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ドヴォルザーク:ピアノ三重奏曲第4番 Op.90 「ドゥムキー」

オイストラフ・トリオ(オイストラフ、オボーリン、クヌシェヴィツキー) 1950年録音



Dvorak:ピアノ三重奏曲第4番 Op.90 「ドゥムキー」 「第1楽章」

Dvorak:ピアノ三重奏曲第4番 Op.90 「ドゥムキー」 「第2楽章」

Dvorak:ピアノ三重奏曲第4番 Op.90 「ドゥムキー」 「第3楽章」

Dvorak:ピアノ三重奏曲第4番 Op.90 「ドゥムキー」 「第4楽章」

Dvorak:ピアノ三重奏曲第4番 Op.90 「ドゥムキー」 「第5楽章」

Dvorak:ピアノ三重奏曲第4番 Op.90 「ドゥムキー」 「第6楽章」


主題が一つの心理的状態によって次々と変奏されていく作品

「ドゥムキー」とは「ドゥムカ」の複数形だということです。では、「ドゥムカ」とは何か?と聞くと、それはウクライナの民謡の形式だと書いてあります。では、「ドゥムカ」なる民謡形式とはどんな音楽なのかと問えば、それについてはあまり詳しい説明をしている文章にであったことがありません。
何だかはっきりしないなぁ・・・と思いつつさらに調べてみると、この6つの楽章はそれほどウクライナの民謡形式とつながりはないと書いてある文章にでくわしました。友人達の証言によると、ドヴォルザークは民謡形式としての「ドゥムカ」についてはあまり知らなかったようだ、と言うのです。だから、ドヴォルザークがイメージした「ドゥムカ」は民謡形式としての「ドゥムカ」ではなくて、チェコ語で「瞑想」を表す「ドゥムカ」が念頭にあったのではないかというのです。

もちろん、そんな「トリビア」的なことを明確にしなくても作品を楽しむ上では何の妨げにもなりません。しかし、この作品については、意外とその「トリビア」が重要です。

ドヴォルザークという人はとても有名なのに、演奏される作品があまりにも限定されているという不思議な存在です。特に認知度が低いのが室内楽の分野で、ドヴォルザークの創作活動のかなり大きな部分を占めているにもかかわらず、「アメリカ」をのぞけばほとんど演奏される機会がありません。
いわゆる「国民楽派」と分類される音楽家達の中で、ドヴォルザークほどたくさんの室内楽作品を残した人はいません。いわゆるロマン派と分類される音楽家にまで範囲を広げても、彼ほどたくさんの室内楽作品を残したのはブラームスぐらいではないでしょう。
どちらかと言えば、政治的なナショナリズムと深く結びついて、メッセージを直截に届けることをメインとした国民楽派の中では異色の存在だったと言えます。

そんなドヴォルザークの室内楽の分野における一つの到達点を示すのがこの作品です。ところが、この作品は6楽章もあるのに、ソナタ形式の楽章が一つもないのです。二部形式に三部形式、ロンド形式という、どちらかと言えば単純な形式で全体が構成されています。
ベートーベンからシューベルト、ブラームスへと受けつがれた正統派の系譜をしっかりと受けついだ作品を書いてきたドヴォルザークとしては異例の構成です。
ですから、下手をすると、耳あたりのいい音楽が次々と現れるだけで全体としては散漫な印象しか残らない恐れがあります。
しかし、この作品は聞いてみれば分かるように、天性のメロディーメーカーとも言うべきドヴォルザークの美質が遺憾なく発揮されながら、全体としては決して散漫な印象にはなっていません。どこかで、この作品のことを室内楽版の「スラブ舞曲集」みたいなもの、と書いておられる方がいましたが、それは違うと思います。
つまり、メロディメーカーとしての美質が窮屈な形式の中に閉じこめられて不自由になることなく、それでいながら全体として一つの統一感によって秩序づけられているのです。
まさに、この点においてドヴォルザークの室内楽の分野における一つの到達点を示すものとされるのです。

では、その統一感とは何かと問われれば、それは「ドゥムカ」だと答えるしかありません。もちろん、この「ドゥムカ」とは、民謡形式としての「ドゥムカ」ではなくて、チェコ語の「ドゥムカ」です。ある種の悲しみを伴った瞑想感が作品全体を一つの絆のもとにつなぎ止める一本の糸としてはたらいていることは明らかです。
クラップハムなるドヴォルザークの専門家は、この作品を単一主題による変奏曲だと主張しました。そして、その主題と変奏の関係は従来のものとは大きく異なり、最初に提示された主題が「ドゥムカ」(瞑想)という一つの心理的状態によって次々と変容していくという、今まで誰も考えつかなかったような手法によるものだと述べています。その意味では、天性のメロディメーカー、ドヴォルザークにしかなしえない形式だと言えます。
そして、そうだとするならば、この作品に冠された「ドゥムキー」はチェコ語の「ドゥムカ」と解するべきでしょうし、それは決して「トリビア」ではないと言うことです。


意外なほど録音がいい

この作品に関しては、演奏を云々できるほど聞いていません。ですから、このオイストラフ・トリオ(vn:オイストラフ p:オボーリン vc:クヌシェヴィツキー)による演奏についても、良いとか悪いとか言えるほどの蓄積がありません。
しかし、この録音を聞いて驚いたのは、50年の録音とは思えないほどの音質の良さです。
ガンガン鳴らすような作品ではなく、どちらかと言えばピアニシモ主体で瞑想するかのように演奏される作品ですから、この録音の良さはありがたいです。オイストラフのヴァイオリンも、第1楽章の呟くような序奏にのって歌い出すところから、美しさ満点です。

しかし、考えてみれば、オイストラフ・トリオと言えばベートーベンの大公トリオが有名ですから、これもまた悪かろうはずがありません。これを、思わぬ拾いものと言えば、無知を笑われるでしょうか?

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2015-02-09:benetianfish





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