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ベートーベン:劇音楽「エグモント」 Op. 84 序曲

フェレンツ・フリッチャイ指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1958年9月29日~30日録音



Beethove:Egmont, Op.84 [Overtu


尊敬するゲーテから依頼された音楽

この序曲はゲーテの戯曲「エグモント」のために作曲されたものなのですが、今日ではこの序曲だけがよく演奏されます。
音楽全体は序曲と9曲の付随音楽からなり、通して演奏すると40分程度になル、規模の大きな音楽です。


  1. 歌曲: Vivace
    第1幕第3場の民家の場面で、クレールヒェンが糸を巻きながら得意の「兵隊さんの歌」を歌う。

  2. 幕間の音楽1: Andante
    失恋したブラッケンブルグが自殺してしまおうと悩んで幕が下りると演奏される幕間の音楽。

  3. 幕間の音楽2: Larghetto
    エグモントの独白の後に第2幕の幕が下りると演奏される幕間の音楽

  4. 歌曲:Andante con moto
    第3幕第2場でエグモントを待つクレールヒェンが母に向かって歌う歌曲

  5. 幕間の音楽3: Allegro - Marcia
    第3幕の幕が下りると演奏される幕間の音楽で、エグモントからの愛の言葉を喜ぶクレールヘェンの心の余韻を伝える。

  6. 幕間の音楽4: Poco sostenuto e risoluto
    第4幕のエグモントの台詞が終わらないうちに演奏される幕間の音楽。音楽が力なく終了するとそのまま第5幕に進んでいく。

  7. クレールヒェンの死: Clarchens Tod
    第5幕第3場でクレールヒェンが毒をあおって自殺した後に流れる音楽。オーボエが哀しみの旋律を美しく歌い上げる。

  8. メロドラマ:Poco sostenuto
    第5幕の獄中の場で、エグモントのモノローグとともに演奏される音楽

  9. 勝利のシンフォニア: Allegro con brio
    エグモントの最後の台詞「最愛のものを救うために、喜んで命を捨てること、わがごとくあれ」の後に幕が下り始めると演奏される音楽。序曲のコーダと同一の楽曲であるが、こちらが先に完成されたと言われている。



この戯曲に音楽をつけるように依頼したのはゲーテ本人であり、いろいろあっても彼のことを深く尊敬していたベートーベンは喜んでその仕事を引き受けたのです。
ただし、残念ながら戯曲の方はそれほど成功を収めませんでした。その事もあって、今日では序曲だけが演奏される機会が多いと言うことなのでしょう。


音楽が内へ内へと向かい、その表現は他の指揮者と較べると明らかに異形です


冒頭部分からして、同じ日に録音されたレオノーレの3番と同じく音楽が内へ内へと向かっていることが分かります。そして、その表現は他の指揮者と較べると明らかに異形です。
それ故に、おそらくはブラインド聞かされても、これはフリッチャイだと識別が可能でしょう。それほどに個性的な演奏です。

それは、例えばコーダへの突入場面では最も強烈にアッチェレランドしているのですが、音楽のエネルギーは決して外に向かって放射していかないのです。それは、フリッチャイという指揮者のその後を知っているための思いこみだと言われるかもしれないのですが、それでも酷薄な運命への慟哭のように聞こえるのです。
ここには、疑いもなく「人生」が刻み込まれています。

さらに、もう一つ驚くのはベルリンフィルの底光りするような響きがここでも健在だと言うことです。
クリュイタンスの指揮と鞍寝れば全く別のような音楽に聞こえるのですが、そう言う指揮者の要求に応えて全く異なる世界を描き出してみせるオケの力量を見せつけられるような思いです。
そして、「悪いオーケストラというのは存在しない、存在するのは悪い指揮者だけだ」という言葉の重みにも気づかされるのです。

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