クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

グラナドス:ピアノ組曲 「ゴイェスカス」

(P)アリシア・デ・ラローチャ:1963年初出





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Granados:Goyescas Book 1 [2.Coloquio en la Reja - Conversation at the Grille]

Granados:Goyescas Book 1 [3.El Fandango del Candil - The Oil Lamp Fandango]

Granados:Goyescas Book 1 [4.Quejas o la Maja y el Ruisenor - Complaints or the Maiden and the Nightingale]

Granados:Goyescas Book 2 [5.El amor y la muerte: Balada - Love and Death: a Ballad]

Granados:Goyescas Book 2 [6.Epilogo: Serenata del Espectro - Epilogue: Spectre's Serenade]

Granados:Goyescas Book 2 [7.El pelele]


陽気で情熱的なスペインの粋な男と女の恋の姿

スペインの音楽にはほとんど縁がなかったので、この「ゴイェスカス」なる作品に初めてであったのはアルヘンタ指揮による「オペラ」の方でした。
ただし、どんな作品なのか全く分からないのであれこれ調べてみると、なんだか「ピアノ組曲」ばかり出てくるではないですか。

知らないというのは恐いもので(^^;、「どうしてオペラなのに、ピアノ組曲なの?」といささか混乱してしまいました。実は、ピアノ組曲「ゴイェスカス」の方こそがグラナドスを代表する作品の一つで、オペラの方はそのピアノ組曲を下敷きにして書かれた実にレアにしてマイナーな作品だったのです。
ところが、最初にであったのがそのレアな方のオペラで、そのつながりでメインの組曲に辿り着いたというしだいなのです。その事が分かって、漸くにして私の中での「混乱」は収拾しました。

このピアノ組曲「ゴイェスカス」こそはグラナドスの円熟期の最高傑作と評されているようで、確かに魅力的な音楽であることは間違いありません。
このピアノ組曲「ゴイェスカス」には 「恋するマハとマホ ゴヤの絵画の場面集」という副題がつけられています。つまりはゴヤの絵画にインスピレーションを得て作曲されたのですが、かといってゴヤの作品を具体的に選んでその印象を音楽にしたのではなくて、ゴヤの絵画から受けた印象を「恋するマハとマヤ」というイメージに結実したもののようです。
このあたりは、ドビュッシーの「映像」などと似たパターンなのかもしれません。

この「マヤとマハ」というのは誰か特定の人物を表す名前ではなくて、スペインでは粋な男と女みたいなイメージを持つ言葉だそうです。
つまりは、ラテン的気質に溢れた陽気で情熱的なスペインの粋な男と女の恋の姿を一つのイメージとして結実させたものなのです。

作品は最初は以下の6曲で発表されました。

恋する若者たち 第1部



  1. 愛の言葉

  2. 窓辺の語らい

  3. 燈し火のファンダンゴ

  4. 嘆き、またはマハと夜鳴きうぐいす


恋する若者たち 第2部



  1. 愛と死

  2. 終曲〈幽霊のセレナード〉


その後、このピアノ作品をもとにしてにしてオペラ「ゴイェスカス」が書かれるのですが、その作品の中に登場するピアノ曲「わら人形」が第2部に追加されるのが一般的なスタイルとなったようです。

さらに、草稿段階で書かれたものの、その後外された「ゴヤ風のセレナード 」が近年になって発見され、それも第8曲目とっして演奏される事も増えてきているようです。

凝縮された情熱


私の中では何故かモーツァルトを演奏する人だという思いこみがあったアリシア・デ・ラローチャの「スペイン舞曲集」を聞いたときはいささか衝撃でした。
もっとも、世間の常識としては「スペインのピアノ曲の専門家」として評価されているのですから、狭い自分の経験の中で物事を判断するとこういう事になってしまうと言う見本みたいな話です。(^^;

それでも、その驚きが大きな切っ掛けとなって、長い間部屋の片隅で埃をかぶっていたCDを片っ端から聞いてみることになりました。
そして、その驚きはスペイン舞曲集だけでなく、それ以外のスペイン音楽においても同様で、その驚くべき生命力の発露のようなものには圧倒されました。

ラローチャのピアノの響きにはとんでもない透明感があって、音楽的に曖昧な部分などは全くありません。しかし、それはピアニストならば当然のことであり、感心させられるのはその弾むようなリズム感です。
あまり民族性等という安易な言葉で片付けたくはないのですが、このリズム感だけはラローチャのようなスペインのピアニストでないと実現は難しいのではないでしょうか。

それと、すでに何度か言及しているのですが、彼女の手はピアニストとしては非常に小さかったという事です。それも並み尋常の小ささではなくて、わずか8度しか届かなかったそうです。
その事は、オクターブを奏でるにも、オクターブの跳躍をするのも、和音を掴むのも、アルペジオを奏でるのにも大変な苦労が求められます。

しかし、不思議なことに、普通ならばピアニストにとっては絶対的なハンデとなるその手の小ささが、彼女の場合には逆に長所にしてしまい、大きな手を持ったピアニストには絶対に出せない響き聞かせてくれるのです。
その、絶対に出せない響きというのは、小さな器の中にギュッと中身が詰まったような響きです。そのような凝縮された響きが弾むようなリズムと一体化したときに、そこに紛れもないスペイン的な情熱があふれ出すのです。大きな手でピアノをガンガンと叩いていては、そのような細やかにして内からあふれ出すような情熱は表現できないものです。

よせられたコメント

2021-12-25:コタロー


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