ヴェルディ:弦楽四重奏曲(Verdi:String Quartet in E Minor)
イタリア四重奏団 1950年11月24日~29日録音(Quartetto Italiano:Recorded on November 24-29, 1950)
Verdi:String Quartet in E Minor [1.Allegro]
Verdi:String Quartet in E Minor [2.Andantino]
Verdi:String Quartet in E Minor [3.Prestissimo]
Verdi:String Quartet in E Minor [4.Scherzo fuga. Allegro assai mosso]
ナポリの余暇に四重奏曲を作曲しました

ヴェルディに弦楽四重奏曲なんてあったのかと驚いたのですが、聞いてみればなるほどどの楽章もまるでオペラの一場面を想起させるような音楽です。
しかし、だからと言って雑多の4つの音楽を並べただけでなく、ドイツの古典派音楽を意識した堅固なソナタ形式で書かれています。さらに、終楽章にフーガが用いられている点も、ヴェルディの古典的な技法への深い理解を示しています。
とはいえ、ヴェルディの作品群の中では鬼子とまではいわないものの、かなりの変わり種であることも事実です。
ヴェルディ自身はこの作品について以下のように評しています。
ナポリの余暇に四重奏曲を作曲しました。ある日の晩に、自分のホテルでこれを演奏してもらいましたよ。重要な曲と並べることはちっともしないで、しかも特に誰も招かずにね。お客は、私を訪ねて来るいつもの7 - 8人だけでしたな。この四重奏曲は美しいのか醜いのか。私には分かりません。私に分かるのは、それでもこれが弦楽四重奏曲だということです!
余暇に作曲したにしては驚きの完成度です。
そこにはナポリでの「アイーダ」の上演が、プリマドンナの病気により延期されて時間を持て余したという事情があったようです。ですから、ヴェルディは、暇つぶしとしてこの弦楽四重奏曲を作曲したと言っているのです。
後世のものとしては、プリマドンナがよくぞ病気になってくれたものだと感謝せずにはおれません。
いかに「暇つぶし」と言えども、そこにはオペラの巨匠ならではの個性が色濃く反映されています。
オペラで培われた劇的な表現力と豊かなカンタービレが各楽章にちりばめられています。特にチェロが朗々と歌い上げる部分などは、オペラのアリアを思わせます。
また、弦楽器それぞれが独立した個性を持ちつつ、対話するような構造で楽想が発展していくのもオペラ的です。
第1楽章 アレグロ(Allegro):
オペラ風の劇的な開始と、情熱的な旋律が印象的です。緊張感のある楽想が展開し、聴き手を引き込みます。
第2楽章 アンダンティーノ(Andantino)
チェロが美しい旋律を奏でるカンタービレが魅力的な楽章です。オペラの情景を思わせる、甘く切ない旋律が特徴です。
第3楽章 プレスティッシモ(Prestissimo)
スケルツォにあたる非常に速い楽章です。リズミカルで軽快なパッセージが、遊び心のある雰囲気を生み出しています。
第4楽章 スケルツォ・フーガ(Scherzo Fuga)
フーガの技法を用いた、精緻かつ躍動的なフィナーレです。
各楽器が絡み合いながら主題を発展させ、見事な構築美を聴かせます。ヴェルディの作曲技法の高さを示す楽章と言えるでしょう。
ヴェルディは、この作品を謙遜して「アマチュア向けの小品」と評していましたが、その音楽は高い完成度を誇り、ヴェルディの幅広い才能を証明しています。
オペラとは一味違う、洗練された技巧と豊かな叙情性を堪能できる貴重な作品です。
覇気あふれる若き時代の音楽
1945年に結成したときは「新イタリア四重奏団(Nuovo Quartetto Italiano)」という名称で活動を開始していましたが、1951年には「新(Nuovo)」を外して、「イタリア四重奏団(Quartetto Italiano)」となりました。
おそらく、結成当初は「イタリア四重奏団」では似たような他の団体と紛らわしかったのでしょう。しかし、1951年には「イタリア四重奏団」と改名しました。
この「新」を外す前に、Deccaで録音を残しています。私の知る限りでは、これが彼らの初録音だったようです。
1948年11月11日~20日録音
- ハイドン:弦楽四重奏曲第64番 ロ短調 Hob.3:64
- ボッケリーニ:弦楽四重奏曲 Op.6-1
1950年11月24日~29日録音
- シューマン:弦楽四重奏曲第2番 ヘ長調, Op.41-2
- ヴェルディ:弦楽四重奏曲
いささか中途半端な感じのするラインナップですが駆け出しのころはこんなものでしょうか。、
とはいえ、このような録音のオファーも来るようになったことが「やっていける、イタリア四重奏団といえば俺たちだ」という自信につながり、「新イタリア四重奏団」から「イタリア四重奏団」への改名につながったのでしょう。
さらに言えば、これらの録音を聞く限りでは、4つの楽器を対等に響かせる緻密なアンサンブルを志向していることは明らかで、その事も当初は意識して「新しい時代のカルテット」という意味合いも込めて「新イタリア四重奏団」としたのかもしれません。
とはいえ、50年代に入ればそのスタイルは主流になっていくのですから、今更「新イタリア四重奏団」でもないだろうという思いもあったのかもしれません。
やがて彼らはイタリアを代表するだけでなく、世界的なカルテットへと飛躍していき、ベートーベンやモーツァルトなどの全曲録音という大規模プロジェクトに取り組むようになっていきます。
そんな彼らの覇気あふれる若き時代の音楽がここにあります。
新しい時代にふさわしいアンサンブルだけでなく、歌うべきところは清潔感をもって歌い上げるのが聞いていてとても気持ちがいいです。
とりわけ、ヴェルディの弦楽四重奏曲のような変わり者とも相性が良かったようで、見事な演奏です。
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