op.6 No.4


ポーランドの代表的な民族舞曲

作品6の1:マズルカ 第1番 嬰ヘ短調
作品6の2:マズルカ 第2番 嬰ハ短調
作品6の3:マズルカ 第3番 ホ長調
作品6の4:マズルカ 第4番 変ホ短調

マズルカはポロネーズとならんで、ショパンが終生愛し続けたポーランドの民族舞曲です。ただし、ポロネーズが一般的に規模が大きくて劇的な性格を備えているのに対して、マズルカの方は規模がとても小さくて、そのほとんどが簡素な三部形式をとっています。

また、よく知られていることですが、マズルカと言ってもその性格や特徴は地域によって大きな差異があり、専門家の受け売りですが、基本的には「マズレック」「クヤヴィアック」「「オベレック」と呼ばれる3種類があるそうです。
そして、ショパンはそれらの形式を自由に取り入れて、例えば、マズレック風のリズムにクヤヴィアック風のメロディを重ねるなどして、自分なりに再構築をすることによって彼独特のマズルカという形式を作り上げていきました。

その意味では、ショパンのマズルカはポーランドの民族舞曲を母胎としながらも、時間を追うにつれてより一般的な性格を持っていったと言えます。
言葉をかえれば、土の香りを失う変わりにより洗練されていったと言うことです。
その分岐点はおそらくは中期の傑作と言われる作品番号で言えば33番の4曲あたりにあることに異存を唱える人は少ないでしょう。マズルカが本来持っていた粗野で鄙びた風情は姿を消して、明るさと軽さが前面にでてきます。ですから、よく「マズルカには華やかな技巧の世界は無い。」と言われますが、晩年のマズルカは和声的にも構成的にもかなりの工夫が凝らされています。
もちろん、どちらをとるにしてもショパンの音楽が素晴らしいことは言うまでもありません。


演奏家の自己主張を抑えて、曲自体に語らせる

ニキタ・マガロフを取り上げるのは初めてですから、少しばかりプロフィールを紹介しておきます。ただし、この手のことはウィキペディアでも見ればすぐに分かることですから、今さら余分な気もするのですが、そんな手間は省きたいという方もおられるでしょうから、簡単に紹介しておきます。

マガロフは、グルジア貴族の血を引く裕福な家庭に生まれました。マガロフというロシア風の名前は、彼らがロシア社会になじむためのものであって、本当の名前はグルジア風の「マガラシヴィリ」だったと言われています。1912年生まれのマガロフは7歳の時にロシア革命を経験し、家族はフィンランドへと亡命します。しかし、亡命と言っても「着の身着のまま」というような悲惨な逃避行ではなかったようで、亡命後も彼はアレクサンドル・ジロティやイシドール・フィリップという高名なピアニストに師事をしてその才能を伸ばしていきます。
依然としてマガロフ家は裕福であったようです。

さらに、彼はピアニストとしてよりも作曲家として成功することを目指し、パリにおいてラヴェルやプロコフィエフに学びます。そのため、ラヴェルから「傑出した、真に素晴らしいピアニストが誕生した」と賞賛されるほどの才能を示しながら、ソリストとしての活動を本格的に開始することはなかったようです。
そんなマガロフに転機を与えたのが、偉大なヴァイオリニストであったシゲティとの出会いでした。
シゲティはマガロフの才能に惚れ込んで、彼を自分の伴奏ピアニストとして抜擢し、その後7年間にわたって演奏活動をする事になります。

この経験は、音楽面において多くのものをマガロフに与えたことは言うまでもないことですが、さらに、シゲティの愛娘イレーネとの仲を深めることになり、その後生涯をともにする伴侶となったことは、彼の人生における最大の幸運の一つとなりました。

その後、彼はシゲティのもとを旅立って、ソリストとしての活動を本格的に開始するようになりますが、時代は戦争へと突き進んでいきます。ですから、ピアニストとしての本格的な活動を開始し、その名声が広まるのは戦後になってからです。それは、演奏家としては異例の遅いスタートですが、結果的には、様々な経験を積み重ねたのちの、まさに「満を持して」のスタートと言うことになりました。
その後の彼の活躍については、今さら云々する必要はないでしょう。

マガロフのピアノの特徴をひと言で言えば「演奏家の自己主張を抑えて、曲自体に語らせる」スタイルだと言えるでしょう。

おそらく、彼の最良の業績は1970年代の中葉に録音したショパンのソロ作品の全集でしょう。
ポリーニのエチュードは誰が聴いても凄いのですが、あまり何度も聞くと疲れてしまいます。しかし、マガロフのピアノは聞くものを優しくしてくれます。だからといって、決して緩い演奏だと言うわけではありません。
これを聴いていて、これとよく似たテイストの演奏があったなと思いをめぐらして気がついたのが、ディーター・ツェヒリンのシューベルトのピアノソナタです(・・・って、そんな録音、ほとんど誰も知らないですよね^^;・・・調べてみたら、現在は廃盤になっているようでHMVでは検索してもヒットしません)
あのシューベルトは本当に素敵で、今でも私はシューベルト聞きたくなるとツェヒリンの全集を引っ張り出してきます。本当に、驚くほどピアニストの自己主張を感じない演奏なのですが、その演奏は聞き進んでいくうちに、まるでシューベルトその人が演奏しているかのような錯覚に陥っていきます。
そして、それと同じようなことがマガロフのショパからも感じられるのです。
それがつまり、「演奏家の自己主張を抑えて、曲自体に語らせる」スタイルだと言うわけです。

ウソかホントか知りませんが、晩年のマガロフは、有名ピアニストたちの駆け込み寺だったという話が伝わっています。
彼ら(アルゲリッチ、内田光子、ダルベルト、ルイサダなどだそうです)は、己の演奏活動に何らかの行き詰まりを感じるとマガロフのもとを訪ねたというのです。もちろん、マガロフが演奏上のテクニックなどに関して云々してくれる問うわけではありません。当然のことながら、アルゲリッチや内田光子に、そのようなアドバイスは全く無用です。
ただ、彼のもとをたずねて、あれこれの四方山話をしているうちに気分がスッキリとして再び過酷な演奏家生活に戻っていったというのです。

彼の演奏を聴いていると、さもありなんと言う話ではあります。

なお、最後に余談ながら、デッカによる1956年の録音であるにもかかわらずモノラルです。ただし、音質は、モノラル録音の限界とも思えるほどの良質な録音です。ピアノのソロ演奏だと、モノラルですよと言われなければ気がつかないほどの優秀さです。

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