モーツァルト:クラリネット協奏曲
Cl.レオポルド・ウラッハ カラヤン指揮 ウィーンフィル 1949年録音
Mozart:クラリネット協奏曲 イ長調 K.622 「第1楽章」
Mozart:クラリネット協奏曲 イ長調 K.622 「第2楽章」
Mozart:クラリネット協奏曲 イ長調 K.622 「第3楽章」
モーツァルト、最後のコンチェルト
ケッヘル番号は622です。この後には、未完で終わった「レクイエム」(K625)をのぞけば、いくつかの小品が残されているだけですから、言ってみれば、モーツァルトが残した最後の完成作品と言っていいかもしれません。
この作品は、元は1789年に、バセットホルンのためのコンチェルトとしてスケッチしたものです。そして、友人であったクラリネット奏者、シュタットラーのために、91年10月の末に再び手がけたものだと言われています。
ここでもまた、シュタットラーの存在がなければ、コンチェルトの最高傑作と言って過言でないこの作品を失うところでした。
ここで紹介している第2楽章は、クラリネット五重奏曲のラルゲット楽章の姉妹曲とも言える雰囲気が漂っています。しかし、ここで聞ける音楽はそれ以上にシンプルです。どこを探しても名人芸が求められる部分はありません。それでいて、クラリネットが表現できる音域のほぼすべてを使い切っています。
どうして、これほど単純な音階の並びだけで、これほどの深い感動を呼び覚ますことができるのか、これもまた音楽史上の奇跡の一つと言うしかありません。
しかし、ここでのモーツァルトは疲れています。
この深い疲れは、クラリネット・クインテットからは感じ取れないものです。
彼は、貴族階級の召使いの身分に甘んじていた「音楽家」から、自立した芸術家としての「音楽家」への飛躍を試みた最初の人でした。
しかし、かれは早く生まれすぎました。
貴族階級は召使いのそのようなわがままは許さず、彼は地面に打ち付けられて「のたれ死に」同然でその生涯を終えました。
そのわずか後に生まれたベートーベンが、勃興しつつある市民階級に支えられて自立した「芸術家」として生涯を終えたことを思えば、モーツァルトの生涯はあまりにも悲劇的だといえます。
それは、疑いもなく「早く生まれすぎた者」の悲劇でした。
しかし、その悲劇がなければ、果たして彼はこのような優れた作品を生みだし続けたでしょうか?
これは恐ろしい疑問ですが、もし悲劇なくして芸術的昇華がないのなら、創造という営みはなんと過酷なものでしょうか。
ちょっと、ウラッハとは思えないような凡演ですが・・・
責任はおそらくは指揮者にあるのでしょうね。
何とも無理をしてカラヤンの解釈にあわせようとしていますが、その音楽はウラッハの体質は正反対のものですから「やる気」が全く感じられません。
それとは反対にオケの方はやけに張り切っているので、まるでベートーベンのように威勢良く鳴り響いて、この作品が持つ深い情感は吹っ飛んでしまっています。
どれほどの名人でも組んだ相手は悪ければどうしようもないと言う典型のような演奏です。ウェストミンスター盤の著作権が切れればすぐにでも差し替えたいと思いますが、今はこれしかないのでご辛抱のほどを・・・。
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