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Home|コリン・デイヴィス(Colin Davis)|ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調, Op.92

ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調, Op.92

コリン・デイヴィス指揮:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 1961年4月21日~22日録音



Beethoven:Symphony No.7 in A major, Op.92 [1.Poco Sostenuto; Vivace]

Beethoven:Symphony No.7 in A major, Op.92 [2.Allegretto]

Beethoven:Symphony No.7 in A major, Op.92 [3.Presto; Assai Meno Presto; Presto]

Beethoven:Symphony No.7 in A major, Op.92 [4.Allegro Con Brio]


深くて、高い後期の世界への入り口

「不滅の恋人」は「アマデウス」と比べるとそれほど話題にもなりませんでしたし、映画の出来そのものもいささか落ちると言わなければなりません。しかし、いくつか印象的な場面もあります。(特に気に入ったのは、クロイツェル・ソナタの効果的な使い方です。私ははこの曲が余りよく分からなかったのですが、この映画を見てすっかりお気に入りの曲になりました。これだけでも、映画を見た値打ちがあるというものです。)

それにしても、「アマデウス」でえがかれたモーツァルトもひどかったが、「不滅の恋人」でえがかれたベートーベンはそれに輪をかけたひどさでした。

第9で、「人類みな兄弟!!」と歌いあげた人間とは思えないほどに、「自分勝手」で「傲慢」、そしてどうしようもないほどの「エキセントリック」な人間としてえがかれていました。一部では、あまりにもひどすぎると言う声もあったようですが、私は実像はもっとひどかったのではないかと思っています。

偉大な音楽家達というものは、その伝記を調べてみるとはっきり言って「人格破綻者」の集まりです。その人格破綻者の群の中でも、とびきりの破綻者がモーツァルトとベートーベンです。
最晩年のぼろ屑のような格好でお疾呼を垂れ流して地面にうずくまるベートーベンの姿は、そのような人格破綻者のなれの果てをえがいて見事なものでした。

不幸と幸せを足すとちょうど零になるのが人生だと言った人がいました。これを才能にあてはめると、何か偉大なものを生み出す人は、どこかで多くのものを犠牲にする必要があるのかもしれません。

この交響曲の第7番は、傑作の森と言われる実り豊かな中期の時期をくぐりぬけ、深刻なスランプに陥ったベートーベンが、その壁を突き破って、後期の重要な作品を生み出していく入り口にたたずむ作品です。
ここでは、単純きわまるリズム動機をもとに、かくも偉大なシンフォニーを構築するという離れ業を演じています。(この課題に対するもう一つの回答が第8交響曲です。)
特にこの第2楽章はその特徴のあるリズムの推進力によって、一つの楽章が生成発展してさまをまざまざと見せつけてくれます。

この楽章を「舞踏の祝祭」と呼んだのはワーグナーですが、やはり大したものです。

そしてベートーベンはこれ以後、凡人には伺うこともできないような「深くて」「高い」後期の世界へと分け入っていくことになります。


若鮎がピチピチと跳ねているような

コリン・デイヴィスのデビューに至る経緯はすでに紹介したことがあるのですが、少し時もたっていますのでもう一度簡単に紹介しておきます。

彼は貧しい家庭に育ったためにピアノを買うことができず、そのために最も値段の安かったクラリネットで音楽の学習を開始しました。そして、ピアノの演奏能力に問題があったために音楽大学では指揮法の履修を断られたという話も、これまた知る人ぞ知る有名なエピソードです。
しかしながら、そう言う境遇にもめげずに、自分たちの仲間内でオケを作って指揮活動を始め、そして、ついにはクレンペラーが病気でキャンセルしたとき(1959年)に、その代役として「ドン・ジョヴァンニ」を指揮して大成功を収めます。
その成功によってメジャー・レーベルからの録音のオファーが来ます。
その録音は全てモーツァルトの作品なのですが、それは「ドン・ジョヴァンニ」(コンサート形式)の成功によって注目されたことを考えれば、商業的にはそうならざるを得なかったのでしょう。

そして、そのモーツァルトの録音は多くの人々から好意を持って受け入れられ、さらに次のステップへと踏み出していくことになります。
おそらく、ここで紹介しているベートーベンの録音は、もしかしたらモーツァルトでの成功に対する「ご褒美」だったのかもしれません。
もちろん、指揮者であればメジャー・レーベルでベートーベンの交響曲を録音するというのは大きなステイタスになるでしょうし、デイヴィスもまたその録音を望んだことでしょう。

率直に言って、この録音はいわゆる「名盤探し」などでは話題になることはないでしょう。
しかし、この録音を聞いてふと私の脳裏を横切ったのは「のだめカンタービレ」で2軍のオーケストラであるSオケと千秋が演奏した交響曲の7番でした。そこには音楽をする喜びが満ちあふれていて、この7番のフィナーレ楽章はすっかり有名になりました。

そして、あまりにも手垢に満ちた表現で恐縮するのですが、このデイヴィスの録音にもそう言う音楽をする喜びがストレートに表れていて、まさに若鮎がピチピチと跳ねているような活きの良さと瑞々しさを感じさせてくれます。
おそらく、ベートーベンにしても構えは小さいかもしれませんが、こういう勢いと喜びに満ちた演奏は若いときでないと二度と実現できないものです。

聞いている、こちらの方までが嬉しくなってくるような素敵なベートーベンです。
そして、それと同じ事が少し前に録音したベートーヴェンの「フィデリオ」 序曲、メンデルスゾーンの「フィンガルの洞窟」、そしてブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」等にも言えます。
本当に、若さというのは、二度と現れない輝きをはなつものです

この演奏を評価してください。

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