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メンデルスゾーン:組曲「夏の夜の夢」

セル指揮 ニューヨークフィル 1951年1月8日&12月17日録音



Mendelssohn:組曲「夏の夜の夢」 序曲

Mendelssohn:組曲「夏の夜の夢」 スケルツォ

Mendelssohn:組曲「夏の夜の夢」 間奏曲

Mendelssohn:組曲「夏の夜の夢」 夜想曲

Mendelssohn:組曲「夏の夜の夢」 結婚行進曲


メンデルスゾーンの天才性が発露した作品

まず初めにどうでもいいことですが、この作品は長く「真夏の夜の夢」と訳されてきました。それは、シェークスピアの原題の「A Midsummer Night's Dream」の「Midsummer」を「真夏」と翻訳したためです。
しかし、これは明らかに誤訳で、この戯曲における「Midsummer」とは、「midsummer day(夏至)」を指し示していることは明らかです。この日は「夏のクリスマス」とも呼ばれる聖ヨハネ祭が祝われる日であり、それは同時に、キリスト教が広くヨーロッパを覆うようになる以前の太陽神の時代の祭事が色濃く反映している行事です。ですから、この聖ヨハネ祭の前夜には妖精や魔女,死霊や生霊などが乱舞すると信じられていました。シェークスピアの「A Midsummer Night's Dream」もこのような伝説を背景として成りたっている戯曲ですから、この「Midsummer」は明らかに「夏至」と解すべきです。
そのため、最近は「真夏の夜の夢」ではなくて、「夏の夜の夢」とされることが多くなってきました。
まあ、どうでもいいような話ですが・・・。

さらに、どうでもいいような話をもう一つすると、この作品は組曲「夏の夜の夢」として、序曲に続けて「スケルツォ」「間奏曲」「夜想曲」「結婚行進曲」が演奏されるのが一般的ですが、実はこの序曲と、それに続く4曲はもともとは別の作品です。

まず、序曲の方が先に作曲されました。これまた、元曲はピアノ連弾用の作品で、家族で演奏を楽しむために作曲されました。しかし、作品のできばえがあまりにもすばらしかったので、すぐにオーケストラ用に編曲され、今ではこの管弦楽用のバージョンが広く世間に流布しています。
これが、「夏の夜の夢 序曲 ホ長調 作品21」です。
驚くべきは、この時メンデルスゾーンはわずか17歳だったことです。
天才と言えばモーツァルトが持ち出されますが、彼の子ども時代の作品はやはり子どものものです。たとえば、交響曲の分野で大きな飛躍を示したK183とK201を作曲したのは、彼もまた1773年の17歳の時なのです。
しかし、楽器の音色を効果的に用いる(クラリネットを使ったロバのいななきが特に有名)独創性と、それらを緊密に結びつけて妖精の世界を描き出していく完成度の高さは、17歳のモーツァルトを上回っているかもしれません。
ただ、モーツァルトはその後、とんでもなく遠いところまで歩いていってしまいましたが・・・。

ついで、この序曲を聴いたプロイセンの王様(ヴィルヘルム4世)が、「これはすばらしい!!序曲だけではもったいないから続くも書いてみよ!」と言うことになって、およそ20年後に「劇付随音楽 夏の夜の夢 作品61」が作曲されます。
このヴィルヘルム4世は中世的な王権にあこがれていた時代錯誤の王様だったようですが、これはバイエルンのルートヴィヒ2世も同じで、こういう時代錯誤的な金持ちでもいないと芸術は栄えないようです。(^^;
ただし、ヴィルヘルム4世の方は「狂王」と呼ばれるほどの「器の大きさ」はなかったので、音楽史に名をとどめるのはこれくらいで終わったようです。

作品61とナンバリングされた劇付随音楽は以下の12曲でできていました。

1. スケルツォ
2. 情景(メロドラマ)と妖精の行進
3. 歌と合唱「舌先裂けたまだら蛇」(ソプラノ、メゾソプラノ独唱と女声合唱が加わる)
4. 情景(メロドラマ)
5. 間奏曲
6. 情景(メロドラマ)
7. 夜想曲
8. 情景(メロドラマ)
9. 結婚行進曲 - ハ長調、ロンド形式
10. 情景(メロドラマ)と葬送行進曲
11. ベルガマスク舞曲
12. 情景(メロドラマ)と終曲(ソプラノ、メゾソプラノ独唱と女声合唱が加わる)

ただし、先にも述べたように、現在では、作品21の序曲と、劇付随音楽から「スケルツォ」「間奏曲」「夜想曲」「結婚行進曲」の4曲がセレクトされて、組曲「夏の夜の夢」として演奏されることが一般的となっています。


きっちりとした、かつ堂々たる音楽

この作品は長くプレヴィン&ウィーンフィルの録音が長く定番の位置を占めてきました。全曲盤があまり数は多くないと言うこともあるのでしょうが、その上品でソフトな語り口がこの作品にふさわしいものであることも事実です。
ただ、ここで取り上げたような組曲盤だと、このセルの録音はかなり高い価値を持っていると言えます。

セルは、66年にステレオで録音を残しています。手兵のクリーブランドととのスタジオ録音と言うこともあり、このニューヨークフィルとの古いモノラル録音と比べれば全ての面で優れています。
しかし、驚くべきは、セルのぶれの少なさです。15年を隔てて、さらにはオケも異なるのに、作品の造形は基本的にほとんど変わっていないように聞こえます。きちんとした楷書風の演奏でありながら、その背後からメンデルスゾーンの上質なロマンがしっかりと聞き手に伝わってきます。そして、あのあまりにも有名な結婚行進曲はこの上もなく堂々としています。

なお、セルの演奏記録を調べてみると、1951年1月4・5日と、1951年12月13日、14日にニューヨークフィルの定期演奏会でこの作品を取り上げています。1月は「序曲、スケルツォ、夜想曲、結婚行進曲」、12月は「序曲、間奏曲、スケルツォ」を取り上げています。
セルは演奏会で取り上げてから録音というスタイルを取っていますので、おそらくは1月に4曲録音し、12月に間奏曲だけを録音してリリースしたのではないでしょうか。おそらく、間違いないと思います。

この演奏を評価してください。

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