ルーセル:セレナーデ Op.30(Roussel:Serenade in C major, Op.30)
パスキエ・トリオ:(Fl)ジャン・ピエール・ランパル (Harp)リリー・ラスキーヌ 1955年2月録音(Pasquier Trio:(Fl)Jean-Pierre Rampal (Harp)Lily Laskine Recorded on February, 1955)
Roussel:Serenade in C major, Op.30 [1.Allegr]
Roussel:Serenade in C major, Op.30 [2.Andante]
Roussel:Serenade in C major, Op.30 [3.Presto]
黄金のバランス

海軍士官として海で過ごした異色の経歴を持ちます。若くして両親を亡くし、当初は海軍兵学校に入学し、海軍士官としてインドや東南アジアへの航海を経験しました。
25歳で音楽に専念するために除隊し、スコラ・カントルムでヴァンサン・ダンディに師事しました。
当初は時代の流れとでもいうのでしょうか、ドビュッシーやラヴェルなどの印象主義的な影響から出発しています。しかし、次第に古典的で引き締まったものへと変わっていきました。
その背景には彼自身の理知的で規律正しい資質があるとともに、第1次大戦が決定的なターニングポイントとなりました。
彼は45歳という年齢で志願して戦地に向かい、輸送部隊の将校としてヴェルダンなどの最も激しい戦場を経験しました。その過酷な戦場の姿を前にして印象主義的な「繊細な色彩」や「夢見心地な雰囲気」はあまりに装飾的で享楽的だと感じざるを得ず、もっと強靭で、骨組みがしっかりとした音楽を書かなければならないという使命感に駆られたのです。
1920年代はバロックや古典派のような「簡潔さ」「明晰さ」「形式美」を重視し、現代的な感覚で再構築しようとした「新古典主義」が唱えられるようになるのですが、ルーセルはそういう流れに乗ったのではなく、自らの使命感と職人気質が合致した結果でした。
ですから、ルーセルを「印象主義」から「新古典主義」へとp転身した作曲家という言い方は、外見的にはその通りであっても、なんだか彼の本意をくみ取れていないような気がするのです。
戦前のルーセルが「香りを描く詩人」だったとすれば、戦後の彼は「鋼鉄を組み立てる建築家」へと変貌したのです。
セレナーデ Op.30
この作品の最大の魅力は、その色彩豊かな編成にあります。
弦楽三重奏にフルートとハープを加えることで、オーケストラのような多彩な響きと室内楽らしい透明感を両立させています。さらに、そう言う音の色彩を大切にしながら、印象主義的な音楽から脱して、音楽全体はしっかりとした対位法で構成されています。
18世紀のセレナーデの伝統を、20世紀の感性で再構築しているという点では「新古典主義」的な音楽です。
- 第1楽章 Allegro
軽快でリズミカル。
ハープのアルペジオに乗ってフルートと弦楽器が快活にダイアローグを交わします。
- 第2楽章 Andante
瞑想的で非常に美しい楽章。
ルーセル特有の少し「苦み」のある抒情性と、フルートの長い旋律が印象的です。
- 第3楽章 Presto
祝祭的なフィナーレ。
複雑な変拍子が駆使され、ルーセルの真骨頂である「躍動するリズム」を存分に楽しめます。
どこか東洋的な雰囲気を感じさせつつ、フランス的なエスプリに富んでおり、大戦間のフランス音楽の「黄金のバランス」を象徴する一曲です。
ルーセル:弦楽三重奏曲, Op.58
「弦楽三重奏曲」は、1937年に作曲されたルーセルの遺作です。
本来は4楽章構成を予定していたと言われていますが、完成したのは3楽章までです。しかし、その3つの楽章だけで完璧な均衡を保っています。
一音の無駄もない極めて濃密な対位法で書かれていて、セレナーデ等に見られた華やかな色彩感は影を潜め、音楽の「骨格」そのものの美しさを提示しています。
常設団体ならではの魅力
それにしても「弦楽三重奏曲と言うのは不思議な演奏形態です。見た目には世間に山ほど存在する弦楽四重奏曲からヴァイオリンが一つぬけただけなのですが、音楽がつくり出す様相は随分と変わってしまいます。
もちろん、ヴァイオリンが一つぬけるのですからその分響きは薄くなります。しかし、そのマイナスと引き替えに響きの透明感は高まります。
あのモーツァルトの「ディヴェルティメント(弦楽三重奏曲) 変ホ長調, K.563」が「神品」と言われるのは、その透明感によってそれぞれの楽器の絡み合い、墓妙なフレーズの移ろいやダイナミズムの変化などが聞き手に深い集中力を要求するからでしょう。
しかし、それは裏返せば、演奏する側に、そう言う聞き手の高い集中力を十分に納得させるだけの音楽性と精緻な呼吸の共有が必要です。そう、「精緻なアンサンブル」ではなくて「精緻な呼吸の共有」です。
おそらく、楽譜通りに縦のラインが揃っているだけでは話にはなりません。
もちろん、緊張度の高い精緻なアンサンブルが必要なことは言うまでもないのですが、ここぞと言うところで何か遊び心のような部分が出てこないと三重奏曲の本当の魅力は見えてこないのです。
ですから、ハイフェッツ、フォイアマン、プリムローズのような腕利きの三人が揃っただけではどうしても不満な部分が残るのです。やはり、常設の、いつも顔をあわしているメンバーでなければ表現し得ないものがあります。
パスキエ・トリオはその名の通りパスキエ3兄弟によって1927年に結成された室内楽団です。
彼らは父親はヴァイオリニスト、母親はピアニストという音楽家の家庭で育ち、長男のピエール・パスキエがヴィオラ、次男のジャン・パスキエがヴァイオリン、三男のエティエンヌ・パスキエがチェロという弦楽三重奏団です。
言うまでもなく、「弦楽三重奏」というスタイルは作品に恵まれているスタイルではありません。おそらく、今後も「弦楽三重奏」というグループが常設で存在することはまずないでしょう。
「弦楽三重奏」というスタイルは作品に恵まれているスタイルではありません。どうしても、そこにピアノとかフルート、オーボエなどが加わらないとプログラムが広がりません。
そこで、彼らはゲストとしてピアニストのマルグリット・ロン、フルーティストのランパルなどと組んで演奏会や録音を活発に行うことになります。
もちろん、それはそれで魅力的な演奏も多いのですが、やはり彼らならではの魅力が溢れているのは「弦楽三重奏」です。
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