アルビノーニ:オーボエ協奏曲 ニ長調, OP.7 No.6(Albinoni:Oboe Concerto in D major, Op.7 No.6)
レナート・ファッサーノ指揮:(Ob)レナート・ザンフィーニ ローマ合奏団 1958年発行(Renato Fasano:(Ob)Renato Zanfini Virtuosi Di Roma Published in 1958)
Albinoni:Oboe Concerto in D major, Op.7 No.6 [1.Allegro]
Albinoni:Oboe Concerto in D major, Op.7 No.6 [2.Adagio]
Albinoni:Oboe Concerto in D major, Op.7 No.6 [3.Allegro]
歌うような表現力を最大限に引き出した
アルビノーニは、イタリアで最初にオーボエのための協奏曲を出版した作曲家の一人として知られています。
当時、まだ新しい楽器だったオーボエの持つ「歌うような表現力」を最大限に引き出しました。
「12の5声の協奏曲集 作品7」(1715年出版)は「ソロ・オーボエのための協奏曲」が3曲、「2本のオーボエのための協奏曲」が4曲、計7曲のオーボエ協奏曲が含まれています。
また、作品7は、「弦楽(ヴァイオリン)協奏曲」→「2本のオーボエ協奏曲」→「独奏オーボエ協奏曲」という3曲1セットのサイクルが4回繰り返される規則的な構成になっています。
全12曲の構成をリスト化すると以下のようになります。
第1群:No.1 (弦楽) / No.2 (2本オーボエ) / No.3 (独奏オーボエ)
第2群:No.4 (弦楽) / No.5 (2本オーボエ) / No.6 (独奏オーボエ)
第3群:No.7 (弦楽) / No.8 (2本オーボエ) / No.9 (独奏オーボエ)
第4群:No.10 (弦楽) / No.11 (2本オーボエ) / No.12 (独奏オーボエ)
アルビノーニは、この作品7の成功を受けて、1722年にさらに洗練された「12の協奏曲集 作品9」を出版することになります。
オーボエ協奏曲 ニ長調, OP.7 No.6
第1楽章:Allegro(アレグロ)調性: ニ長調拍子: 4/4拍子
輝かしく開放的なニ長調の響きで始まる、躍動感に満ちた楽章です。
弦楽合奏による快活な主題(リトルネッロ)で幕を開けます。独奏オーボエが登場すると、細かく軽快な16分音符のパッセージを華やかに演奏します。
オーボエのテクニカルなソロと、オーケストラの掛け合いが心地よい緊張感を生み出します。
第2楽章:Adagio(アダージョ)調性: ロ短調(または関係調)拍子: 3/4拍子
アルビノーニの真骨頂である、深く切ない哀愁を帯びた緩端楽章です。
前後の楽章の華やかさとは対照的に、静かで叙情的な世界観が広がります。通奏低音と弦楽器が刻むシンプルな和音の上で、オーボエが人間の歌声のように美しく、物憂げなメロディを朗々と歌い上げます。
バロック音楽特有の「引き算の美学」が感じられる、極めて高貴でエモーショナルな名曲です。
第3楽章:Allegro(アレグロ)調性: ニ長調拍子: 3/8拍子(または12/8拍子などの複合拍子的な躍動感)
軽快なステップを踏むような、バロック・ダンス風のリズムが特徴のフィナーレです。
3拍子系の小気味よいテンポで、全曲を明るく締めくくります。オーボエと第1ヴァイオリンが激しく旋律を追いかけ合う、対位法的なアプローチが随所に見られます。
息つく暇もないほどスピーディーで華やかなオーボエのトリルや音階が、聴き手に爽快感を与えます。
モダン楽器によるバロック演奏の信念を曲げず
レナート・ファッサーノはヴィヴァルディを中心に、コレッリ、ペルゴレージ、アルビノーニ、ガルッピなど、18世紀イタリアの作曲家を現在によみがえらせた功労者です。
とはいえ、20世紀半ばの「バロック音楽復興」は、ファッサーノ以外にも世界各地の指揮者や合奏団が牽引しました。
今さらという感じですが、主なものをあげていくと以下のようになるでしょうか。
イ・ムジチ合奏団
指揮者をおかないのが特徴ですが、それを補って余りあるアンサンブル能力があったようです。
ファッサーノのような劇的・情熱的な起伏よりも、美しく磨き上げられた均一なアンサンブルを重視していました。
カール・リヒター:ミュンヘン・バッハ管弦楽団
J.S.バッハを中心に、厳格なリズムと深い精神性を追求するのが持ち味でした。
イタリアの「世俗的・劇的な愉しみ」に対し、リヒターは「厳格なスコラ学・宗教的畏怖」に基づく厳しくも重厚な演奏を目指しました。。
ジャン=フランソワ・パイヤール:パイヤール室内管弦楽団
フランス・バロックの復興に貢献しました。洗練された美しい音色がアドバンテージでしょうか。
ファッサーノが「歌(カンタービレ)」を重視したのに対し、パイヤールは「宮廷的な気品とステップ)」を重視していました。
ネヴィル・マリナー:アカデミー室内管弦楽団
ファッサーノのような「土着的なイタリアの情熱」とは異なり、イギリスらしい冷静で洗練された機能美が特徴です。
それらに対して、ファッサーノの強みは、ヴィヴァルディなどの協奏曲を「器楽によるオペラ(歌劇)」として捉えていた点です。
当時、ドイツのバロック演奏が「緻密な建築物」のようにガッチリと演奏されていたのに対し、ファッサーノはまるでイタリア・オペラのアリアを歌うかのように、弦楽器やオーボエに豊かな感情を込めさせました。
また、彼は優れた音楽学者でもあり、自ら古い楽譜(手稿譜)を発掘・校訂していました。
しかし、演奏自体は学術的で冷たいものにはならず、むしろ「現代の聴衆がいかに興奮するか」という実践的な音楽づくりを行いました。
1970年代以降、「ピリオド演奏が台頭バロック復興の主流になっていく中でも、ファッサーノは1979年に亡くなるまで、モダン楽器によるバロック演奏の信念を曲げませんでした。
そして注目すべきは、古い奏法の知識を十分に理解した上で、「現代の聴衆の耳に最も美しく響き、作品の生命力を伝えるのは、完成されたモダン楽器と、イタリアの伝統的なカンタービレ(歌心)である」と確信していた事です
その様なレナート・ファッサーノが結成し、終生支え続けたのが「ローマ合奏団(I Virtuosi di Roma)」でした。
基本は弦楽合奏とチェンバロ(またはピアノ)の10数名からなる編成ですが、曲目に応じてフルートやオーボエ、ファゴットなどの超一流の管楽器奏者が加わりました。
ローマ合奏団(前身のコレジウム・ムジクス・イタリクムを含む)のメンバーは、単なる合奏要員ではなく、全員がイタリア各地の音楽院教授や、主要オーケストラの首席奏者を務める「名人(ヴィルトゥオーゾ)」の集まりでした。
彼らは合奏をしつつ、曲ごとに代わる代わるソリストを務めました。
主要メンバーは以下の通りです。
ルイージ・フェッロ(Luigi Ferro / ヴァイオリン)
楽団の精神的支柱であり、メンバーの多くを指導したベテラン。彼の弾くヴィヴァルディの「四季」などのソロは、格調高さと情熱を兼ね備えていました。
グイド・モッツァート(Guido Mozzato / ヴァイオリン)
フェッロと並ぶ楽団の看板ヴァイオリニスト。極めて美しく官能的な音色で知られ、多くの録音でソロを務めました。
フランコ・グッリ(Franco Gulli / ヴァイオリン)
後に世界的なソロ・ヴァイオリニストとして大成する名手。若き日にこの楽団に参加し、その洗練された技巧でアンサンブルを支えました。
レナート・ザンフィニ(Renato Zanfini / オーボエ)
ヴィヴァルディやマルチェッロのオーボエ協奏曲で、驚異的な歌心とテクニックを披露した伝説の名手です。
オルネッラ・プリーティ・サントリクィード(Ornella Puliti Santoliquido / ピアノ・チェンバロ)
イタリアの高名なピアニスト(サントリクィード三重奏団の主宰者)。通奏低音や鍵盤協奏曲のソリストとして色を添えました。
よせられたコメント 2026-09-01:BWK レナート・ファザーノ&ローマ合奏団と記憶していました。
本当に懐かしい。
中学1年生の時、音楽の授業で初めてヴィバルディの「四季」を聞き「春」の冒頭のメロディーを何度も口ずさんだことか!
その時まさに、レナート・ファザーノ&ローマ合奏団が来日していて、NHKのTVに出演してこの「春」を演奏しているのを見て喜んだものでした。時に1972年の事です。
ファザーノのとても嬉しそうにニコニコして指揮をしていた姿が忘れられません。
ただ後年、レコードで「四季」を聞いた時は意外と甘さの少ないガッチリとした演奏だったことがあのTVとの印象と違いビックリしました。
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