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レナード・バーンスタイン(Leonard Bernstein)|シューマン:交響曲第2番 ハ長調 作品61
シューマン:交響曲第2番 ハ長調 作品61
バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィル 1953年6月24&26日録音
Schumann:交響曲第2番 ハ長調 作品61 「第1楽章」
Schumann:交響曲第2番 ハ長調 作品61 「第2楽章」
Schumann:交響曲第2番 ハ長調 作品61 「第3楽章」
Schumann:交響曲第2番 ハ長調 作品61 「第4楽章」
作曲家であると同時に、評論家であったのがシューマンです。

その最大の功績はショパンやブラームスを世に出したことでしょう。
しかし、音楽家としてのシューマンの評価となると、その唯一無二の魅力は認めつつも、いくつかの疑問符がいつもつきまといました。特に交響曲のオーケストレーションは常に論議の的となってきました。
曰く、旋律線を重ねすぎているためどこに主役の旋律があるのか分かりにくく、そのため、オケのコントールを間違うと何をしているのか分からなくなる。
そして、楽器を重すぎているため音色が均質なトーンにならされてしまい、オケがいくら頑張っても演奏効果もあがらない、などなどです。
そんなシューマンの交響曲は常に舵の壊れた船にたとえられてきました。
腕の悪い船長(指揮者)が操ると、もうハチャメチャ状態になってしまいます。オケと指揮者の性能チェックには好適かもしれませんが、とにかく問題の多い作品でした。
こういう作品を前にして、多くの指揮者連中は壊れた舵を直すことによってこの問題を解決してきました。その直し方が指揮者としての腕の見せ所でもありました。
最も有名なのがマーラーです。
自らも偉大な作曲家であったマーラーにとってはこの拙劣なオーケストレーションは我慢できなかったのでしょう。
不自然に鳴り響く金管楽器やティンパニー、重複するパートを全部休符に置き換えるというもので、それこそ、バッサリという感じで全曲に外科手術を施しています。
おかげで、すっきりとした響きに大変身しました。
しかし、世は原点尊重の時代になってくると、こういうマーラー流のやり方は日陰に追いやられていきます。
逆に、そのくすんだ中間色のトーンこそがシューマン独特の世界であり、パート間のバランス確保だけで何とか船を無事に港までつれていこうというのが主流となってきました。
特に、原典尊重を旗印にする古楽器勢の手に掛かると、まるで違う曲みたいに響きます。
モダンオケでもサヴァリッシュやシャイーなどは原典尊重でオケをコントロールしています。
しかし今もなおスコアに手を入れる指揮者も後を絶ちません。(ヴァントやジュリーニ、いわゆる巨匠勢ですね。)
そう言うところにも、シューマンのシンフォニーのかかえる問題の深刻さがうかがえます。
しかし、演奏家サイドに深刻な問題を突きつける音楽であっても、、聞き手にとっては、シューマンの音楽はいつも魅力的です。。
例えば、この第3楽章のくすんだ音色で表現される憂愁の音楽は他では絶対に聴けないたぐいのものです。これを聞くと、これぞロマン派のシンフォニーと感じ入ります。
そんなユング君は、どちらかといえばスコアに手を加えた方に心に残る演奏が多いようです。その手の演奏を最初に聞いてシューマン像を作り上げてしまった「すり込み現象」かもしれませんが。
色々と考えさせられる音楽ではあります。
眩しいまでの若さが溢れる演奏〜1953年のデッカ録音
帝王カラヤンと人気を二分したバーンスタインですが、その残された業績には様々な評価が入り乱れてなかなか一致点を見いだすのは難しいようです。取りあえず、彼の指揮者としてのキャリアを振り返ってみれば、以下の3期に分けられることには誰も異存はないでしょう。
(1)1943年〜1958年 衝撃のデビュー・コンサートからニューヨーク・フィルの常任指揮者就任まで
(2)1958年〜1969年 ニューヨーク・フィルの常任指揮者時代
(3)1969年〜1990年 ニューヨーク・フィルの常任指揮者を辞任してから亡くなるまで
この3期を、ホップ・ステップ・ジャンプと捉えて、客演指揮者として世界中のオケを指揮してまわった晩年をベストとする人と、そうではなくてニューヨークフィルの常任指揮者として活躍していた時期こそがベストだと言う人と、大きく分けて二分されるようです。
晩年の超絶的スローテンポの演奏を重厚で円熟の極みと褒めちぎる人もいれば、どうにも「付き合いきれんなぁ・・・!」と言う人も少なからず存在して、そう言う連中は「荒さはあってもニューヨークフィル時代がベスト!」なんて言っていました。
ユング君は、それぞれの時期にいい録音もあればあまりよくないものもあるという当然の前提はふまえながら、それでも二択を迫られれば迷うことなく若い時代を選ぶ人でした。
余談になりますが、バーンスタインが最晩年にイスラエルフィルを帯同した来日公演で演奏したマーラーの9番は、「ベルリン・フィルとの歴史的演奏をも凌ぐ壮絶な超名演」と評されて絶賛の嵐を巻き起こしたものです。ユング君もおそらくバーンスタインもこれが最後かもしれないと思って、その演奏会を聴きに出かけたのですが、正直申し上げて、超絶的なまでのスローテンポで、尚かつ、延々とピアニシモで演奏される終楽章にはすっかり恐れ入って(辟易として??)、とてもじゃないが「付き合いきれんなぁ」と思いつつ、これまた延々と続くカーテンコールに背を向けてさっさと家路に向かった一人でした。まあ、お前にはマーラーを聴く耳がないんだと言われればそれまでですが・・・。
思うに、「芸」というものは年齢とともに右肩上がりに上昇していくものではないようです。必ず、どこかで頂点があり、そこを超えれば必ず低下し始めるのが「芸」というものです。ただ、名人と呼ばれるような人は、頂点を極めた後の落ち込みが非常に小さくて、年齢を重ねても非常に高いレベルの芸を披露してくれるのが名人の名人たるゆえんです。そして、人はそう言う芸を「円熟」という名で賞賛するのです。
しかし、ユング君は年を経た後の「円熟」ではなくて、その「頂点」に向けて上昇を続けている若い時代の「勢い」にこそ魅力を感じます。もちろん、「円熟の芸」というのを否定する気はないのですが、それでも、頂点に向けて駆け上がっていくときの唯一無二の魅力は望むべくもありません。
1953年の6〜7月にバーンスタインはデッカとの間で初めて交響曲の録音をしています。
*ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」 6月22日録音
*シューマン:交響曲第2番 6月24&26日録音
*ブラームス:交響曲第4番 6月29日録音
*チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」 6月29&30日録音
*ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」 7月28日録音
本当に「一気!!」という感じでに録音されたこれらの演奏は、そう言う「若さ」にしか持ち得ない「勢い」が横溢しています。もちろん、バーンスタインにしてみれば初めて訪れた大きな録音の仕事ですから、それこそ万全を期して指揮棒を握ったことでしょう。しかし、そんなプレッシャーなどは微塵も感じさせない伸びやかな勢いを感じさる演奏に仕上がっています。
もちろん、後の時代の録音と比べれば荒さも未熟さもあるわけですが、伝統や約束事にとらわれず、自分の信じる音楽を精一杯表現しようとする「若さの勢い」はこの上もなく眩しいものです。
もしも、指揮者というものは、年を経て年輪を重ねた時期の芸こそがベストだと思っておられる方がいれば、是非ともこういう若い時代の録音に虚心坦懐に耳を傾けてほしいと思います。
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