ベートーベン: 交響曲第5番 ハ短調 作品67 「運命」
バーンスタイン指揮 ニューヨークフィル 1961年9月25日録音
Beethoven:Symphony No5 in C minor Op.67 [1st movement]
Beethoven:Symphony No5 in C minor Op.67 [2nd movement]
Beethoven:Symphony No5 in C minor Op.67 [3rd movement]
Beethoven:Symphony No5 in C minor Op.67 [4th movement]
極限まで無駄をそぎ落とした音楽
今更何も言う必要がないほどの有名な作品です。
クラシック音楽に何の興味がない人でも、この作品の冒頭を知らない人はないでしょう。
交響曲と言えば「運命」、クラシック音楽と言えば「運命」です。
この作品は第3番の交響曲「エロイカ」が完成したすぐあとに着手されています。スケッチにまでさかのぼるとエロイカの創作時期とも重なると言われます。(1803年にこの作品のスケッチと思われる物があるそうです。ちなみにエロイカは1803?4年にかけて創作されています。)
しかし、ベートーベンはこの作品の創作を一時的に中断をして第4番の交響曲を作曲しています。これには、とある伯爵未亡人との恋愛が関係していると言われています。
そして幸か不幸か、この恋愛が破局に向かう中でベートーベンはこの運命の創作活動に舞い戻ってきます。
そういう意味では、本格的に創作活動に着手されたのは1807年で、完成はその翌年ですが、全体を見渡してみると完成までにかなりの年月を要した作品だと言えます。そして、ベートーベンは決して筆の早い人ではなかったのですが、これほどまでに時間を要した作品は数えるほどです。
その理由は、この作品の特徴となっている緊密きわまる構成とその無駄のなさにあります。
エロイカと比べてみるとその違いは歴然としています。もっとも、その整理しきれない部分が渾然として存在しているところにエロイカの魅力があるのですが、運命の魅力は極限にまで整理され尽くしたところにあると言えます。
それだけに、創作には多大な苦労と時間を要したのでしょう。
それ以後の時代を眺めてみても、これほどまでに無駄の少ない作品は新ウィーン楽派と言われたベルクやウェーベルンが登場するまではちょっと思い当たりません。(多少方向性は異なるでしょうが、・・・だいぶ違うかな?)
それから、それまでの交響曲と比べると楽器が増やされている点も重要です。
その増やされた楽器は第4楽章で一気に登場して、音色においても音量においても今までにない幅の広がりをもたらして、絶大な効果をあげています。
これもまたこの作品が広く愛される一因ともなっています。
こんなにも見事に作品の構造を描き出せるんだよ
ベートーベンの交響曲に対して、バーンスタインは距離を置いているように聞こえます。
しかし、そんなことを考えているときにふと気づいたのは、「そうだ、バーンスタインには作曲家というもう一つの顔があったんだ」という事実です。
今では、バーンスタインと言えば20世紀を代表する偉大な指揮者というイメージが強いのですが、聞くところによれば、60年代の初め頃は「あのウェストサイドストーリーを書いたバーンスタインという作曲家は指揮もやっているそうだ」という文脈で語られることが多かったようなのです。
そう考えると、どちらかと言えば作品の構造をすっきりと描いて見せた60年代のベートーベンの交響曲全集は、「僕は作曲家だから、こんなにも見事に作品の構造を描き出せるんだよ」というバーンスタインのもう一つの顔、もう一つの我が儘が出た演奏だと言えるような気がしました。
ただし、作品の持つ構造をすっきりと描き出すだけでは、ベートーベンという巨大な存在を描ききることができないというのが辛いところです。
そう言う意味では、さすがにこれに関しては晩年のウィーンフィルとの全集を選びたくなります。
ニューヨークフィルとの録音では音楽は沸き立っているので、その若々しい魅力は否定しないのですがどこか一本調子の単純さを感じてしまいます。それたいして、ウィーンフィルとの全集では明らかに音楽はうねっています。
どちらも、「俺の音楽を聴け!」という「俺さま症候群的な音楽」であることは同様なのですが、押しつけてくる音楽の質が随分違います。
そう言う意味では、この時代の彼の特徴だった「歌うところは徹底的にねっとり」と、そして追い込むときは「怒濤の寄り身」という、もう一つの「俺さま」を出してくれた方が面白かったのに・・・などと無責任なことをほざきたくなります。
よせられたコメント 2015-03-09:ヨシ様 これも1日間で録音していますね。おそらくほとんどリハーサル無しに一発録りに近い形で、編集もほとんど無しに録音したのかも知れません。この点が同じアメリカのオケでも、クリーブランド管弦楽団とは大きな違いでしょう。特にセルの時代は、それこそリハーサル無し、編集無しでも完璧に演奏していたと思います。
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