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ジュリーニ(Carlo Maria Giulini)|ドビュッシー:3つの交響的スケッチ「海」
ドビュッシー:3つの交響的スケッチ「海」
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団1962年4月11~14,19,25,26日録音
Debussy:La Mer, trois esquisses symphoniques [1.De l'aube a midi sur la mer]
Debussy:La Mer, trois esquisses symphoniques [2.Jeux de Vagues]
Debussy:La Mer, trois esquisses symphoniques [3.Dialogue du Vent et de la Mer]
ドビュッシーの管弦楽作品を代表する作品

「牧神の午後への前奏曲」と並んで、ドビュッシーの管弦楽作品を代表するものだと言われます。そう言う世間の評価に異議を唱えるつもりはありませんが、ユング君の率直な感想としては、この二つの作品はたたずまいがずいぶん違います。
いわゆる「印象派」と呼ばれる作品ですが、この「海」の方は音楽に力があります。そして曖昧模糊とした響きよりは、随分と輪郭線のくっきりとした作品のように思えます。
正直申し上げて、ユング君はあのドビュッシー特有の茫漠たる響きが好きではありません。眠たくなってしまいます。(^^;
そんな中で、結構CDでよく聞くのがこの「海」です。
作曲は1903年から1905年と言われていますが、完成後も改訂が続けられたために、版の問題がブルックナー以上にややこしくなっているそうです。詳しくはこちら。→
ドビュッシーの「海」
一般的には「交響詩」と呼ばれますが、本人は「3つの交響的スケッチ」と呼んでいました。作品の雰囲気はそちらの方がピッタリかもしれません。
描写音楽ではありませんが、一応以下のような標題がつけられています。
1 「海の夜明けから真昼まで」
2 「波の戯れ」
3 「風と海との対話」
頭の先から尻尾の先まで満々たる気迫がこもっている演奏
正直言ってジュリーニにドビュッシーの「海」というのはピンときませんでした。それは、私の中に、ジュリーニと言えばイタリア出身の指揮者だけどドイツ・オーストリア系のバリバリの王道派という思いこみがあったからです。
ところが、聞いてみると、なるほどジュリーニが「海」を振るとこうなるんだ!と言う驚きに満ちた音楽になっていて、さらには、ジュリーニはこの「海」をとても得意にしていたという話なんかも耳に入ってくると、急に手のひらを返したように「なるほどね」と呟いてしまう私なのです。
ドビュッシーの「海」と言えば、どこか茫洋とした響きでパステル画のように描き出すのが一般的です。
ところが、このジュリーニの「海」にはそう言う茫洋としたパステル画とは正反対の、まるで今流行の4K動画を見るような克明さです。
当然の事ながら、そう言う高解像度で描き出すとなれば、いかなる細部もおろそかにはできません。驚くべきは、そう言うジュリーニの過酷な要求に応えるフィルハーモニア管の凄さと、その凄い演奏をこれまたキッチリとテープに刻み込んだ録音陣の凄腕です。
私は、この「茫洋」とした響きが昔から苦手で、それ故にドビュッシーの音楽を苦手していました。そう言えば、
フェルベールのピアノによるドビュッシーには、そう言う茫洋とした雰囲気が希薄です。そう言えば、フェルベールのピアノを評して「おかしな言い方ですが、その茫洋とした響きがクリアに表現されているような気がする」とし、それに続けて「ですから、ドビュッシーの音楽にいつも感じるとりとめのなさが姿を消して、どこかにとっかかりを持ちながら聞き続けることができるのです。」なんて書いていたほどです。
しかし、このジュリーニの「海」はそう言う持って回った言い方をしなくてもいいほどに、ドビュッシーの響きをこの上もなくクリアに描き出しています。それ故に、そこで描かれる「海」は蕪村的な「終日のたりのたりかな」という駘蕩な海とはおもむきが随分違っているのですが、それもまたドビュッシーが感じとって描き出した「海」を受け取ったジュリーニの目に映じた「海」と言うことなのでしょう。(なんちゅう、日本語だ!!)
ついでながら、50年代の初めにジュリーニは最晩年のトスカニーニと非常に親密な交流を持つようになるのですが、そのきっかけがドビュッシーの「海」でした。そう言えば、トスカニーニもまたこの「海」を十八番にして他のです。
ラジオでジュリーニの「海」を聞いたこの老巨匠は、すぐにでもその若者に会いたいと言い出して二人の交流は始まったのでした。
そう思えば、この頭の先から尻尾の先まで満々たる気迫がこもっているのも納得です。
この演奏を評価してください。
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