ブラームス:交響曲第2番
ワインガルトナー指揮 ロンドンフィル 1940年2月26日録音
Brahms:交響曲第2番「第1楽章」
Brahms:交響曲第2番「第2楽章」
Brahms:交響曲第2番「第3楽章」
Brahms:交響曲第2番「第4楽章」
ブラームスの「田園交響曲」
ブラームスが最初の交響曲を作曲するのに20年以上も時間を費やしたのは有名な話ですが、それに続く第2番の交響曲はその一年後、実質的には3ヶ月あまりで完成したと言われています。ブラームスにとってベートーベンの影がいかに大きかったかをこれまた物語るエピソードです。
第2番はブラームスの「田園交響曲」と呼ばれることもあります。それは明るいのびやかな雰囲気がベートーベンの6番を思わせるものがあるかです。
ただ、この作品はこれ単独で聞くとあまり違和感を感じないでのですが、同時代の他の作品と聞き比べるとかなり古めかしい装いをまとっています。この10年後にはマーラーが登場して第1番の交響曲を発表することを考えると、ブラームスの古典派回帰の思いが伝わってきます。
オケの編成を見ても昔ながらの二管編成ですから、マーラーとの隔絶ぶりはハッキリしています。
とは言え、最終楽章の圧倒的なフィナーレを聞くと、ちらりと後期ロマン派の顔がのぞいているように思うのはユング君だけでしょうか。
意外なほど意志的で強靱な響き
ワインガルトナーといえばスタイリッシュで淡泊な演奏をした人というイメージがあります。
しかし、最晩年に彼が残したブラームスの演奏を聴き直してみて、少し考えをあらためました。4番の最終楽章ではちょっと粘る部分はありますが、全体としては颯爽としたスタイリッシュな演奏に仕上がっているところは、ワインガルトナーらしいといえます。しかし、ここで聞ける演奏はそれだけにとどまらず、意志的で強靱な響きが聞こえてきます。
ワインガルトナーってこんなにがっちりとした音楽を聞かせる人だったのかと少し驚かされました。
ワインガルトナーは1863年に現在のクロアチアで生まれ、その後リストの弟子となって音楽を学んだという経歴を持っています。そして、当時のお決まりだと思うのですが、地方の歌劇場からスタートして少しずつキャリアを積み上げていき、1891年にはベルリン宮廷歌劇場の首席指揮者にまでのぼりつめます。さらに、1908年にはグスタフ・マーラーの後任としてウィーン宮廷歌劇場とウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督に就任しています。
まさに順風満帆の音楽家生活だと思うのですが、晩年になるとナチスの台頭によりその生活にも影が差してきます。1934年に再び就任したウィーン国立歌劇場の音楽監督も36年には辞任せざるを得なくなり(ワインガルトナーはユダヤ人でした)、さらにローザンヌからパリに居を移し、第2次対戦の勃発直前にはロンドンへの亡命を余儀なくされます。
私の見るところ、このナチス台頭以後の録音には、それまでのワインガルトナーにはなかった強い意志のようなものが演奏に現れてきているように思います。
また、録音セッションを長年にわたって経験してきた人だけに、ライブ演奏との違いもよく知っていたように思います。何度も何度も繰り返し聞かされることを前提とした録音では、派手さはなくてもきっちり仕上げることの大切さをよく分かっていた人だと思います。しかし、ケレン味なく音楽を展開させながら次第次第に盛り上げていって最後でクライマックスを築き上げていくあたりはなかなかの手腕だと思います。
一部、原盤に起因すると思われるノイズはありますが音質的にはこの時代のものとしてが最上に属するものです。最晩年のワインガルトナーを知るには絶好の録音だといえます。
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