ベートーベン:交響曲第5番
フルトヴェングラー指揮 ベルリンフィル 1947年5月25日 ティタニア・パラストでのライブ録音
Beethoven:交響曲第5番「運命」 第1楽章
Beethoven:交響曲第5番「運命」 第2楽章
Beethoven:交響曲第5番「運命」 第3~4楽章
極限まで無駄をそぎ落とした音楽
今更何も言う必要がないほどの有名な作品です。
クラシック音楽に何の興味がない人でも、この作品の冒頭を知らない人はないでしょう。
交響曲と言えば「運命」、クラシック音楽と言えば「運命」です。
この作品は第3番の交響曲「エロイカ」が完成したすぐあとに着手されています。スケッチにまでさかのぼるとエロイカの創作時期とも重なると言われます。(1803年にこの作品のスケッチと思われる物があるそうです。ちなみにエロイカは1803〜4年にかけて創作されています。)
しかし、ベートーベンはこの作品の創作を一時的に中断をして第4番の交響曲を作曲しています。これには、とある伯爵未亡人との恋愛が関係していると言われています。
そして幸か不幸か、この恋愛が破局に向かう中でベートーベンはこの運命の創作活動に舞い戻ってきます。
そういう意味では、本格的に創作活動に着手されたのは1807年で、完成はその翌年ですが、全体を見渡してみると完成までにかなりの年月を要した作品だと言えます。そして、ベートーベンは決して筆の早い人ではなかったのですが、これほどまでに時間を要した作品は数えるほどです。
その理由は、この作品の特徴となっている緊密きわまる構成とその無駄のなさにあります。
エロイカと比べてみるとその違いは歴然としています。もっとも、その整理しきれない部分が渾然として存在しているところにエロイカの魅力があるのですが、運命の魅力は極限にまで整理され尽くしたところにあると言えます。
それだけに、創作には多大な苦労と時間を要したのでしょう。
それ以後の時代を眺めてみても、これほどまでに無駄の少ない作品は新ウィーン楽派と言われたベルクやウェーベルンが登場するまではちょっと思い当たりません。(多少方向性は異なるでしょうが、・・・だいぶ違うかな?)
それから、それまでの交響曲と比べると楽器が増やされている点も重要です。
その増やされた楽器は第4楽章で一気に登場して、音色においても音量においても今までにない幅の広がりをもたらして、絶大な効果をあげています。
これもまたこの作品が広く愛される一因ともなっています。
フルトヴェングラーの歴史的な復帰演奏会
この演奏会の簡単な経緯は6番「田園」の方のページに書いておきましたから、そちらをご覧ください。
6番の方がある意味慎重に歩みをすすめたような感があるのですが、後半の第5番では実にフルトヴェングラーらしい演奏になっています。おそらく数ある運命のライブ録音の中でもベストの一つといえるでしょう。
演奏のスタイルは戦時中のものと基本的に同じです。大きくテンポを動かして実にドラマティックな演奏に仕上がっています。冒頭の運命の動機の最後を長く伸ばすところなどは、「これぞフルヴェン!」と喝采をおくりたくなります。
このあとスタジオ録音の経験を積み重ねていく中で戦後のフルトヴェングラーは自らのスタイルを変えていく事になるだけに、実に貴重なライブ録音といえます。
それから、5番、6番ともに、音質はこの時代のものとしては最上の部類に属します。
よせられたコメント 2012-11-05:マオ ベートーヴェンの作品の中核と言ってもいい第5番、いつ聴いてもその偉大さに感動します。フルトヴェングラーの本演奏ですが、彼の芸風の典型かと思いますが、これを「名演」と呼ぶかは聴く人それぞれでしょう。私は感動とともに疑問も感じています。正直「とてもついていけないなあ」と思うときも多いです。楽員はどう思ってこの指揮に合わせたのでしょうか。主観的な解釈の極点であり、しかしベートーヴェンの込めたものを心から表現しようといているのも伝わります。カラヤンやブーレーズの解釈とは対照的だが、実はこれらすべてそれぞれの聴き方で楽しめばいいのではと、最近思います。「こんなベートーヴェンは否…」と探り始めればあらゆる演奏を聴かねばならないことになってしまいます。演奏者の主張ではなく、曲本来のすばらしさを求めるという原点に戻りたいとも思います。 2012-07-10:oTetsudai この録音と同じと思われるレコードが手元にあります。交響曲第五番とエグモント序曲のもので、グラムフォンの擬似ステレオ盤です。ノイズの箇所が同じでした。当時私は傷だと思っていましたがそうではなかったようです。この聴くものを妙に興奮させる演奏を若いときに最初の第五番として聴いたためになかなかそれ以降気に入る演奏には出会えませんでした。同じくショパンの革命をリヒテルの演奏で最初に聴いてしまったのでやはりそれ以降どの演奏も妙におとなしく思えたものです。こういう演奏はもう聴くことができないのでしょう。恵まれた時代に育ったものだと思います。今は優れた演奏家は大勢いますがそれを支える優れた聴衆が少なくなりました。 2012-09-23:クラシック大好き 私はフルトヴェングラーの演奏をかなり聴いてきたほうだと思うのですが、いまいちその魅力がわかりません。大きく動くテンポ、ダイナミックの変化・・・。でもあいまいなアインザッツが原因か、アンサンブルの乱れその他とても聴いているのに不快です。ほんとうの音楽の醍醐味とは違う方向のように思います。録音の古さのことは気になりません。本物の音楽なら録音に左右されず感動します。もしよかったら、どなたかこの未熟な私にフルトヴェングラーのよさを教えてくれませんか。 2012-11-23:ウィルヘルム 初めてこの演奏をきいたとき命のこもったような演奏に驚きました。揺れ動くような第一楽章のテンポの突進、静寂の中に緊張感のただよう第二楽章…。30数分間をこれほど充実して過せる時間が他で得られるでしょうか。しかし、フルトヴェングラーは指揮台に立つときは一見不機嫌そうに冷静なしぐさをしたそうで、実演では主観的に曲にのめりこんでいくのではなかったかもしれません。こんな演奏も即興性だけでなく、考え抜かれたものだったのでしょうか。でも「歴史的演奏」だから聴きとおせて、ときどき聴いていられないなあと思うときもあります。オーケストラもミスや乱れが多く、録音など前提としない「一度限り」のライヴとも思われるときがあります。よしあしは別に、こういう演奏をした指揮者がいたことは後世にも伝わっていくのでしょう。
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