ベートーベン:交響曲第6番「田園」
ジョージ・セル指揮 ニューヨークフィル 1955年12月5日録音
Beethoven:交響曲第6番「田園」 「第1楽章」
Beethoven:交響曲第6番「田園」 「第2楽章」
Beethoven:交響曲第6番「田園」 「第3楽章」
Beethoven:交響曲第6番「田園」 「第4楽章」
Beethoven:交響曲第6番「田園」 「第5楽章」
標題付きの交響曲

よく知られているように、この作品にはベートーベン自身による標題がつけられています。
第1楽章:「田園に到着したときの朗らかな感情の目覚め」
第2楽章:「小川のほとりの情景」
第3楽章:「農民の楽しい集い」
第4楽章:「雷雨、雨」
第5楽章:「牧人の歌、嵐のあとの喜ばしい感謝の感情」
また、第3楽章以降は切れ目なしに演奏されるのも今までない趣向です。
これらの特徴は、このあとのロマン派の時代に引き継がれ大きな影響を与えることになります。
しかし、世間にはベートーベンの音楽をこのような標題で理解するのが我慢できない人が多くて、「そのような標題にとらわれることなく純粋に絶対的な音楽として理解するべきだ!」と宣っています。
このような人は何の論証も抜きに標題音楽は絶対音楽に劣る存在と思っているらしくて、偉大にして神聖なるベートーベンの音楽がレベルの低い「標題音楽」として理解されることが我慢できないようです。ご苦労さんな事です。
しかし、そういう頭でっかちな聴き方をしない普通の聞き手なら、ベートーベンが与えた標題が音楽の雰囲気を実にうまく表現していることに気づくはずです。
前作の5番で人間の内面的世界の劇的な葛藤を描いたベートーベンは、自然という外的世界を描いても一流であったと言うことです。同時期に全く正反対と思えるような作品を創作したのがベートーベンの特長であることはよく知られていますが、ここでもその特徴が発揮されたと言うことでしょう。
またあまり知られていないことですが、残されたスケッチから最終楽章に合唱を導入しようとしたことが指摘されています。
もしそれが実現していたならば、第五の「運命」との対比はよりはっきりした物になったでしょうし、年末がくれば第九ばかり聞かされると言う「苦行(^^;」を味わうこともなかったでしょう。
ちょっと残念なことです。
全集のおまけ
ずいぶん古い話です。
いつものように日本橋のとある中古レコード屋にふらりと立ち寄ってみると、セル&クリーブランドによるベートーベン交響曲全集が棚に並んでいます。レコード時代の全集というのは本当に立派なもので、この全集も実に豪華なボックスに収められていました。ところが値札を見るとわずか3000円!!
うーん、この全集がたった3000円などと言う値札をつけられてここにさらされているというのは熱狂的なセルファン(当時のユング君・・・今はいろんな人に対してかなりニュートラルな立場をとれるようになりました。セルの指揮といえども、いいものばかりではない、と言う至極真っ当なことが素直に受けいられるようにはなっています。)にとっては耐え難いことなので、すぐに3000円也を支払って我が家に引き取ってきました。
そして、帰ってから中味を確かめると、おまけとしてベートーベンの6番がもう一枚納められていました。
それが、この1955年にニューヨークフィルとのコンビで録音された「田園」でした。
そう言えば、レコード時代の全集にはボーナス盤と言って、こういうレアな録音が入っていることがよくありました。
当時のユング君にとって、このレアな録音がゲットできただけで3000円の元は十分に取れたと思える値打ちがありました。
そして、気がつけばこの田園もパブリックドメインの仲間入りをするようになりました。
演奏はオケが変われどもセルの音楽の本質は変わるはずもなく、実にバランスの良い見通し抜群のベートーベンです。ただ、クリーブランドと較べるとオケの響きが少しばかり暖色系でふくよかなところが興味深いです。
同じモノラル録音でも、ギリギリまでに締め上げたクリーブランドとのコンビで録音した運命などと較べるとずいぶん雰囲気が違います。
やはり、セルにってのベストパートナーはこの時期からすでにクリーブランドだったと言うことでしょう。
よせられたコメント
2009-03-24:joshua
- セルの田園は、「千夜一曲」の著者、宮城谷氏も推挙するところです。
この曲、フルヴェンの根暗な演奏(52年VPO)も気に入ってますが、
安定感ではセルのほうかも。予定調和の音楽、それは有り得ない共産主義=終末論的楽観論
であるのかもしれないですね。名人があちこちで腕を披露してやろうと、それこそ腕をまくって演奏しているニュウーヨークは、予定調和の対極。では、クリーブランドの人工美がグールド風に納得いくのかもしれません。音楽は理不尽でも構わないのですから。
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