ベートーベン:交響曲第8番
トスカニーニ指揮 NBC交響楽団 1952年11月10日録音
Beethoven:交響曲第8番「第1楽章」
Beethoven:交響曲第8番「第2楽章」
Beethoven:交響曲第8番「第3楽章」
Beethoven:交響曲第8番「第4楽章」
谷間に咲く花、なんて言わないでください。
初期の1番・2番をのぞけば、もっとも影が薄いのがこの8番の交響曲です。どうも大曲にはさまれると分が悪いようで、4番の交響曲にもにたようなことがいえます。
しかし、4番の方は、カルロス・クライバーによるすばらしい演奏によって、その真価が多くの人に知られるようになりました。それだけが原因とは思いませんが、最近ではけっこうな人気曲になっています。
たしかに、第一楽章の瞑想的な序奏部分から、第1主題が一気にはじけ出すところなど、もっと早くから人気が出ても不思議でない華やかな要素をもっています。
それに比べると、8番は地味なだけにますます影の薄さが目立ちます。
おまけに、交響曲の世界で8番という数字は、大曲、人気曲が多い数字です。
マーラーの8番は「千人の交響曲」というとんでもない大編成の曲です。
ブルックナーの8番についてはなんの説明もいりません。
シューベルトやドヴォルザークの8番は、ともに大変な人気曲です。
8番という数字は野球にたとえれば、3番、4番バッターに匹敵するようなスター選手が並んでいます。そんな中で、ベートーベンの8番はその番号通りの8番バッターです。これで守備位置がライトだったら最低です。
しかし、ユング君の見るところ、彼は「8番、ライト」ではなく、守備の要であるショートかセカンドを守っているようです。
確かに、野球チーム「ベートーベン」を代表するスター選手ではありませんが、玄人をうならせる渋いプレーを確実にこなす「いぶし銀」の選手であることは間違いありません。
急に話がシビアになりますが、この作品の真価は、リズム動機による交響曲の構築という命題に対する、もう一つの解答だと言う点にあります。
もちろん、第1の解答は7番の交響曲ですが、この8番もそれに劣らぬすばらしい解答となっています。ただし、7番がこの上もなく華やかな解答だったのに対して、8番は分かる人にしか分からないと言う玄人好みの作品になっているところに、両者の違いがあります。
そして、「スター指揮者」と呼ばれるような人よりは、いわゆる「玄人好みの指揮者」の方が、この曲ですばらしい演奏を聞かせてくれると言うのも興味深い事実です。
そして、そう言う人の演奏でこの8番を聞くと、決してこの曲が「小粋でしゃれた交響曲」などではなく、疑いもなく後期のベートーベンを代表する堂々たるシンフォニーであることに気づかせてくれます。
素晴らしい音質でよみがえっています。
ベートーベンの8番というのは、ともすれば、ウィーン風の穏やか小品と見られがちな作品ですが、それは、イッセルシュテットの録音をこの作品のスタンダード盤のように褒め称えてきた評論家が悪いのです。実際にスコアを眺めてみればそんな甘いものでないことはすぐに了解できるはずです。(例えば、第1楽章のフォルテ記号の嵐!!)
本当は5番や7番よりも激しい部分を持った作品なのですが、そういう激しさが、トスカニーニの棒にかかるとまざまざと私たちの前に立ち現れてきます。そして、その様な激しさだけでなく、80才をはるかにこえた人とはとうてい信じがたいほどの、一部のすきも緩みもない演奏です。それでいながら、響きはどこまでも強靱でありながらしなやかさを全くしなっていません。
本当に素晴らしい演奏です。
さらに、音質に関しても、52年のモノラル録音とすれば最上の部類に属するものではないでしょうか。かつての乾いてギスギスした音質の面影は全くありません。
もしも、トスカニーニの最晩年の演奏がこのような音質で提供されていれば、彼に対する評価は全く違ったものになったはずです。
よせられたコメント 2009-10-27:シューベルティアン フルヴェンかトスカニーニか、こういうのはよくある論題でしょうが、私としては断然トスカニーニです。彼の棒は磨き抜かれた鏡のように曲の本質を映し出します。この上なく鮮明なその像を「解釈」するのは無意味でしょう。私はこれを聞いて以来、ほかの演奏家のものをまったく聞きません。まさにベートーベンと「出会う」ことができたと思っています。
もっとも、シューベルト以降の作曲家の作においてこの巨匠がうまくやっているとは思えない。おそらく曲の本質に関わるものであろう幻想美を、彼は「よけいなもの」として、鏡を曇らすだけのものとして拭き取っています。だから華美な曲もその骨組みの弱さが露出されてしまったようなもので、必ずしも作曲家の「心の友」とはなっていないようです。彼が本当に心のなかで握手することができたのは、ベートーベンとメンデルスゾーンだけではなかったかとも思われます。
私は古典派・第一主義で、ロマン的音楽をぜんぜん聞かないもので、こういったトスカニーニのやり方に賛成です。彼は野蛮で独裁的なイメージの強い人ではありますが、きっとそれは仮面で、実のところは話の分かるやさしいおじさんだったろうと思います。なんとなくそんな気がするのです。彼が心ならずもかぶらざるをえなかった仮面は、ベートーベンの身に付けたそれと酷似しているように思われます。 2013-06-30:ベジタリアン 8番はトスカニーニと相性がいいと感じました。独特の歯切れの良いフレージングがぴったりだと思います。ところどころでびっくりするようなとつとつとした表情がありますが、聴きなれるとあまり違和感がありません。今までのところでは一番好きな演奏です。
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