ベートーヴェン:八重奏曲, Op.103(Beethoven:Octet in E-Flat Major, Op.103)
ウィーン・フィルハーモニー木管グループ:1954年録音(Vienna Philharmonic Wind Group:Recorded on 1954)
Beethoven:Octet in E-Flat Major, Op.103 [1.Allegro]
Beethoven:Octet in E-Flat Major, Op.103 [2.Andante]
Beethoven:Octet in E-Flat Major, Op.103 [3.Menuetto and Trio]
Beethoven:Octet in E-Flat Major, Op.103 [4.Finale: Presto]
ベートーベン最初期の機会音楽
作品番号は103なのですが、作曲されたのはボン時代の終わりごろで、おそらくは選帝侯マクシミリアンの食卓音楽のために作曲されたと考えられています。
同じ時期に作曲されたのは同じ楽器編成による「ロンディーノ(WoO25)」です。
オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2(計8名)という楽器編成は当時の「ハルモニームジーク」と呼ばれる宮廷の食卓音楽や娯楽用音楽のの標準的な編成でした。
しかし、「ロンディーノ」のほうは食卓音楽にふさわしい愛らしい楽曲ですが、この八重奏曲のほうは整った4楽章構成です。
さらに、第1楽章の主要主題が一動機の反復で構成されていたり、メヌエット楽章の主題の発展の仕方がスケルツォと言っていい程だったりして、後のベートーベンの姿を彷彿とさせます。
そこには若きベートーベンの並々ならない気概があふれています。
なお、第2楽章はアダージョの三部形式で伸びやかな牧歌的な主題と中間部の端緒運も哀調が魅力的です。
終楽章はプレストのロンド形式です。
面白いのは、この作品は後に弦楽五重奏曲に編曲されて「作品6」として出版されるのですが、何故か原曲のほうは出版する意思がなかったようで、初めて出版されたのはベートーベンの死後となる1830年のことでした。
そして、その出版に際して出版社が勝手につけたのが「作品103」でした。もちろん「作品103」には何の根拠もなく、たんなる出版社の勘違いか、おそらくはより後の作品として売りたかったのでしょう。
ウィーン・フィルの黄金時代をささえた木管グループ
現在においてもウィーン・フィルは世界を代表するオーケストラではありますが、その実力の低下を多くの人が嘆いています。
もっとも、こういう物言いは、「昔はよかった」という年寄りの愚痴のような「根拠」に乏しいものが多いのです。しかし、昨今のウィーン・フィルの地盤沈下は残念ながら否定しようのない事実のようです。
では、今が落ち目ならいつがベストだったのかという話になるのですが、それもまた50年代から60年代の初め頃までと言うのがこれもまた定説のようになっています。
しかし、それもまたどこか「昔はよかった」という愚痴の域を出ないのかもしれません。聞き手は常に気楽で身勝手なものです。
しかし、その時代のウィーン・フィルを支えていたのが空前絶後と言っていいほどの木管グループだったことは事実です。
彼らが支えたウィーン・フィルは未だに田舎の名門オケであり、その土着の香りをふんだんに残していた時代の演奏が二度とよみがえらない事は事実です。
そして、多くの年寄りから見ればそのようなウィーンフィルこそが「The Best」となるのですが、客観的に冷めた目で見れば「One of the Best」なのでしょう。
とはいえ「Best」であることもまた事実です。
そして、そのウィーン・フィルを支えた木管奏者が集合してウェストミンスターに多くの録音を残したのがこの「 ウィーン・フィルハーモニー木管グループ」です。
いや、こんな持って回った言い方をしなくても、そこに結集したメンバーを見ただけでこのグループの凄さは分かります。
(オーボエ)ハンス・カメシュ、カール・スヴォボダ
(クラリネット)レオポルド・ウラッハ、フランツ・バルトシェック
(ホルン)ゴットフリート・フォン・フライベルク、レオポルド・カインツ
(ファゴット)カール・エーベルガー、ルドルフ・ハンツル
(イングリッシュ・ホルン)カール・マイヤーホッファー、ブルーノ・デールシュミット
ウェストミンスターに残した録音では演奏メンバーはほぼ変わらないのですが、フルトヴェングラーという偉大な個性によって統率された演奏があれば、指揮者というものが存在しない演奏もあります。
指揮者のいない時には、よく言えば演奏者の自発性にしたがった寛いだものになっているのですが、悪く言えば暗黙の了解にしたがった定型的な演奏になってしまっています。
それでも、これだけのメンバーがそろえば、寛いだ伸びやかな雰囲気のほうが勝っているようです。
指揮者をおかない室内オケとしてオルフェウス室内管弦楽団という組織がありました。
作品の解釈はプレーヤーの合議によって決められ、作品ごとにコンサートマスターも選ぶという「民主的」な組織というふれこみでした。
今も活動は続いているようですからそれなりに評価はされているのでしょう。
しかし、彼らの録音を聞くと、音楽には「民主主義」は似合わないと思ってしまいます。
「 ウィーン・フィルハーモニー木管グループ」の寛いだ雰囲気は「民主主義」などではない、ウィーンという町の体温が生み出したもののようです。
ただし、その体温は温かそうに見えて、その裏には世の中の裏表を知り尽くした「擦れっ枯らし」が潜んでいます。それもまたウィーンという町に対する誉め言葉と思ってください。
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