ドヴォルザーク:交響曲第8番 ト長調 作品88
ブルーノ・ワルター指揮 コロンビア交響楽団 1961年2月8&12日録音
Dvorak:交響曲第8番 ト長調 Op88 「第1楽章」
Dvorak:交響曲第8番 ト長調 Op88 「第2楽章」
Dvorak:交響曲第8番 ト長調 Op88 「第3楽章」
Dvorak:交響曲第8番 ト長調 Op88 「第4楽章」
一度聞けば絶対に忘れないほどの美しいメロディーです

メロディーメーカーと言われるドヴォルザークですが、ここで聞くことのできるメロディーの美しさは出色です。
おそらく一度聞けば、絶対に忘れることのできない素晴らしいメロディーです。
ユング君がこのメロディーに初めてであったのは、車を運転しているときでした。いつものようにNHKのFM放送を聞きながら車を走らせていました。おそらく何かのライヴ録音だったと思います。
第2楽章が終わり、お決まりのように観客席の咳払いやざわめきが少し静まったころを見計らって、第3楽章の冒頭のメロディーが流れはじめました。
その瞬間、ラジオから流れる貧弱な音でしたが、ユング君は耳が釘付けになりました。
それは、今まで聞いたことがないような、この上もなく美しく、メランコリックなメロディーでした。
その頃は、クラシック音楽などと言うものを聞き始めて間もない頃で、次々と新しい音楽に出会い、その素晴らしさに心を奪われると言う、本当に素晴らしい時期でした。そんな中にあっても、この出会いは格別でした。
実は、車を運転しながら何気なく聞いていたので、流れている音楽の曲名すら意識していなかったのです。第4楽章が終わり、盛大な拍手が次第にフェイドアウトしていき、その後アナウンサーが「ドヴォルザーク作曲、交響曲第8番」と読み上げてくれて、初めて曲名が分かったような次第です。
翌日、すぐにレコード屋さんにとんでいったのですが、田舎の小さなお店ですから、「えぇ、ドヴォルザークって9番じゃなかったですか?」等とあほみたいな事を言われたのが今も記憶に残っています。
クラシック音楽を聴き始めた頃の、幸せな「黄金の時代」の思い出です。
意外なほどに覇気にあふれた若々しくも勢いのある音楽
ワルターにとってドヴォルザークの交響曲というのはどう考えてもメインのプログラムではありませんでした。
調べてみると、録音はわずか数点しか残っていません。
交響曲第8番
ニューヨークフィル 1947年11月28日録音
ニューヨークフィル 1948年2月15日 カーネギーホールでのライブ録音
交響曲第9番 「新世界より」
ロサンジェルスフィル 1942年7月16日 ライブ録音
つまりは、セッション録音は1947年のみということです。
ですから、この最晩年に8番と9番をコロンビア響を使って録音したのは、おそらくはワルターが望んだと言うよりは、レコード会社の方がどうしても「売れ筋」の交響曲をワルターに録音してほしかったために実現したものだと想像されます。
実際、このコロンビア響とのセッション録音を聞いてみると、ベートーベンの交響曲で聞かれるような「一筆書き」のような「大らかさ」というか「大雑把さ」と言うか(^^;、いわゆる「昔語り」のような演奏とは少し雰囲気が違うことに気づきます。
おそらくは、レコード会社から要請されて、「困ったなぁー、しんどいなぁー・・・」と思いつつも、それでも、彼にとってそれほど馴染みがあるとは思えないこれらの交響曲のスコアを少しは時間をかけて振り返ったのではないでしょうか。
しかし、結果としては、一筆書きのような感覚とはかなり異なった、非常に丁寧できっちりとした造形が特徴的な演奏に仕上がる事になりましたす。そして、そう言う細部をキチンと積み上げることで、意外なほどに覇気にあふれた若々しくも勢いのある音楽になっています。
さらに言えば、全体としてそのような勢いが感じられるがゆえに、例えば第8番の第3楽章や第9番のあの有名な第2楽章の歌心がより一層栄える結果となっています。特に、あの有名な家路のメロディが、ここではある種の神々しささえ感じられる音楽へと昇華しているようにすら感じられます。
音楽というのは、面白くもあり難しいものだと思わざるを得ません。
よせられたコメント
2018-11-18:ヴィターリ・DE・グッターリ
- 久しぶりにワルターの演奏を聴いてみたくなりページを訪れました。やはり刷り込みがあるんでしょうね。ワルター最高!ユングさんの解説を読んでへー!意外と思いました。歌心あるワルターだから成しえた名演なんですね。パソコンを開いた日は必ず訪れたいユングさんのサイトです。いつもありがとございます。これからも楽しみにしています。
【最近の更新(10件)】
[2025-12-13]

R.コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」 作品35(Rimsky-Korsakov:Scheherazade, Op.35)
コンスタンティン・シルヴェストリ指揮 ボーンマス交響楽団 (Vn)ジェラルド・ジャーヴィス 1966年12月30-31日(録音(Constantin Silvestri:Bournemouth Symphony Orchestra (Vn)Gerald Jarvis Recorded on Dcember 30-31, 1966)
[2025-12-11]

ベートーヴェン:六重奏曲 変ホ長調, Op.71(Beethoven:Sextet in E-Flat Major, Op.71)
ウィーン・フィルハーモニー木管グループ:1950年録音(Vienna Philharmonic Wind Group:Recorded on 1950)
[2025-12-09]

ベートーベン:交響曲第9番 ニ短調 「合唱付き」作品125(歌唱:ルーマニア語)(Beethoven:Symphony No.9 in D minor, Op.125 "Choral")
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 (S)Emilia (Ms)マルタ・ケスラー、(T)イオン・ピソ (Bass)マリウス・リンツラー (Chorus Master)ヴァシリ・パンテ ジョルジュ・エネスコ・フィル合唱団 (Chorus Master)カロル・リトヴィン ルーマニア放送合唱団 1961年8月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra (S)Emilia Petrescu (Ms)Martha Kessler (T)Ion Piso (Bass)マMarius Rintzler (Chorus Master)Vasile Pintea Corul Filarmonicii "George Enescu”(Chorus Master) arol Litvin Corul Radioteleviziunii Romane Recorded on July, 1961)
[2025-12-07]

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」 ヘ短調 Op.57(Beethoven: Piano Sonata No.23 In F Minor, Op.57 "Appassionata")
(P)ハンス・リヒター=ハーザー 1955年11月録音(Hans Richter-Haaser:Recorded on November, 1955)
[2025-12-06]

ラヴェル:夜のガスパール(Ravel:Gaspard de la nuit)
(P)ジーナ・バッカウアー:(語り)サー・ジョン・ギールグッド 1964年6月録音(Gina Bachauer:(Read)Sir John Gielgud Recorded on June, 1964)
[2025-12-04]

フォーレ:夜想曲第7番 嬰ハ短調 作品74(Faure:Nocturne No.7 in C-sharp minor, Op.74)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)
[2025-12-02]

ハイドン:弦楽四重奏曲第32番 ハ長調, Op.20, No.2, Hob.3:32(Haydn:String Quartet No.32 in C major, Op.20, No.2, Hob.3:32)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1931年12月2日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on December 2, 1931)
[2025-11-30]

チャイコフスキー:マンフレッド交響曲 ロ短調 作品58(Tchaikovsky:Manfred Symphony in B minor, Op.58)
コンスタンティン・シルヴェストリ指揮 フランス国立放送管弦楽団 1957年11月13日~16日&21日録音(Constantin Silvestri:French National Radio Orchestra Recorded on November 13-16&21, 1959)
[2025-11-28]

ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93(Beethoven:Symphony No.8 in F major ,Op.93)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年5月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on May, 1961)
[2025-11-26]

ショパン: ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 Op.21(Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21)
(P)ジーナ・バッカウアー:アンタル・ドラティ指揮 ロンドン交響楽団 1964年6月録音(Gina Bachauer:(Con)Antal Dorati London Symphony Orchestra Recorded on June, 1964)