クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

エルガー:交響曲第2番変ホ長調Op.63(Elgar:Symphony No.2 in E-flat major, Op.63)

サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1954年6月日~9日録音(Sir John Barbirolli:Philharmonic Hall Recorded on June 8-9, 1954)



Elgar:Symphony No.2 in E-flat major, Op.63 [1.Allegro vivace e nobilmente]

Elgar:Symphony No.2 in E-flat major, Op.63 [2.Larghetto]

Elgar:Symphony No.2 in E-flat major, Op.63 [3.Rondo]

Elgar:Symphony No.2 in E-flat major, Op.63 [4.Moderato e maestoso]


エドワード7世の業績を偲ぶ叙事詩

エルガーの交響曲といえば一般的には第1番の方が有名なようです。それは、この交響曲がいろいろと紆余曲折の末に完成した事による影響があるのかもしれません。
この交響曲は最初はエルガーのよき理解者でありパトロンでもあったイギリス国王エドワード7世に献呈されることになっていました。エドワード7世は昔からの敵国であったフランスやロシアとの関係改善に努めて「ピースメーカー」とよばれた国王でした。
しかし、その国王が1910年5月6日に亡くなったため、今度はエドワード7世の追悼のために捧げられることになります。

しかし、出来上がった作品は追悼と言うよりはエドワード7世の業績を偲ぶ叙事詩のような作品となっています。

確かに、ベートーヴェンの「エロイカ」と同じ変ホ長調で書かれていて、第2楽章が葬送行進曲であることからこの曲はエルガーの「英雄交響曲」とも呼ばれます。そして、初演の時の聴衆もそう言う音楽を期待したのでしょう。
しかし、実際の音楽はそう言う聴衆が期待するものとは大きく異なっていたのです。

それ故に、この作品もまた数ある初演の大失敗を語るエピソードに新しいページを加えることになりました。

初演の指揮はエルガー自身が行ったのですが、演奏が終わった時は第1番の時のような拍手喝采はなく、それどころか呆気にとられたかのような静かさが会場を支配する中、ごくまばらで拍手が鳴り響いただけだったようです。
そのあまりの状況にエルガーは「一体どうしたのだ。皆詰め物をした豚の置物みたいだ。」とぼやいたそうです。

しかし、その初演から9年後の1920年にエードリアン・ボールトの指揮によって演奏される事によって大成功を収め、漸くにしてこの作品が正当に評価されることになりました。しかしながら、初演から大成功をおさめた第1番と較べると、今もポピュラリティと言う面では一歩譲るようです。
そして、その演奏会の数週間後にエルガーを生涯にわたって支え続けた妻のアリスが亡くなります。アリスにとっては、そのボールトの指揮による演奏会が彼女が最後に聞いた演奏会になってしまいました。
そして、アリスの死はエルガーに致命的な打撃を与え、そのは哀しみか彼の中から創作意欲を失ってしまい、その後は目立った作品を残していません。


  1. 第1楽章
    彼を支えてくれたエドワード7世へのオマージュとも言うべき明るく輝かしい音楽です。そこで、エルガーはエドワード朝の栄華を回顧するのですが、それは明確な主題を持たない叙事的な音楽であり、その事が聴衆にとって戸惑いを覚えさせる第1歩となったのかもしれません。

  2. 第2楽章
    ラルゲットで、まさにエドワード7世への葬送の音楽となっています。どこかブルクナーを思わせる音楽は嘆き多き現世を離れて永遠なるものを求めようとするかのような音楽であり、この交響曲全体の中ではもっとも共感しやすい音楽でしょう。

  3. 第3楽章
    一転して歯切れのよいスケルツォで、最後は華やかなコーダで終わります。

  4. 第4楽章
    荘厳な主題で始まり、それが華やかに盛り上がっていくのもまたエドワード7世へのオマージュでしょうか。そして、最後は第1楽章や第4楽章のテーマが静かに回想されるコーダで締めくくられます。




この音符を愛してください


生粋のイギリス人指揮者というのは、なんだかイギリスの作曲家の作品を演奏し録音する事が一つの義務のようになっているように見えてしまいます。なかにはビーチャムとディーリアスとか、ボールトとヴォーン・ウィリアムズのように、分かちがたく結びついているような組み合わせもあります。
そして、イタリア系のイギリス人であったバルビローリにもそのことが言いえて、実に幅広くイギリスの作曲の作品を録音しています。とりわけエルガーの作品には強い愛着があったようで、同じ作品を何度も繰り返して録音をしています。

考えてみれば、イギリスは長く音楽の消費国でした。おそらく17世紀のパーセル以降、世界的に知られるような作曲家は長くあられませんでした。その空白は20世紀近くなってエルガーが表舞台に登場するまで続いたと言ってもいいでしょう。
もちろん、その間にヘンデルやハイドンもロンドンで活躍したのですが、彼らをイギリスの作曲家と呼ぶのはふさわしくないでしょう。

そして、エルガーが登場してから、ディーリアスやボーン・ウィリアムズ、ホルストなどが登場するのですが、やはり今一つマイナーです。その後登場したブリテンにしても「イギリス20世紀音楽の父」といわれたのですから、やはりどこか狭い範囲にとどまっています。
しかし、そういう音楽家の作品が私たちの耳に数多く届いているのは、ひとえにイギリスの偉大な指揮者たちが彼らを積極的にコンサートで取り上げ、録音し続けてくれたからでしょう。
そう考えれば、日本のオーケストラや指揮者はもう少し日本の作曲家の作品に理解があってもいいのではないかと思われます。

それにしても、バルビローリがイギリスの作曲家、とりわけエルガーを熱心に取り上げていたのは注目に値します。
ふつうは一つの作品を生涯に2度から3度取り上げていれば多いほうでしょう。しかし、バルビローリはエルガーの数多くの作品を2度から3度取り上げているのは普通のことであって、私の知る限りでは「序奏とアレグロ」などは6回も録音しています。
そして、これもまた他のイギリスの指揮者と同じ傾向だと思うのですが、イギリスの指揮者が取り上げなくても大陸側の指揮者が取り上げてくれるような作品にはそれほど熱心ではありません。典型はホルストの「惑星」でしょうが、エルガーといえば名刺代わりとも言うべき「威風堂々」などはおそらく一回だけしか録音していないはずです。

長大な二つの交響曲でも何度か録音していているバルビローリなのですから、ビジネス的には極めてアンバランスと言わねばなりません。
しかし、その音楽的献身ゆえにグラモフォン誌が世紀末に行ったアンケートでも、20世紀の最も偉大な指揮者としてフルトヴェングラーに続いて堂々の2位に食い込んだのかもしれません。

さて、問題は、そういうバルビローリの数多いエルガー作品の録音をどのようにして取りげるべきかです。
同じ作品を6回録音しているからそのすべてを紹介するのはいかがなものかとも思ったのですが、かといって私ごときの個人的なバイアスで選択して紹介するというのもおこがましい話です。

「この音符を愛してください。」とバルビローリは常にオーケストラプレイヤーに語りかけていたそうです。エルガーとバルビローリと言えば定番中の定番とも言うべき組み合わせですが、その演奏を聴くたびにこのバルビローリの言葉が思い浮かびます。そんなバルビローリの思いを前にすれば可能な範囲で数多く紹介すべきなのでしょう。
まずは、あまり同じ作品が重ならないように、少しずつバルビローリのエルガーを紹介していきたいと思います。

よせられたコメント

2025-06-05:正敏


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