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コンスタンティン・シルヴェストリ(Constantin Silvestri)|リスト:交響詩「プレリュード」
リスト:交響詩「プレリュード」
ジルヴェストリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1958年録音
Liszt:交響詩「前奏曲」
人生は死への前奏曲

交響詩という形式はリストの手になるものと言われています。それだけに「フン族の戦争」などというけったいな題名のついた作品をはじめとして実にたくさん作曲しています。しかし、その殆どはめったに演奏されることはないようで、録音もあまりお目にかかりません。そんな中で、唯一ポピュラリティを獲得しているのがこの「プレリュード(前奏曲)」です。
これはフランスの詩人ラマルティーヌの「詩的瞑想録」に題を得たものだと言われています。ものの本によると(^^;、リストはスコアの扉にこのように記しているそうです。
「人生は死への前奏曲でなくて何であろうか。愛は全ての存在にとって魅惑的な朝である。しかし運命は冷酷な嵐によって青春の幸福を必ず破壊してしまう。傷つけられた魂は孤独な田園生活にその慰めを見いだすが、人はその静けさの中に長くいることに耐えられない。トランペットの警告がなりわたるとき、すべての人は自分自身の意義を求めて再び闘いの中心に飛び込んでゆく」
こう言うのを読むと、何か人生で辛いことがあったのかな、などと思ってしまいますが、調べてみるとこれが作曲されたときは、2番目の愛人となったヴィトゲンシュタイン侯爵夫人との同棲生活に入って、もっとも幸せの絶頂にいたころなんですね。でも、考えてみるとこれは当然のことで、不幸のどん底にいる人が「人生は死への前奏曲である・・・・」なんて言って曲作りをするなんて不可能です。
自分がそういう不幸とは一番遠いところにいるからこそ、逆にこのようなテーマで曲作りが出きるのだと言えます。そして同時に、こういう大仰な物言いの中から、いわゆる「ロマン派的な価値観」が垣間見られるような気がします。
誠実さと根気
カラヤンのプレリュードを聴いてみて、確か以前にジルヴェストリのプレリュードもアップしてあったことを思い出しました。この際ついでだから二つの録音を同時に紹介してみようと思った次第です。
しかし、改めてこの二つの録音を聞いてみて、カラヤンという指揮者の「先見性」みたいなものに気づかされました。
おそらく、カラヤンがクラシック音楽の世界で「帝王」と呼ばれるような地位を獲得できた最大の要因は、「録音」というフィールドの重要性を誰よりも正確に把握していたからでしょう。
実は、今という時代においても、「録音」というものが持っている本当の意味を十分に理解していない人は少なくありません。その最たるものが、音楽というのは「実演」こそが最上のものであって、「録音」というものはそう言う「実演」に接することができない気の毒な人のための「やむを得ない代替物」だというとらえ方です。
こういう人にかかると、セッション録音などと言うものは「忌まわしい」以外の何物でもなく、「実演」の勢いと熱気を失わない「ライブ録音」こそが最も優れた「代替物」だととされます。そして、こういう考え方は、演奏するサイドだけでなく聞き手の側においても結構根強く残っています。
これに対して、「録音」という行為は「実演」とは全く異なる別の芸術的行為だと見抜いた人がいました。それは、「実演」>「録音」とか、「録音」>「実演」等というような優劣の問題ではなくて、「実演」というフィールドしか持っていなかった音楽の世界に、「録音」という新たな表現のためのフィールドができたというとらえ方です。
そして、カラヤンの慧眼は、今後は「録音」というフィールドがより重要性を増していくということ、さらには、「実演」と「録音」では表現のスタイルが変わることを見抜いていました。
実演は一度限りであり、音は出される端から虚空へと消えていきます。そこでは、精度よりも表現の振幅の大きさこそが意味を持ちます。
しかし、録音は基本的には何度も繰り返し聞かれるものですから、何よりも精度こそが重要視されます。個々のアンサンブルの精度はいうまでもなく、作品全体のフォルムもきちんと整えなければなりません。しかし、テイク2、テイク3が可能な録音においては、根気と誠実ささえあれば、そう言う精度は実演では絶対になしえないレベルにまで仕上げることは可能です。
しかし、そう言う根気と誠実さは、録音を実演の代替物としかとらえられない指揮者(演奏家)にとっては馬鹿げた、そして忌まわしい苦行以外の何物でもなかったでしょう。結局は、カラヤンのように、そこに時代を切り開く価値があることを見抜いた数少ない演奏家のみがなしえたことであり、そして、カラヤンが見通したように、時代は彼らを指示したのです。
一部では「爆演指揮者」とレッテルを貼られるジルヴェストリですが、このプレリュードの録音などを聞くと結構きちんと演奏しています。しかし、音楽が次第に盛り上がってくると、少しずつオケに対するコントロールが甘くなっていくのが手に取るように分かります。特に、カラヤンの録音と比較して聞いてみると、その差は歴然です。
ほとんど同じ時期に、同じオケを使っての録音ですから、比較をするにはもってこいです。
カラヤンの場合は、音楽が盛り上がっていってもオケに対するコントロールは全くゆるみません。ですから、オケもまた熱くなりながらも頭は冷静さを保っています。
漸くにして、モノラルからステレオへと移行していった50年代の後半に、このような演奏ができた指揮者って他にいたかな?と思うほどです。
やはり、この時代のカラヤンの録音は、もう少し丁寧にすくい上げていく必要があるなと思います。
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