シューマン:交響曲第4番
フルトヴェングラー指揮 ベルリンフィル 1953年5月14日録音
Schumann:交響曲第4番「第1楽章」
Schumann:交響曲第4番「第2楽章」
Schumann:交響曲第4番「第3,4楽章」
マーラーへとつながっていく作品なのでしょうか?

シューマンのシンフォニーというのは年代的に見ればベートーベンとブラームスの中間に位置します。ですから、交響曲の系譜がベートーベン-シューマン-ブラームスと引き継がれてきたのかと言えば、それはちょっと違うようです。
ロマン派の時代にあってはメロディとそれをより豊かに彩る和声に重点が置かれていて、そのことは交響曲のような形式とはあまり相性がよいとは言い難いものでした。そのことは、リストによる交響詩の創作にも見られるように、構築物として音楽を仕上げるよりは物語として仕上げることに向いた仕様だったといえます。
こういう書き方をすると誤解を招くかもしれませんが、シューマンの交響曲を聴いていると、それはベートーベンから受け継いだものをブラームスへと受け継いでいくような存在ではなくて、ベートーベンで行き着いた袋小路から枝分かれしていった一つの枝のような存在であり、それがリストに代表される交響詩へと成長していったと把握した方が実態に近いのではないかと思います。
とりわけこの第4番の交響曲を聴くと、それはベートーベン的な構築物よりは、交響詩の世界の方により近いことを実感させられます。
事実、シューマン自身もこの作品を当初は「交響的幻想曲」とよんでいました。
この作品は番号は4番となっていますが、作曲されたのは第1番と同じ1841年です。当初はその作曲順の通りに第2番とされていて、同じ年に初演もされています。
しかし、第1番と違って初演の評判は芳しくなく、そのためにシューマンは出版を見あわせてしまいます。そのために、5年後に作曲された交響曲が第2番と名付けられることになりました。
その後この作品はシューマン自身によって金管楽器などの扱いに手直しが加えられて、1853年にようやくにして出版されることになります。
シューマンの音楽というのはどこか内へ内へと沈み込んでいくような雰囲気があるのですが、4曲ある交響曲の中でもその様な雰囲気がもっとも色濃く表面にでているのがこの第4番の交響曲です。そして、こういう作品をフルトヴェングラーのような演奏で聞くと、「そうか、これはリストではなくてマーラーにつながっていくんだ」と気づかされたりする作品です。第3楽章から第4楽章につながっていく部分は誰かが「まるでベートーベンの運命のパロディのようだ!」と書いていましたが、そういう部分にもシューマンの狂気のようなのぞいているような気がします。
フルトヴェングラーを代表する録音です
年が明ければ真っ先にこれをアップしようと思っていたのに、なぜかうっかりと今まで失念していました。とんでもないチョンボです。
この演奏はフルトヴェングラーによる戦後のスタジオ録音の中では間違いなくベストの一枚でしょう。
そして、フルヴェンが死して半世紀を超える時間が過ぎてしまいましたが、今もってこれをこえるような演奏は出現しませんでした。こういう言い方はだいたいが年寄りの愚痴と大差ないものなのですが、このシューマンに関してだけはかなりの自信を持って断言できます。
とりわけ曲の後半における異常とも言える、そしてスタジオ録音とは信じがたいほどの熱気ともりあがりを聞けば、これにかわるものがないことは納得していただけると思います。
今まで語り尽くされてきた演奏ですから、今さらユング君ごときが何も付け加えることはありません。
よせられたコメント
2012-10-23:ひまわり
- シューマンの交響曲は「ピアノ的発想から出ていない」など過小評価されがちですが、私はそうは思いません。ロマン的で従来の枠にはまることなく、のびのびと個性が発揮されていると思います。オーケストレーションにも独自の霊感を感じます。中でも4番は幻想性に富み、動機や雰囲気の面で全曲の統一感もあり、ロマン派を代表する傑作だと思います。フルトヴェングラーの演奏もこのシューマンの特性をよく表現していると思います。彼の屈指の名演と言えるでしょう。ここでは、いつもの変化に富んだ解釈が、音楽の生き生きとした本来の姿を自然に表現できていると思います。また、彼にとってライヴとスタジオの差は言われているようなほど意識していなかったと私は思います。聴衆がいなければよい演奏ができないなら、その人はプロの演奏家として「下の下」です。フルトヴェングラーの解釈には時々首をかしげるときがあるのですがここでは大いに成功していると思います。
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