ベートーベン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」
バーンスタイン指揮 ニューヨークフィル 1963年5月13日録音
Beethoven:Symphony No6 in F major Op.68"Pastoral" [1st movement]
Beethoven:Symphony No6 in F major Op.68"Pastoral" [2nd movement]
Beethoven:Symphony No6 in F major Op.68"Pastoral" [3rd movement]
Beethoven:Symphony No6 in F major Op.68"Pastoral" [4th movement]
Beethoven:Symphony No6 in F major Op.68"Pastoral" [5th movement]
標題付きの交響曲
よく知られているように、この作品にはベートーベン自身による標題がつけられています。
第1楽章:「田園に到着したときの朗らかな感情の目覚め」
第2楽章:「小川のほとりの情景」
第3楽章:「農民の楽しい集い」
第4楽章:「雷雨、雨」
第5楽章:「牧人の歌、嵐のあとの喜ばしい感謝の感情」
また、第3楽章以降は切れ目なしに演奏されるのも今までない趣向です。
これらの特徴は、このあとのロマン派の時代に引き継がれ大きな影響を与えることになります。
しかし、世間にはベートーベンの音楽をこのような標題で理解するのが我慢できない人が多くて、「そのような標題にとらわれることなく純粋に絶対的な音楽として理解するべきだ!」と宣っています。
このような人は何の論証も抜きに標題音楽は絶対音楽に劣る存在と思っているらしくて、偉大にして神聖なるベートーベンの音楽がレベルの低い「標題音楽」として理解されることが我慢できないようです。ご苦労さんな事です。
しかし、そういう頭でっかちな聴き方をしない普通の聞き手なら、ベートーベンが与えた標題が音楽の雰囲気を実にうまく表現していることに気づくはずです。
前作の5番で人間の内面的世界の劇的な葛藤を描いたベートーベンは、自然という外的世界を描いても一流であったと言うことです。同時期に全く正反対と思えるような作品を創作したのがベートーベンの特長であることはよく知られていますが、ここでもその特徴が発揮されたと言うことでしょう。
またあまり知られていないことですが、残されたスケッチから最終楽章に合唱を導入しようとしたことが指摘されています。
もしそれが実現していたならば、第五の「運命」との対比はよりはっきりした物になったでしょうし、年末がくれば第九ばかり聞かされると言う「苦行(^^;」を味わうこともなかったでしょう。
ちょっと残念なことです。
こんなにも見事に作品の構造を描き出せるんだよ
ベートーベンの交響曲に対して、バーンスタインは距離を置いているように聞こえます。
しかし、そんなことを考えているときにふと気づいたのは、「そうだ、バーンスタインには作曲家というもう一つの顔があったんだ」という事実です。
今では、バーンスタインと言えば20世紀を代表する偉大な指揮者というイメージが強いのですが、聞くところによれば、60年代の初め頃は「あのウェストサイドストーリーを書いたバーンスタインという作曲家は指揮もやっているそうだ」という文脈で語られることが多かったようなのです。
そう考えると、どちらかと言えば作品の構造をすっきりと描いて見せた60年代のベートーベンの交響曲全集は、「僕は作曲家だから、こんなにも見事に作品の構造を描き出せるんだよ」というバーンスタインのもう一つの顔、もう一つの我が儘が出た演奏だと言えるような気がしました。
ただし、作品の持つ構造をすっきりと描き出すだけでは、ベートーベンという巨大な存在を描ききることができないというのが辛いところです。
そう言う意味では、さすがにこれに関しては晩年のウィーンフィルとの全集を選びたくなります。
ニューヨークフィルとの録音では音楽は沸き立っているので、その若々しい魅力は否定しないのですがどこか一本調子の単純さを感じてしまいます。それたいして、ウィーンフィルとの全集では明らかに音楽はうねっています。
どちらも、「俺の音楽を聴け!」という「俺さま症候群的な音楽」であることは同様なのですが、押しつけてくる音楽の質が随分違います。
そう言う意味では、この時代の彼の特徴だった「歌うところは徹底的にねっとり」と、そして追い込むときは「怒濤の寄り身」という、もう一つの「俺さま」を出してくれた方が面白かったのに・・・などと無責任なことをほざきたくなります。((この第2楽章などはかなり歌っていますが・・・、他でも今あ風にやってくれたら面白かったのに)
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