ムソソルグスキー:展覧会の絵(ラヴェル編曲)
クーベリック指揮 シカゴ交響楽団 1951年4月録音
Mussorgsky:組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編曲)
今までの西洋音楽にはない構成

組曲「展覧会の絵」は作曲者が35歳の作品。親友の画家で建築家のヴィクトール・ガルトマン(1834〜1873)の遺作展が開かれた際に、そのあまりにも早すぎる死を悼んで作曲されたと言われています。
彼は西洋的な音楽語法を模倣するのではなく、むしろそれを拒絶し、ロシア的な精神を音楽の中に取り入れようとしました。
この「展覧会の絵」もガルトマンの絵にインスピレーションを得た10曲の作品の間にプロムナードと呼ばれる間奏曲風の短い曲を挟んで進行するといった、今までの西洋音楽にはない構成となっています。
よく言われることですが、聞き手はまるで展覧会の会場をゆっくりと歩みながら一枚一枚の絵を鑑賞しているような雰囲気が味わえます。
作品の構成は以下のようになっています。
「プロムナード」
1:「グノームス」
2:「古い城」
「プロムナード」
3:「チュイルリー公園」
4:「ヴィドロ」
「プロムナード」
5:「殻をつけたままのヒヨコのバレエ」
6:「ザムエル・ゴールデンベルクとシュミイレ」
「プロムナード」
7:「リモージュの市場」
8:「カタコムベ(ローマ人の墓地)」
9:「ニワトリの足に立つ小屋(ババヤーガ)」
10:「雄大な門(首都キエフにある)
生真面目で、ひたすら真面目に前へ前へとつきすすでいくような演奏
今さらこんな古い録音なんか紹介するのもどうかと思ったのですが、久しぶりに聴き直してみて、その活きのいい演奏にすっかり魅了されてやはり取り上げることにしました。
クーベリックといえば「中庸の美」で、そのバランスの取れた端正な音楽作りが取り柄の指揮者でした。しかし、この録音に取り組んだときは不惑をむかえる前ですから、実に若々しくて威勢がいいです。
そりゃぁ、ケチをつけたければいくらでもつけることができます。もう少しテンポを落としてぐっとためるところはためられないのか・・・とか、もう少し伸びやかに歌わせるところは歌わせられないのか・・・とかとかです。
でも、こういう生真面目で、ひたすら真面目に前へ前へとつきすすでいくような演奏というのは、意外なほどに数が少ないのです。結局、年取ってから大成するのは、こういう真面目な若者(40前の男を若者というのは気が引けますが、指揮者の世界というのはそういう物です)なのかもしれません。
それともう一つ特筆しておきたいのは、51年の録音としては「驚異的」とも言うべき音の良さです。これは同時代のフルトヴェングラーの録音などと比べてみると、全く持って別世界の音質です。そして、こう言うのを聞かされると、もしもフルトヴェングラーがシカゴ響の指揮者に就任してマーキュリー・レーベルで録音していれば・・・という「if」が頭をよぎります。
なお、一部ではオケの音が痩せすぎて「名録音」とは言えないという批評もあるようですが、私のシステムではそのような不満は全く感じませんでした。それどころか、個々の楽器の生々しさに圧倒されて、聞き終わる頃には「モノラル」であることも気にならなくなるほどの素晴らしさです。
よせられたコメント
2015-04-25:Sammy
- 1951年とはにわかに信じがたい鮮明な録音から、気迫で弾けそうな勢いのある音楽が飛び出してきます。オーケストラのちょっと味のある音色を生かしたニュアンス豊かな部分も見事ですが、特に終盤の総突撃するような迷いのない一気呵成の音楽は清々しいとしか言いようがありません。
2025-03-20:ken1945
- この曲を展覧会場で順番に歩いて鑑賞する情景を絵画と音楽の関係性から意識するか、またはピアノ演奏そのものとしての楽器演奏の切り口から始めるかで、鑑賞の仕方が変わるのではと思う。クーベリックのこの演奏は私の感覚では後者であろうと思う。絵画を鑑賞する感覚からするともっと人間的な時間の取り方を意識した懐の深さや絵画の空間描写を楽譜演奏に取り込めるのではないか。トスカニーニのようにオペラ指揮者から始まると舞台演出という俯瞰的な感覚が身についているので空間芸術に身を置くことができる。この演奏はエネルギッシュで好きだが、太陽光の下での空間芸術の新たな奥行が見いだされたならよかった。録音のすばらしさがどうしてもLEDの直接的な人工色だけの平面に捉えられてしまう。
【最近の更新(10件)】
[2025-12-13]

R.コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」 作品35(Rimsky-Korsakov:Scheherazade, Op.35)
コンスタンティン・シルヴェストリ指揮 ボーンマス交響楽団 (Vn)ジェラルド・ジャーヴィス 1966年12月30-31日(録音(Constantin Silvestri:Bournemouth Symphony Orchestra (Vn)Gerald Jarvis Recorded on Dcember 30-31, 1966)
[2025-12-11]

ベートーヴェン:六重奏曲 変ホ長調, Op.71(Beethoven:Sextet in E-Flat Major, Op.71)
ウィーン・フィルハーモニー木管グループ:1950年録音(Vienna Philharmonic Wind Group:Recorded on 1950)
[2025-12-09]

ベートーベン:交響曲第9番 ニ短調 「合唱付き」作品125(歌唱:ルーマニア語)(Beethoven:Symphony No.9 in D minor, Op.125 "Choral")
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 (S)Emilia (Ms)マルタ・ケスラー、(T)イオン・ピソ (Bass)マリウス・リンツラー (Chorus Master)ヴァシリ・パンテ ジョルジュ・エネスコ・フィル合唱団 (Chorus Master)カロル・リトヴィン ルーマニア放送合唱団 1961年8月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra (S)Emilia Petrescu (Ms)Martha Kessler (T)Ion Piso (Bass)マMarius Rintzler (Chorus Master)Vasile Pintea Corul Filarmonicii "George Enescu”(Chorus Master) arol Litvin Corul Radioteleviziunii Romane Recorded on July, 1961)
[2025-12-07]

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」 ヘ短調 Op.57(Beethoven: Piano Sonata No.23 In F Minor, Op.57 "Appassionata")
(P)ハンス・リヒター=ハーザー 1955年11月録音(Hans Richter-Haaser:Recorded on November, 1955)
[2025-12-06]

ラヴェル:夜のガスパール(Ravel:Gaspard de la nuit)
(P)ジーナ・バッカウアー:(語り)サー・ジョン・ギールグッド 1964年6月録音(Gina Bachauer:(Read)Sir John Gielgud Recorded on June, 1964)
[2025-12-04]

フォーレ:夜想曲第7番 嬰ハ短調 作品74(Faure:Nocturne No.7 in C-sharp minor, Op.74)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)
[2025-12-02]

ハイドン:弦楽四重奏曲第32番 ハ長調, Op.20, No.2, Hob.3:32(Haydn:String Quartet No.32 in C major, Op.20, No.2, Hob.3:32)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1931年12月2日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on December 2, 1931)
[2025-11-30]

チャイコフスキー:マンフレッド交響曲 ロ短調 作品58(Tchaikovsky:Manfred Symphony in B minor, Op.58)
コンスタンティン・シルヴェストリ指揮 フランス国立放送管弦楽団 1957年11月13日~16日&21日録音(Constantin Silvestri:French National Radio Orchestra Recorded on November 13-16&21, 1959)
[2025-11-28]

ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93(Beethoven:Symphony No.8 in F major ,Op.93)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年5月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on May, 1961)
[2025-11-26]

ショパン: ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 Op.21(Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21)
(P)ジーナ・バッカウアー:アンタル・ドラティ指揮 ロンドン交響楽団 1964年6月録音(Gina Bachauer:(Con)Antal Dorati London Symphony Orchestra Recorded on June, 1964)