クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

バルトーク:弦楽のためのディヴェルティメント

シルヴェストリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1958年録音





Bartok:ディヴェルティメント 第1楽章 「アレグロ・ノン・トロッポ」

Bartok:ディヴェルティメント 第2楽章 「モルト・アダージョ」

Bartok:ディヴェルティメント 第3楽章 「アレグロ・アッサイ」


バルトークの絶頂期を代表する作品の一つ

バルトークと言えば楽器を打楽器的に扱った「暴力的」な音楽というイメージがどうしても払拭できない人がいるようです。そう言う人には、是非とも一度は聞いてもらいたいのがこの「ディヴェルティメント」です。弦楽5部によって演奏されるので「弦楽のためのディヴェルティメント」と呼ばれたりもします。
もっとも、人によっては冒頭の部分から弦楽器を打楽器的に扱う指揮者もいるので、そう言う録音で聞くと「やっぱり、暴力的!!」と思ったりするかもしれませんが、全体的には「夜曲」と言えるような部分が多くて、とっても神秘的な音楽です。

どこかでも書いた記憶があるのですが、1930年代のバルトークをどの様に見るかは意見が分かれます。無調の方に歩を進み始めたそれ以前のバルトークを「良し」とする人々は、古典的なものに回帰した30年代を「退歩」とみなします。逆に、バルトークこそ「現代音楽」という愚かな営みにはまりこまなかった偉大な「現代の作曲家」ととらえる人々にとっては、この30年代の作品こそ彼の絶頂期を形作るものだと評価します。
私などは、迷うことなく30年代の作品こそベストだと確信していますし、その中でもこの「ディヴェルティメント」は初めて聞いたときから大好きに「なれた」作品でした。バルトーク=難解等という構えた姿勢などなくても、すんなりと心と耳に入り込んでくる作品です。

なお、バルトークの記述によると今作品はお世話になった指揮者のパウル・ザッハーへのお礼の意味をこめて夏のお休みに一気に作曲されたそうです。バルトークという人はやるときは結構やる人だったみたいで、短時間に集中して密度の高い作品を書くことがよくあったようです。彼の一番の人気作品であるオケコンも構想から完成までわずか2ヶ月足らずで仕上げていますが、このディヴェルティメントはなんと2週間程度で完成させています。

シルヴェストリの略歴


今ではほとんど忘れられた存在の指揮者ですが、一部ではその「爆裂」演奏によって記憶の片隅に残っている・・・という雰囲気でしょうか。
Wikipediaによると、

「ルーマニア出身の指揮者・作曲家。ブカレストに生まれ、ブカレスト音楽院に学ぶ。1930年に指揮者としてデビューし、ルーマニア国立放送管弦楽団の首席指揮者、ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を歴任。1963年にはイギリスのボーンマス交響楽団の首席指揮者となる。1967年にイギリスに帰化し、ロンドンで没す。また1948年から1956年にはブカレスト音楽院で教鞭を取り、セルジュ・コミッショーナ等を育てた。

1964年に来日、NHK交響楽団を指揮した。

チャイコフスキーやドヴォルザークなどの国民楽派から、近代音楽までの範囲を主なレパートリーとしていた。フランス国立放送管弦楽団を指揮しフランスのADFディスク大賞を獲得したドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」は日本でも有名である。

非常に個性的(いわゆる爆演系)な演奏をすることで知られており、出来不出来も激しかった(N響客演時にも、楽員の間で賛否が割れたという)が、時にはナイーヴな表情を見せることもあり、不思議な魅力のある指揮者だった。」

らしいです。
しかし、最近彼の録音をある程度まとめて聞いてみると、それほど無茶苦茶な演奏はしていません。どちらかというと、バルビローリを思わせるような横への流れを重視した音楽作りで、ここぞと言うところでは微妙にポルタメントをかけてしっかりと歌わせている雰囲気で、こう言うのが好きな人は意外と多いのではないでしょうか。
このバルトークの演奏もとんがった雰囲気はほとんどなくて、作品の持つ美しさをしっかりと描き出していて、とても聞きやすく仕上げています。まあ、スタジオ録音で「爆裂」することはあり得ないわけですから、意外とライブよりはこういうセッションでの録音の方が美質が表に出たタイプかもしれません。

よせられたコメント

2012-04-23:Lisadell


【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-10-25]

アーサー・サリヴァン:喜歌劇「軍艦ピナフォア」序曲(Sullivan:Overture from H.M.S Pinafore)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン新交響楽団 1961年録音(Rene Leibowitz:New Symphony Orchestra Of London Recorded 1961)

[2025-10-22]

バターワース:管弦楽のための狂詩曲「シュロップシャーの若者」(Butterworth:A Shropshire Lad)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1956年6月20日録音(Sir John Barbirolli:Halle Orchestra Recorded on June 20, 1956)

[2025-10-20]

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」 ハ短調 Op.13()Beethoven:Piano Sonata No.8 in C minor, Op.13 "Pathetique"
(P)ハンス・リヒター=ハーザー 1955年11月録音(Hans Richter-Haaser:Recorded on November, 1955)

[2025-10-18]

フォーレ:夜想曲第4番 変ホ長調 作品36(Faure:Nocturne No.4 in E-flat major, Op.36)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)

[2025-10-16]

J.S.バッハ:パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV.582(J.S.Bach:Passacaglia in C minor, BWV 582)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1961年12月5日~8日録音(Marie-Claire Alain:Recorded December 5-8, 1961)

[2025-10-14]

ワーグナー;神々の黄昏 第3幕(Wagner:Gotterdammerung Act3)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-13]

ワーグナー;神々の黄昏 第2幕(Wagner:Gotterdammerung Act2)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-12]

ワーグナー;神々の黄昏 第1幕(Wagner:Gotterdammerung Act1)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-11]

ワーグナー;神々の黄昏 プロローグ(Wagner:Gotterdammerung Prologue )
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-08]

ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 作品67(Beethoven:Symphony No.5 in C minor, Op.67)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年8月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on August, 1961)

?>