アルビノーニ:ソナタ イ長調(Albinoni:Sonata In A Major, Op. 2, No. 3)
レナート・ファッサーノ指揮:ローマ合奏団 1958年発行(Renato Fasano:Virtuosi Di Roma Published in 1958)
Albinoni:Sonata In A Major, Op. 2, No. 3 [1.Grave]
Albinoni:Sonata In A Major, Op. 2, No. 3 [2.Allegro]
Albinoni:Sonata In A Major, Op. 2, No. 3 [3.Adagio]
Albinoni:Sonata In A Major, Op. 2, No. 3 [4.Allegro]
教会ソナタの伝統的な形式を踏襲
アルビノーニが1700年に出版した「6つのシンフォニアと6つの5声の協奏曲 作品2」の第5曲にあたる「5声のソナタ 第3番 イ長調 作品2の5」です。
バロック時代の「教会ソナタ(ソナタ・ダ・キエザ)」の伝統的な形式を踏襲していて、「緩・急・緩・急」の4つの楽章で構成されています。
第1楽章:Grave(グラーヴェ)
全弦楽器が一体となり、ホモフォニックに力強く開始されます。
バロック特有の「係留音(前の和音の音がそのまま残り、次の和音で心地よい不協和音を作る技法)」が多用され、じわじわと胸に迫るような緊張感が生まれます。
第2楽章:Allegro
第1ヴァイオリンが提示した軽快な主題(テーマ)を、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロと、次々に他の楽器が追いかける対位法的な楽章です。
5つの独立したパート(5声)が複雑に絡み合うため、まるで何本もの糸が織り重なっていくような立体感があります。
第3楽章:Adagio
アルビノーニ(および偽作とされる「アルビノーニのアダージョ」)の代名詞とも言える、哀愁を帯びた、胸を締め付けるような甘美な旋律が展開されます。
2つのヴィオラパート(第1・第2ヴィオラ)が、低音と高音の間を豊かな和音で埋めるため、音楽がスカスカにならず、非常に重厚なセンチメンタリズムが生まれます。
モダン楽器によるバロック演奏の信念を曲げず
レナート・ファッサーノはヴィヴァルディを中心に、コレッリ、ペルゴレージ、アルビノーニ、ガルッピなど、18世紀イタリアの作曲家を現在によみがえらせた功労者です。
とはいえ、20世紀半ばの「バロック音楽復興」は、ファッサーノ以外にも世界各地の指揮者や合奏団が牽引しました。
今さらという感じですが、主なものをあげていくと以下のようになるでしょうか。
イ・ムジチ合奏団
指揮者をおかないのが特徴ですが、それを補って余りあるアンサンブル能力があったようです。
ファッサーノのような劇的・情熱的な起伏よりも、美しく磨き上げられた均一なアンサンブルを重視していました。
カール・リヒター:ミュンヘン・バッハ管弦楽団
J.S.バッハを中心に、厳格なリズムと深い精神性を追求するのが持ち味でした。
イタリアの「世俗的・劇的な愉しみ」に対し、リヒターは「厳格なスコラ学・宗教的畏怖」に基づく厳しくも重厚な演奏を目指しました。。
ジャン=フランソワ・パイヤール:パイヤール室内管弦楽団
フランス・バロックの復興に貢献しました。洗練された美しい音色がアドバンテージでしょうか。
ファッサーノが「歌(カンタービレ)」を重視したのに対し、パイヤールは「宮廷的な気品とステップ)」を重視していました。
ネヴィル・マリナー:アカデミー室内管弦楽団
ファッサーノのような「土着的なイタリアの情熱」とは異なり、イギリスらしい冷静で洗練された機能美が特徴です。
それらに対して、ファッサーノの強みは、ヴィヴァルディなどの協奏曲を「器楽によるオペラ(歌劇)」として捉えていた点です。
当時、ドイツのバロック演奏が「緻密な建築物」のようにガッチリと演奏されていたのに対し、ファッサーノはまるでイタリア・オペラのアリアを歌うかのように、弦楽器やオーボエに豊かな感情を込めさせました。
また、彼は優れた音楽学者でもあり、自ら古い楽譜(手稿譜)を発掘・校訂していました。
しかし、演奏自体は学術的で冷たいものにはならず、むしろ「現代の聴衆がいかに興奮するか」という実践的な音楽づくりを行いました。
1970年代以降、「ピリオド演奏が台頭バロック復興の主流になっていく中でも、ファッサーノは1979年に亡くなるまで、モダン楽器によるバロック演奏の信念を曲げませんでした。
そして注目すべきは、古い奏法の知識を十分に理解した上で、「現代の聴衆の耳に最も美しく響き、作品の生命力を伝えるのは、完成されたモダン楽器と、イタリアの伝統的なカンタービレ(歌心)である」と確信していた事です
その様なレナート・ファッサーノが結成し、終生支え続けたのが「ローマ合奏団(I Virtuosi di Roma)」でした。
基本は弦楽合奏とチェンバロ(またはピアノ)の10数名からなる編成ですが、曲目に応じてフルートやオーボエ、ファゴットなどの超一流の管楽器奏者が加わりました。
ローマ合奏団(前身のコレジウム・ムジクス・イタリクムを含む)のメンバーは、単なる合奏要員ではなく、全員がイタリア各地の音楽院教授や、主要オーケストラの首席奏者を務める「名人(ヴィルトゥオーゾ)」の集まりでした。
彼らは合奏をしつつ、曲ごとに代わる代わるソリストを務めました。
主要メンバーは以下の通りです。
ルイージ・フェッロ(Luigi Ferro / ヴァイオリン)
楽団の精神的支柱であり、メンバーの多くを指導したベテラン。彼の弾くヴィヴァルディの「四季」などのソロは、格調高さと情熱を兼ね備えていました。
グイド・モッツァート(Guido Mozzato / ヴァイオリン)
フェッロと並ぶ楽団の看板ヴァイオリニスト。極めて美しく官能的な音色で知られ、多くの録音でソロを務めました。
フランコ・グッリ(Franco Gulli / ヴァイオリン)
後に世界的なソロ・ヴァイオリニストとして大成する名手。若き日にこの楽団に参加し、その洗練された技巧でアンサンブルを支えました。
レナート・ザンフィニ(Renato Zanfini / オーボエ)
ヴィヴァルディやマルチェッロのオーボエ協奏曲で、驚異的な歌心とテクニックを披露した伝説の名手です。
オルネッラ・プリーティ・サントリクィード(Ornella Puliti Santoliquido / ピアノ・チェンバロ)
イタリアの高名なピアニスト(サントリクィード三重奏団の主宰者)。通奏低音や鍵盤協奏曲のソリストとして色を添えました。
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