モーツァルト:セレナード第13番 ト長調 K.525 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
ライナー指揮 シカゴ交響楽団 1954年12月4日録音
Mozart:セレナード第13番 ト長調 K.525 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」 「第1楽章」
Mozart:セレナード第13番 ト長調 K.525 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」 「第2楽章」
Mozart:セレナード第13番 ト長調 K.525 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」 「第3楽章」
Mozart:セレナード第13番 ト長調 K.525 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」 「第4楽章」
小さい枠ではあるが、それ自身で完結した小宇宙

この作品は驚くほど簡潔でありながら、一つの完結した世界を連想させるものがあります。
「音符一つ変えただけで音楽は損なわれる」とサリエリが感嘆したモーツァルトの天才をこれほど分かりやすく提示してくれる作品は他には思い当たりません。
おそらくはモーツァルトの全作品の中では最も有名な音楽の一つであり、そして、愛らしく可愛いモーツァルトを連想させるのに最も適した作品です。
ところが、それほどまでの有名作品でありながら、作曲に至る動機を知ることができないという不思議さも持っています。
モーツァルトはプロの作曲家ですから、創作には何らかのきっかけが存在します。
それが誰かからの注文であり、お金になる仕事ならモーツァルトにとっては一番素晴らしい動機だったでしょう。あるいは、予約演奏会に向けての作品づくりであったり、出来のよくない弟子たちのピアノレッスンのための音楽作りであったりしました。
まあ早い話が、お金にならないような音楽づくりはしなかったのです。
にもかかわらず、有名なこの作品の創作の動機が今もって判然としないのです。誰かから注文があった気配はありませんし、演奏会などの目的も考えられません。何よりも、この作品が演奏されたのかどうかもはっきりとは分からないのです。
そんなわけで、自分のために音楽を作るということはちょっと考えづらいモーツァルトなのですが、もしかしたら、この作品だけは自分自身のために作曲したのかもしれないのです。もしそうだとすると、これは実に貴重な作品だといえます。
そして、そう思わせるだけの素晴らしさを持った作品でもあります。
隠れた名演をパブリックドメインに加えられたことに感謝!!
昨年がモーツァルトの生誕250年だったという事は、その50年前は生誕200年だったことになります。そんなことは、小学生でも計算できることなのですが、パブリックドメインの世界ではこれがとても重要な事になります。何故かと言えば、50年前の生誕200年の時も、それを当て込んでいろいろとモーツァルト関連の録音がリリースされたのですが、それから50年が経過してそういうめぼしい録音が生誕250年をむかえて一気にパブリックドメインの仲間入りを果たすようになったからです。
おかげで、モーツァルトの交響曲に限ってみても、ラインスドルフの成し遂げた世界最初の交響曲全曲録音も一気にすべてがパブリックドメイン!!と言うわけにはいきませんが、ポツポツとその仲間入りを果たすようになってきました。(2007年現在で29番以降のすべての録音がパブリックドメインとなりました)さらに、若きヨッフムが残した興味深いモーツァルト録音も仲間入りし、ついには隠れた本命とも言うべきライナー&シカゴ交響楽団による一連の録音もそのリストに数え上げることができるようになりました。特に注目すべきは41番「ジュピター」であって、同じ時期に集中的に録音されたのにもかかわらず、これだけがステレオで録音されています。そして、その他のモノラルで録音されたものと聞き比べてみるとそのアドバンテージは非常に大きいと言わざるを得ません。当時のRCAの技術陣がすでにステレオ録音のノウハウを確立していたことは明らかなだけに、ジュピターをのぞく作品がすべてモノラルで録音されたことはかえすがえすも惜しい話だと思わざるをえません。
さて、ライナーとモーツァルトと言えば決して相性はよくないように思えます。実際、コンサートでもあまり取り上げなかったようですし、残された録音も決して多くはありません。どちらかと言えば、彼の芸風を考えれば苦手としていたのかもしれません。
しかし、このモーツァルトの生誕200年を記念してリリースされたこれら一連の録音を聴くと、正直言って「唖然」とさせられるほどの凄味に圧倒されます。ライナーが正面からモーツァルトを料理すればこうなるだろうという予想をと言うか期待にきっちりと応えてくれる内容であって、時にはその様な期待すら上回るほどの「凄味」です。
ライナーとシカゴ響が作り出す響きはヨッフム&バイエルンほどは重くはありませんが、ラインスドルフほど軽くもありません。十分に中身のつまった充実した響きでありながら、そのリズムの明晰なことには驚かされます。フィナーレにおけるたたみ込むような迫力も凄いのですが、それよりも歌い上げる部分では決して甘い情感に流されることなくクールに歌いきるところが凄いです。そして、そのクールな歌い回しの中から、モーツァルト特有の透明で静謐な悲しみが浮かび上がってきます。その意味ではセル&クリーブランドのモーツァルト演奏なんかと相似形だと思うのですが、あれよりは「熱い」ことは確かです。セルの演奏の精緻さには心ひかれるけれども「体温の低さ」が残念だ(もちろん、ユング君は感じませんが・・・^^;)と言う方にはちょうどいいかもしれません。
このような隠れた名演をパブリックドメインに加えられたことに感謝!!
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