クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ブラームス:交響曲第4番 ホ短調, Op.98

カール・シューリヒト指揮:北西ドイツ交響楽団 1958年8月7日録音





Brahms:Symphony No.4 in E minor, Op.98 [1.Allegro non troppo]

Brahms:Symphony No.4 in E minor, Op.98 [2.Andante moderato]

Brahms:Symphony No.4 in E minor, Op.98 [3.Allegro giocoso]

Brahms:Symphony No.4 in E minor, Op.98 [4.Allegro energico e passionato]


とんでもない「へそ曲がり」の作品

この第4番の交響曲はそういう世評にたいするブラームスの一つの解答だったといえます。
形式的には「時代遅れ」どころか「時代錯誤」ともいうべき古い衣装をまとっています。とりわけ最終楽章に用いられた「パッサカリア」という形式はバッハのころでさえ「時代遅れ」であった形式です。
それは、反論と言うよりは、もう「開き直り」と言うべきものでした。
 
しかし、それは同時に、ファッションのように形式だけは新しいものを追い求めながら、肝腎の中身は全く空疎な作品ばかりが生み出され、もてはやされることへの痛烈な皮肉でもあったはずです。

この第4番の交響曲は、どの部分を取り上げても見事なまでにロマン派的なシンフォニーとして完成しています。
冒頭の数小節を聞くだけで老境をむかえたブラームスの深いため息が伝わってきます。第2楽章の中間部で突然に光が射し込んでくるような長調への転調は何度聞いても感動的です。そして最終楽章にとりわけ深くにじみ出す諦念の苦さ!!

それでいながら身にまとった衣装(形式)はとことん古めかしいのです。
新しい形式ばかりを追い求めていた当時の音楽家たちはどのような思いでこの作品を聞いたでしょうか?

控えめではあっても納得できない自分への批判に対する、これほどまでに鮮やかな反論はそうあるものではありません。


  1. 第1楽章 Allegro non troppo ソナタ形式。
    冒頭の秋の枯れ葉が舞い落ちるような第1主題は一度聞くと絶対に忘れることのない素晴らしい旋律です。

  2. 第2楽章 Andante moderato 展開部を欠いたソナタ形式

  3. 第3楽章 Allegro giocoso ソナタ形式
    ライアングルやティンパニも活躍するスケルツォ楽章壮大に盛り上がる音楽は初演時にはアンコールが要求されてすぐにもう一度演奏されたというエピソードものっています。

  4. 第4楽章 Allegro energico e passionato パッサカリア


    老いたるチャンピオン


    シューリヒトという指揮者はベートーベンであれ何であれ、己の理性というか知性というか、そう言うものの中に取り込んで、その枠の中からはみ出すことなくスッキリと仕上げてしまうと言う印象があります。
    それは、シューマンやブルックナーのような癖の強い作品であっても事情は変わりません。
    それ故に「偉大な解釈者」と評価され、「作曲家の作品に対して完全に一歩下がった芸術的な謙虚さ」をもった指揮者だと褒め讃えられてきたのです。そして、その事を私は彼の芸術が持っている「軽み」と表現しました。暑苦しさとは一切無縁のスッキリとした彼の表現を好む人は少なくあありません。

    ところが、不思議なことに、彼のブラームスの録音を聞いていると、なんだか常とは違うものを感じてしまうのです。
    それは、いつもは作品を完璧に解釈してその枠の中でスッキリと構成している彼が、ブラームスの場合はそう言う理性の中に己を押し留めることが耐えかねるようなのです。
    結果として、その理性の奥に秘めている主情性のようなものがあちこちでこぼれ出すような雰囲気があるのです。

    それは、彼のブラームス録音の中でももっとも有名なコンサートホールでの4番の録音でも感じました。(バイエルン放送交響楽団 1961年9月録音)
    シューリヒトにしてみれば最晩年の録音にあたると思うのですが、そこには指揮者としての衰えを指摘されながらも、それでも最後まで戦い続ける「老いたるチャンピオン」の覇気を感じました。

    そうして考えてみれば、ブラームスというのは内に強烈なロマン主義的感情を持ちながらも、それを古典派の正統的スタイルの中に押し留めようとした人でした。
    そして、その姿勢は、ブラームスとシューリヒトの間に、作曲家と演奏家という違いはあってもどこか互いに共鳴するものがあったのかもしれません。
    そして、そう言う共鳴する部分が二人の中で重なり合うような場面にくると、シューリヒトもまた常の己を忘れて奥に秘めていた主情性が前に出てしまったのでしょうか。

    面白いのは、それはライブでの演奏だけでなく、スタジオで録音したウィーンフィルとの演奏でも同じ姿を垣間見ることが出来ることです。
    シューリヒトにとってブラームスというのは、どこか特別な意味を持たざるを得ない特別な存在だったのかもしれません。

    よせられたコメント

    【リスニングルームの更新履歴】

    【最近の更新(10件)】

    

    [2026-06-21]

    アイルランド民謡「ミンストレル・ボーイ」(Rose Plays the Minstrel Boy & Others)
    (T)クリストファー・リンチ:(Cello)レナード・ローズ (Flute)ジョン・ワマー (Harp)ローラ・ニューウェル 1947年録音(Christopher Lynch:(Cello)Leonard Rose (Flute)John Wummer (Harp)Laura Newell Recorded on 1947)

    [2026-06-19]

    ハイドン:弦楽四重奏曲第66番 ト長調, Op.64, No.4, Hob.3:66(Haydn:String Quartet in G major, Op.64, No.4, Hob.3:66)
    プロ・アルテ弦楽四重奏団:1937年11月16日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on November 16, 1937)

    [2026-06-17]

    ベートーベン:リギーニのアリエッタ「恋人よ来たれ」による24の変奏曲 WoO 65(Beethoven:24 Variations on Righini's Arietta Venni amore, WoO 65)
    (P)アルフレッド・ブレンデル 1958年&1960年録音(Alfred Brendel:Recorded on 1958 & 1960)

    [2026-06-15]

    ボッケリーニ:チェロ・ソナタ第1番 イ長調, G.13(Boccherini:Cello Sonata No. 1 in A Major, G. 13)
    (Cell)エンリコ・マイナルディ:(P)カルロ・ゼッキ 1952年録音(Enrico Mainardi:(P)Carlo Zecchi Recorded on 1952)

    [2026-06-13]

    ベートーベン:ピアノ三重奏曲第7番 変ロ長調 「大公」 Op.97(Beethoven:Piano Trio No.7, Op.97 in B-flat major "Archduke")
    (Vn)ダヴィド・オイストラフ (P)レフ・オボーリン (Cello)スヴィヤトスラフ・クヌシェヴィツキー 1958年5月9日~10日&12日録音((Vn)David Oistrakh:(P)Lev Oborin (Cello)Sviatoslav Knushevitsky Recorded on May 9-10&12, 1958)

    [2026-06-11]

    フランツ・シュミット:ピアノ五重奏曲(Schmidt:Piano Quintet in G major)
    バリリ四重奏団:(P)イエルク・デムス 1952年録音(Barylli Quartet:(P)Jorg Demus Recorded on 1952)

    [2026-06-09]

    バッハ:教会カンタータ 「死人の中より甦りしイエス・キリストを覚えよ」 BWV67(J.S.Bach:Halt im Gedachtnis Jesum Christ, BWV 67)
    ギュンター・ラミン指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 トーマス教会少年合唱団 他 1954年2月26日録音(Gunther Ramin:Gewandhausorchester Leipzig Thomanerchor Leipzig (Org)Hannes Kastner (A)Gertrud Wagner (T)Gert Lutze (Bass)BJohannes Oettel Recorded on February 26, 1954)

    [2026-06-07]

    エルガー:セレナーデ Op.20(Elgar:Serenade for String Orchestra in E minor, Op.20)
    マルコム・サージェント指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1959年6月6日録音(Sir Malcolm Sargent:The Philharmonia Orchestra Recorded on June 6, 1959)

    [2026-06-05]

    ハイドン:弦楽四重奏曲 ハ長調, Hob.III:65(Haydn:String Quartet in C major, Hob.III:651)
    ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団:1954年録音(Vienna Concert House Quartet:Recorded on 1954)

    [2026-06-03]

    バッハ:教会カンタータ 「人々シバよりみな来たりて」 BWV65(J.S.Bach:ie werden aus Saba alle kommen, BWV 65)
    ギュンター・ラミン指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 トーマス教会少年合唱団 (T)Gert Lutze (Bass)BJohannes Oettel 1952年1月11日録音(Gunther Ramin:Gewandhausorchester Leipzig Thomanerchor Leipzig (T)Gert Lutze (Bass)BJohannes Oettel Recorded on January 11, 1952)

?>