クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

リスト:交響詩「プレリュード」

フルトヴェングラー指揮 ウィーンフィル 1954年3月3日録音





Liszt:Les Preludes


人生は死への前奏曲

交響詩という形式はリストの手になるものと言われています。それだけに「フン族の戦争」などというけったいな題名のついた作品をはじめとして実にたくさん作曲しています。しかし、その殆どはめったに演奏されることはないようで、録音もあまりお目にかかりません。そんな中で、唯一ポピュラリティを獲得しているのがこの「プレリュード(前奏曲)」です。
 これはフランスの詩人ラマルティーヌの「詩的瞑想録」に題を得たものだと言われています。ものの本によると(^^;、リストはスコアの扉にこのように記しているそうです。
 「人生は死への前奏曲でなくて何であろうか。愛は全ての存在にとって魅惑的な朝である。しかし運命は冷酷な嵐によって青春の幸福を必ず破壊してしまう。傷つけられた魂は孤独な田園生活にその慰めを見いだすが、人はその静けさの中に長くいることに耐えられない。トランペットの警告がなりわたるとき、すべての人は自分自身の意義を求めて再び闘いの中心に飛び込んでゆく」

 こう言うのを読むと、何か人生で辛いことがあったのかな、などと思ってしまいますが、調べてみるとこれが作曲されたときは、2番目の愛人となったヴィトゲンシュタイン侯爵夫人との同棲生活に入って、もっとも幸せの絶頂にいたころなんですね。でも、考えてみるとこれは当然のことで、不幸のどん底にいる人が「人生は死への前奏曲である・・・・」なんて言って曲作りをするなんて不可能です。
 自分がそういう不幸とは一番遠いところにいるからこそ、逆にこのようなテーマで曲作りが出きるのだと言えます。そして同時に、こういう大仰な物言いの中から、いわゆる「ロマン派的な価値観」が垣間見られるような気がします。

フルトヴェングラーの最高傑作の一つと言われれば異を唱えたくなるでしょう。


ずっと前にアップしていたと思っていたのですが、いわゆる「取りこぼし」ですね(^^;
この録音はよく知られているように、某評論家(いや、こういう言い方はやめましょう。宇野氏です。)が「演奏、録音共にフルトヴェングラーのレコード中、最高傑作の一つ」と絶賛したことから、日本国内での評価が非常に高い演奏です。もちろん、多くの国でもこれほどの大絶賛はなくてもそれなりに評価され、そのおかげでリストの交響詩の中では唯一と言っていいほどにコンサートプログラムの中に生き残ることができました。
その意味では、もしもこの録音がなければ、リストが交響詩というスタイルを生み出したという知識は、本当にただの知識になってしまっていたかもしれません。

ただし、皮肉なことに、フルトヴェングラーはリストの交響詩というものを全く評価していませんでした。ですから、この作品を録音することには全く乗り気ではなかったと伝えられています。そんな乗り気でないフルトヴェングラーを押し切ったのが、EMIの大御所であったレッグでした。
このあたりの嗅覚は大したもので、フルトヴェングラーの演奏様式とこの作品が持っている仰々しさが上手くマッチングすると見抜いたのでしょう。そして、結果ははるか極東の島国の評論家にまで多大なインパクトを与えるような演奏になったのですから、その慧眼たるや見事なものです。

ただし、宇野氏の絶賛はひとまず脇に置いてじっくりと音楽と向き合ってみれば、果たしてフルトヴェングラーの最高傑作と言えるかどうかはいささか疑問はあります。
確かに、一つ一つのフレーズは丹念に、かつ雄大に歌い上げられていて、そのスケールの大きさは素晴らしいのですが、どこか空疎な思いが聴いた後に残ります。
ただし、その責の大部分はフルトヴェングラーではなくて、作曲家のリストに帰せられる性質のものでしょう。
ですから、この作品の演奏としては実に素晴らしいものだとは思うのですが、これを持ってフルトヴェングラーの最高傑作の一つと言われれば、フルトヴェングラー自身も異を唱えたくなるでしょう。

なお、付け足しになりますが、どうしてフルトヴェングラーの録音ってこんなにクオリティが低いのでしょう。同時期のデッカの録音などはモノラルであってももっとクリアに演奏をとらえています。RCAなんかだと、この年からステレオ録音を開始しています。
実にもって残念な話です。

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