クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|ヤッシャ・ホーレンシュタイン(Jascha Horenstein)|ヨハン・シュトラウス:ワルツ「ウィーン気質」,Op.354(Johann Strauss II:Vienna Blood, Op.354)

ヨハン・シュトラウス:ワルツ「ウィーン気質」,Op.354(Johann Strauss II:Vienna Blood, Op.354)

ヤッシャ・ホーレンシュタイン指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1962年録音(Jascha Horenstein:Vienna State Opera Orchestra Recorded on December, 1962)

Johann Strauss:Vienna Blood, Op.354


社交の音楽から芸術作品へ

父は音楽家のヨハン・シュトラウスで、音楽家の厳しさを知る彼は、息子が音楽家になることを強く反対したことは有名なエピソードです。そして、そんなシュトラウスにこっそりと音楽の勉強が出来るように手助けをしたのが母のアンナだと言われています。後年、彼が作曲したアンネンポルカはそんな母に対する感謝と愛情の表れでした。
やがて、父も彼が音楽家となることを渋々認めるのですが、彼が1844年からは15人からなる自らの楽団を組織して好評を博するようになると父の楽団と競合するようになり再び不和となります。しかし、それも46年には和解し、さらに49年の父の死後は二つの楽団を合併させてヨーロッパ各地へ演奏活動を展開するようになる。
彼の膨大なワルツやポルカはその様な演奏活動の中で生み出されたものでした。そんな彼におくられた称号が「ワルツ王」です。
たんなる社交場の音楽にしかすぎなかったワルツを、素晴らしい表現力を兼ね備えた音楽へと成長させた功績は偉大なものがあります。

ヨハン・シュトラウス:ワルツ「ウィーン気質」


1873年4月20日にオーストリア=ハンガリー皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の長女ギーゼラとバイエルン王子レオポルトの結婚式が執り行われました。その結婚式の2日後の22日にそのロイヤル・ウェディングを祝うために「宮廷オペラ舞踏会」が行われました。このワルツは、その祝いの席とも言うべき舞踏会で初演されたのですが、そのタイトルは結婚とはあまり関係のない「ウィーン気質」というものでした。
その背景には、この作品はロイヤル・ウェディングだけでなく、同年に行われる予定のウィーン万博へのお祝いという意味も含まれていたようです。

なお、シュトラウスはその後、このワルツを中心として、旧作をオムニバス形式でつなぎ合わせることで新しいオペレッタを作曲することを思い立ちます。しかしながら、その作品は突然の病によって中断され、やがてシュトラウスの死によって未完のまま残されます。しかし、生前のシュトラウスとの約束によって、彼の良き友であり作品のよき理解者として認められていたアン・デア・ヴィーン劇場の指揮者アドルフ・ミュラーによって未完の部分が補筆されて完成されています。

そのオペレッタは陽気なウィーン子の気質を描きながらも、統一ドイツ帝国から取り残されて斜陽していくオーストリア帝国への郷愁と愛が込められたものとなっていました。


ホーレンシュタインのウィンナーワルツ

ホーレンシュタインは1962年にリーダーズ・ダイジェスト(Reader's Digest)で、ウィンナーワルツをまとまって録音しています。


  1. ヨハン・シュトラウス:「こうもり」序曲

  2. ヨハン・シュトラウス:ワルツ「酒、女、歌」, Op.333

  3. ヨハン・シュトラウス:常動曲, Op.257

  4. ヨハン・シュトラウス:アンネン・ポルカ, Op.117

  5. ヨハン・シュトラウス:ワルツ「ウィーン気質」,Op.354

  6. ヨハン・シュトラウス:皇帝円舞曲, Op.437

  7. ヨハン・シュトラウス:トリッチ・トラッチ・ポルカ, Op.214

  8. ヨハン・シュトラウス:ワルツ「春の声」,op.410

  9. ヨハン・シュトラウス:ワルツ「芸術家の生活」, Op.316

  10. ヨハン・シュトラウス:ワルツ「美しく青きドナウ」,Op.314



ホーレンシュタインのウィンナー・ワルツというのはいまひとつピンとこなかったのですが、実際に聞いてみれば実に素晴らしくて驚かされてしまいました。なんだか、アンドレ・ナヴァラの時といい、最近は同じようなことばかり書いているような気がします。

このワルツを聞いていると、なんだか自分自身が気持ちよくワルツのステップを踏んで踊っているような気分になってきます。もちろん、私自身はダンスなどとは全く無縁な人なので全くの妄想に過ぎないのですが、ホーレンシュタインの音楽には、聞く人にそのような妄想を抱かせる力があります。
それは、彼のワルツがそういう妄想を抱かせるほどに美しくてなめらかな曲線によって造形されているからなのでしょう。
そして、もう一つ思い浮かぶ妄想は、フィギア・スケートのスケーティングのように自分の思うがままに美しくて完璧な曲線を描けているような錯覚です。

ワルツはどれもこれもホーレンシュタインという職人の手によって極限まで滑らかに磨き上げられています。そして、その手によって描き出された曲線と肌触りのなんと優美でやさしいこと!
しかし、磨き上げるといっても、それは例えばセルとクリーブランド管のようなクリスタルなものとは異なります。磨き上げられていることは磨き上げられているのですが、そこにはクリスタルな精緻さではなくて、どこまでいっても人肌が持つ温かさを失わないのです。

たしかに、ホーレンシュタインはセルと同じようにオーケストラを完ぺきにコントロールして、音楽的表現においていかなる曖昧さも残していません。
しかし、セルのウィンナーワルツを聞いているとまるで士官学校の舞踏会のようだと感じたのですが、ホーレンシュタインの場合はやはりやんごとなき上流階級の所公開の舞踏会です。もちろん、そんな舞踏会などとは全く縁のない人生だったのですから、それもまた全くの妄想なのですが、きっとそれほど間違ってはいないように思います。

そこには、オケがウィーンのオケだということもうまくプラスに作用しているのでしょう。
とはいえ、あの性悪のオーケストラをその持ち味を最大限にいかしつつ、よくぞここまでコントロールしたものです。

ホーレンシュタインといえばマイナーな小道を進んだ指揮者ではあるのですが、決して見落としてはいけない指揮者の一人だと再確認させられました。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



5586 Rating: 4.8/10 (46 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント




【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-06-01]

ベートーベン:交響曲第2番 ニ長調 作品36(Beethoven:Symphony No.2 in D major)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1959)

[2025-05-29]

ラヴェル:組曲「クープランの墓(管弦楽版)」(Ravel:Le Tombeau de Couperin)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1958年11月16日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on November 16, 1958)

[2025-05-26]

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調, Op.35(Tchaikovsky:Violin Concerto in D major Op.35)
(Vn)アルフレード・カンポーリ:アタウルフォ・アルヘンタ指揮 ロンドン交響楽団 1956年12月27日~28日録音(Alfredo Campoli:(Cin)Ataulfo Argenta London Symphony Orchestra Recorded on December 27-28, 1955)

[2025-05-22]

ベートーベン:交響曲第1番 ハ長調 作品21(Beethoven:Symphony No.1 in C major , Op.21)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1959)

[2025-05-18]

ラヴェル:スペイン狂詩曲(Ravel:Rhapsodie espagnole)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1963年2月24日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on February 24, 1963)

[2025-05-15]

エルガー:ヴァイオリン協奏曲 ロ短調, Op.61(Elgar:Violin Concerto in B minor, Op.61)
(Vn)アルフレード・カンポーリ:サー・エードリアン・ボールト指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 1954年10月28日~29日録音(Alfredo Campoli:(Con)Sir Adrian Boult The London Philharmonic Orchestra Recorded on October 28-29, 1954)

[2025-05-12]

ラヴェル:舞踏詩「ラ・ヴァルス」(Ravel:La valse)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1963年1月30日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on January 30, 1963)

[2025-05-09]

ブラームス:交響曲第4番 ホ短調, Op.98(Brahms:Symphony No.4 in E minor, Op.98)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1960年録音(Joseph Keilberth:Hamburg Philharmonic Orchestra Recorded on 1960)

[2025-05-06]

ショパン:ノクターン Op.55&Op.62&Op.72&Op-posth(Chopin:Nocturnes for piano, Op.55&Op.62&Op.72)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1956年発行(Guiomar Novaes:Published in 1956)

[2025-05-03]

ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1963年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1963)