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グリーグ:連作歌曲集「山の娘」Op.67

(S)キルステン・フラグスタート (P)エドウィン・マッカーサー 1956年11月23日~30日録音



Grieg:Haugtussa, Op.67 [1.Det syng}

Grieg:Haugtussa, Op.67 [2.Veslemoy]

Grieg:Haugtussa, Op.67 [3.Blabaer-Li]

Grieg:Haugtussa, Op.67 [4.Mote]

Grieg:Haugtussa, Op.67 [5.Elsk]

Grieg:Haugtussa, Op.67 [6.Killingdans]

Grieg:Haugtussa, Op.67 [7.Vond Dag]

Grieg:Haugtussa, Op.67 [8.Ved Gjaetle-Bekke


グリーグの数多い歌曲の中の最高傑作と言われる


  1. 第1曲:歌う(誘惑)

  2. 第2曲:ヴェスモレイ(乙女)

  3. 第3曲:ブルーベリーの丘

  4. 第4曲:逢引

  5. 第5曲:愛

  6. 第6曲:子山羊の踊り

  7. 第7曲:悪い日

  8. 第8曲:イエットレの小川で




グリーグという人は随分とたくさんの歌曲を書いた人のようなのですが、そんな数多い歌曲の中の最高傑作と言われるのがこの連作歌曲集「山の娘」というのが意見の一致するところらしいです。
ノルウェーの詩人ガルボル (Arne Garborg)による、羊を追って暮らす山の娘の生活と悲しい恋の物語を歌った詩に音楽をつけたものです。

この詩にはトロールやエルフが登場したり、ヴェスモレイという霊能者が登場したりするのはとても北欧的です。
そして、山の娘は羊飼いの少年と恋におちて幸せな時を過ごします。

「逢い引き」では「彼女はとある日曜日 思い焦がれながら丘の斜面に座っている 甘美な思いが彼女からあふれ出している」と歌い、「愛」では「向こう見ずな男の子があたしの心を捕まえた あたしは罠にかかった小鳥のように閉じ込められた」と、その喜びを歌い上げます。
そして、その感情は「子山羊の踊り」で最高潮に達します。それは「おお ヒップ ホップ ティップ トップ こんな日には おお ニップ ナップ トリップ トラップ こんな風にね」という、何が「こんな風にね」なのか分からない意味不明の言葉が重ねられていくのですが、それが恋というものなのでしょう。

しかし、それも第7曲の「悪い日」では、今度の日曜日にも山小屋で会おうと約束した恋人は姿を見せず、雨と霧雨の中で彼女は一人待ち続けるのです。そして、恋人の裏切りを知ったときに「もう死ぬしかない 彼女は恋人を失ったのだから」と音楽は暗転していくのです。
しかし、その悲しみも「イエットレの小川で」において浄化されていきます。
「おだやかな波は 日の光にきらめく ああ あたしはここで休むわ 休むわ」から始まり、それはやがて「夢見るわ」から「思い出すわ」「忘れるわ」と変わっていき、最後は「眠らせて!」と結ばれます。


フラグスタートの「Decca」での初録音

ブラームスの「4つの厳粛な歌」をアップしたときに、カルショーが「ワーグナーは別格として、一連の歌曲に関してはそれほど上手くいってはいない」と述べていると書いたのは、少し勘違いだったようです。
フラグスタートが引退を撤回して、「Decca」での録音活動を再開した経緯についてはすでに何度も紹介していますからここでは省きます。

しかし、一つだけ書き忘れていることがありました。それは、「Decca」で本格的に録音活動を再開する前に、すでに母国のノルウェーでも歌手活動を再開していたことです。
特に56年1月に放送用として録音された「神々の黄昏」には思い入れがあったようで、放送時間にあわせて大幅にカットされた部分を追加録音して、商業用録音として発売できないかと「Decca」に話を持ちかけます。
「Decca」としては何としてもフラグスタートを表舞台に戻したかったわけですから、この申し出を通して彼女の信頼を勝ち得たいと思うのは当然のことでした。

そして、どう考えても面白くもない「追加録音」を任されたのがカルショーだったのです。
カルショーはその録音について「見かけだけの全曲録音」であり、フラグスタート以外の歌手については「控えめに言っても力不足」だと述べています。

しかし、この事によって「Decca」への信頼を築けたのか、この追加録音が終わると彼女はすぐにロンドンにやってきてグリーグの歌曲をまとめて録音するのです。ところが、その録音を担当したのはカルショーではなくて、本来はウィーンに本拠を置いて大陸での録音を仕切っているはずのヴィクター・オロフだったのです。

おそらくは、その後にフラグスタート、クナパーツブッシュ、ウィーンフィルという組み合わせでの録音を控えていたからでしょう。「Decca」にとってはそれこそが本線中の本線とも言うべき録音であり、その録音はウィーンにを本拠とするオロフが仕切るのは当然のことでした。
ですから、その本番に向けてフラグスタートとの信頼関係を築きたいという思いもあって、オロフはロンドンにまで出張ってきたものと思われます。

そして、その時の録音の様子をカルショーは「私は居合わせなかったが、どうやらそのセッションは楽しいものではなかったらしい」と述べていたのでした。
つまりは「上手くいっていない」ではなくて、正確に言えばそれはフラグスタートにとっては「楽しいものではなかった」と述べていたのでした。そして、それに続けて「彼女はヴィクター・オロフの手法を好まず、私は以後の彼女の全録音(一つだけ重要な例外はあるが)を担当することになった。」と述べていたのでした。
この「一つだけ重要な例外」というのは言うまでもなく、このすぐ後にウィーンで行われたワーグナーの録音でした。

カルショーはそのウィーンでの録音に関して、「この録音を担当したくてたまらなかった。だがウィーンはヴィクター・オロフの大切な縄張りだったから、私の胸は張り裂けそうだった」と正直に述べてます。
と言うことで、この辺りのカルショーの述懐に関してはかなり感情的な側面が色濃いので、何処まで信じていいのは注意が必要です。

ただし、そのウィーンでの録音以外は常にカルショーが担当したことは事実であり、さらに言えば両者はフラグスタートが1962年にこの世を去るまで良好な関係を築いてきたことも事実です。
しかしながら、オロフはウィーンでの録音が終わった後に「Decca」と喧嘩別れして「EMI」に移籍してしまいます。そのことによってフラグスタートとの関係が途切れてしまったと言うことも見ておく必要があります。

何よりも、ウィーンで行われた一連のワーグナー録音は素晴らしいものですし、さらに言えばカルショーがフラグスタートにとっては楽しいものではなかったと言っているこのグリーグの歌曲集にしても、それほど悪い録音だとは言えません。
カルショーは同じ年の11月にグリーグの連作歌曲集「山の娘」を録音をしているのですが、その両者の間にもそれほど大きな違いがあるとも思えません。もっとも、言われてみれば、「山の娘」の方が肩の力が抜けてのびのびと歌えているような気もするのですが、それでも歌唱の出来に大きな違いはあるとも思えません。

フラグスタート言う人は傲慢で我が儘な人が多い「歌手」という人種の中では珍しいほどの人格者だったようですから、たとえ録音スタッフとの間で多少の不愉快なことがあっても、そんな事くらいで己の芸が揺らぐようなことはなかったのでしょう。

この演奏を評価してください。

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